令和4年度

校長より

オンオフ

仕事を極める人には、仕事中には集中して取り組む一方で、休日になると、ある意味集中して、趣味に没頭して過ごすタイプの人が多く見られます。いわば、一流の仕事人とは、オフの過ごし方が上手な一流の趣味人、であるようです。こうしたオフの時間に良質なインプットをすることで、仕事に関する発想力や活力が生み出されます。

10月18日(火) 川俣高等学校長

様々な角度から

現在では、スマホやパソコンを使えば、すぐに一定の情報を集めることができます。でも、その情報は既に誰かがまとめたものであり、新たな側面を示してはくれません。以前には多くいた、見えないものを見ようとするタイプの人が少なくなり、今では、見えるものを確実に見ようとするタイプが多い、との指摘もあります。例えば、植物の研究をするのであれば、膨大な資料を集めて読み込むことに加えて、実際に外に出かけ、対象とする植物を、正面から、横から、真上から、そして土に埋もれた中まで見ようとする姿勢こそ大切です。39億年にもなる地球の歴史をヒシヒシと感じながら、太陽エネルギーの下で育つ生命のドラマに直面するのは、何かワクワクしませんか。植物に限ることなく、どんな分野に関わろうとも、見えないものを見ようとすれば、そこには必ず、筆舌に尽くしがたいロマンがあります。

10月17日(月) 川俣高等学校長

集団の在り方

会社では、集団により、一つの目標達成に向けた取組を求められることが多くあります。アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏のように、圧倒的な個の力により、企業を急成長させる場合もありますが、通常であれば、集団で行う意見交換等をとおして開発は行われます。ものづくりで大切なことは、メンバーの間の信頼感、そして共有意識とされています。集団である以上、そこにリーダーは存在しますが、リーダーが一人で100人分悩むよりも、100人のメンバーで1人分ずつ悩む方が、結果として集団のコンセプトは固まりやすく、修正や深化を図ることも容易とされます。1人の100歩よりも、100人が1歩ずつ歩みを進めれば、1歩進んだ100人全員が、それぞれ確実に成長を遂げるので、集団の力は一層大きくなります。

さて、本校は明日より修学旅行となります。次回の本投稿は、10月17日(月)を予定しております。

10月11日(火) 川俣高等学校長

ゼロからイチへ

人は大抵、前回取り組んだことを基に次回に備えます。つまり、既に持っている1(イチ)に掛けることで、2や3などにしていきます。でも、これまで自分が身に付けてきた知識や経験をすべて消し去り、全くの0(ゼロ)からやり直す場合には、前年踏襲の考えは通用しません。0を1にするエネルギーは相当なものです。こうしたときに、絶対に頭に浮かべてはいけないのは、「どうせ無理」という類の言葉です。この言葉からは、何一つ新しいことは生まれません。これまで様々な開発に関わってきた多くの方々は、過程で失敗をしても常に前を向き、挑戦を繰り返し、0を1にしてきました。今後、この使命を引き継ぐのは、生徒の皆さんです。

10月7日(金) 川俣高等学校長

時間による拘束

「人に対して平等に与えられた1日24時間は、使い方次第で36時間にもなるし、12時間にしかならないこともある。」。生徒の皆さんは、こうした趣旨のことを言われた経験があると思います。好きなことには長い時間でも没頭でき、充実した時を過ごせることを考えれば、確かに言い得て妙ですね。発明王エジソンの工場には、針のない時計が掛けられていたそうです。針のない時計は無意味との指摘に対して、彼は、「時間は自分がコントロールすべきもの。時計というバロメータに左右されていては何もできない。疲れたと思えば、その場で休めばいい。仕事が完成するまでが昼間、その後からが夜。自分のリズムを持つことが大切。」と話したそうです。学校や会社など多くの場所においては、そのすべてを適用することは難しい環境にはありますが、ある程度の自由度の高い日などがあれば、試してみるのもよさそうです。

10月6日(木) 川俣高等学校長

異 論

京セラの創業者である稲盛和夫氏が第二電電設立を発表した際に、各署から反対の声が噴出したそうです。彼は、「一定期間、一定金額を使わせてくれ。それでだめなら設立をやめる。」と明言します。いわば、失敗の線引きをしたわけです。その設立が成果を上げた背景には、異論を基に何度も何度も改善を図ったから、とも言われています。新たな計画に異論が存在しないことは有り得ません。異論がないということは、異論を見逃している場合もあり、大きな失敗につながる可能性があります。正面からこうした意見に立ち向かうことで、異論は私たちに、これまで気づくことのなかった課題や欠点をそっと教えてくれるのです。

10月5日(水) 川俣高等学校長

忘 却

学習活動をしている生徒の皆さんにとって、せっかく覚えたことを忘れてしまうのは残念なことだと思います。一方で、覚えたすべてのことを忘れずにいたとしたら、すぐに頭の容量を超えてしまうことにもなります。ドイツには、「どうにもならないことを忘れるのは幸福だ。」という諺もあるように、忘却とは、人を守る機能とも言えます。忘れてしまえば何も見えなくなるので、色に例えて黒、逆に、記憶は読める必要があるため、その色は輝く白とします。でも、考えてみてください。すべてが白などの光明であれば、何も読むことはできなくなります。白い文字が読めるのも、黒の存在があるからです。生徒の皆さん、忘れることを恐れないでください。もしも忘れてしまったら、また覚え直せばよいのです。

10月4日(火) 川俣高等学校長

仕事のプロ

生徒の皆さんがレストランのスタッフだと仮定します。そこに、若い頃に訪れた思い出のレストランで食事をしたいとの思いから、老夫婦から食事の予約が入りました。皆さんなら、その老夫婦をどのようにお迎えしますか。他のお客様同様、特別なことをせずに対応することも選択肢の一つです。でも、せっかくこのレストランを選んでくれたのだから、何かしたいと思うのも自然なことです。レストランが提供する美味しい料理を、お客様に一層美味しくいただいてもらえるよう、全スタッフによる環境づくりを考えることで、お客様に満足いただける度合いも高まるはずです。当時と全く同じメニューを準備してみたり、当時と同じ店内装飾を施したり、同じ座席に座っていただいたり、料理に合わせて店内に流れる音楽も、またテーブルクロスも変えてみたりするなど多くの工夫をとおして、積極的な舞台創りが可能となります。アスリートが筋トレを継続するように、仕事のプロは考えることを継続します。また、考えるという行為は、自分の感性を磨き、心の筋肉の成長を促してくれます。

10月3日(月) 川俣高等学校長

シャウティング

陸上のハンマー投げの選手がハンマーを投げる瞬間に、大きな声を出す場面を目にしたことがあると思います。また、多くの種目で、試合が始まる直前に選手が輪を作り、かけ声を掛け合うシーンもよく見られます。これは、単に気合を入れるためのものではなく、大きな声を出して叫ぶことで脳に刺激を与え、アドレナリンを分泌させるための行為であり、シャウティングと呼ばれています。これにより、身体機能や筋力、集中力や判断力を高めることが確認されています。野球選手が「ボールが止まって見えた。」と話すのも、この表れとされています。ただし、このシャウティング効果は長くは続かず、最大でも30分程度と言われています。競技によっては、最初から最後までその効果を期待できないため、ピンチになったときなど、ピンポイントで使用されているようです。場面にもよりますが、平時を超えた身体機能や集中力を要するとき、生徒の皆さんも使ってみる価値はあります。

9月30日(金) 川俣高等学校長

計画の微調整

生徒の皆さんは、学習計画を立ててはみたものの、その通りに進まず、自分にイライラした経験はありませんか。Amazonの創業者ジェフ・ペゾス氏は几帳面な性格で知られています。起業前には数十ページにも及ぶ綿密な計画を策定するなどしていますが、一方で、「過去に立てた計画に拘束されるなんて馬鹿げている。」とも話しています。しっかりとした計画であっても、現実は、なかなかその通りには動いてくれないものです。ときに、予期せぬ良いことも生じます。そうした場合に大切なことは、「計画通り」ではなく、「臨機応変に物事に対応する姿勢」です。良い、悪いに関わらず、微調整機能を働かせることで計画と現実のズレを修正すれば、後に大きな発展が生まれます。

9月29日(木) 川俣高等学校長

伝える

投資家のウォーレン・バフェット氏は、自ら、自社の株主向けに年次報告書を書くことで知られています。その際に、彼はいつも、専門家ではない自分の姉が、読んで理解できるかどうかを念頭に書くのだそうです。自分が本当の意味で理解していれば、他者が理解しやすいよう表現できるはずです。伝えたいことが相手に伝わらないのは、伝え方にも問題があるのかもしれません。適切・的確な要点まとめができるよう、予め、しっかりとした分析と真の理解の定着が求められます。

9月28日(水) 川俣高等学校長

ドキドキ

緊張する場面にいるとドキドキする、といった経験は誰にでもあると思います。これは、緊張するという精神的な刺激によって、カテコールアミンという物質が分泌されることで起こる現象です。以前にも話したように、こうした場合には、アドレナリンやノルアドレナリンも同時に分泌されるので、集中力も筋力もアップするなど、心と身体が臨戦状態になっています。ドキドキは、緊張の証というよりもむしろ、脳も身体も最高のパフォーマンスを発揮できる状態、とも言えます。生徒の皆さんが試験や試合の際にドキドキしたら、いつもよりもうまくできる兆候、成功する証、と考えることができます。

9月26日(月) 川俣高等学校長

言葉の印象

「天使のように」「悪魔のように」に続く言葉を考えなさい、と問われたとします。通常であれば、「天使のように清らかに、悪魔のようにずる賢く」など、天使には良き言葉を、一方で、悪魔には悪しき言葉を続ける傾向にあります。また、それらの言葉に、「大胆に」か「細心に」のいずれかを続けるとすれば、「天使には細心、悪魔には大胆」を続けると、何となくですが腑に落ちそうです。でも、ゲーテの「ファウスト」に描かれている悪魔は、天使と比較して細かく取り決めをするなど、意外にも慎重で憶病な性格をしています。ということは、「大胆なのは天使、細心なのは悪魔」とも言うことができるのです。私たちは長い経験によって、言葉の持つ印象を決めている場合があります。でも、その印象が違っていることもよく見られます。調べてみると興味深いかもしれませんね。ちなみに、「天使のように大胆に、悪魔のように細心に」という言葉は、映画づくりのコツについて問われた際に、映画監督の黒澤明氏が話された表現です。

9月22日(木) 川俣高等学校長

好きなこと

仕事に取り組んでいるときに、光り輝くような存在である理由を尋ねると、「仕事が好きだから。」と答える方が多くいらっしゃいます。好きなことから得られる経験やスキルは、減ることのない財産になるので、ますます仕事が好きになる好循環を生み出しているようにも思えます。「自由にできる仕事だから。」という答えも耳にします。でも、ここでいう自由とは好き放題することではなく、自分の望んだ人生を、自分で責任をもって選択し生きていくことを意味します。マイケル・サンデル教授が講義の中で述べた、「自由とは、自分のルールに従って行動すること、すなわち、自律のことである。」という内容に匹敵します。一流の仕事人は皆、心から仕事を楽しんでいます。生徒の皆さんの場合には、仕事を学習に置き換えて考えてみてください。本校には今日も、心から学習を楽しめる機会が多く用意されています。

9月21日(水) 川俣高等学校長

直 観

直観は、誰もが備えている能力です。アメリカのヴァンダービルト大学の研究チームによると、論理的に考え熟慮の末に行動するときと、直観によって物事を判断するときでは、脳で行われている情報処理のプロセスが全く異なる、と指摘しています。直観で判断を下すとき、人は論理的な思考プロセスを無視します。では、直観による判断には誤りが多いのか、と言えば、そうではありません。イスラエルの大学での研究によると、左右に2つの異なる数字を瞬間的に表示して、数字の大きい方を尋ねると、被験者の9割は正しい判断をしたそうです。人は、意識的、論理的に思考しても無理なことに対して、直観的に判断することで正しい選択ができる生き物なのです。人が、自分の身を守るために発達したと考えられるこの直観を、もっと大切な存在として扱う必要がありそうです。

9月16日(金) 川俣高等学校長

まとめ

アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏は、ある企業が示した100ページに及ぶ契約書をゴミ箱に放り投げ、「私と話をしたいなら、数枚にまとめよ。」と言ったことがあるそうです。また、GEの売上を伸ばしたジャック・ウェルチ氏は、社内から上がる厚い企画書を指して、「本にするな。」と指示したそうです。共通に言えるのは、厚い書類は自分の思考を整理し切れていない表れであり不要、との信念に基づくものです。例えばA4版1枚の資料であれば、簡潔に要領よくまとめられているため、読む側の時間も奪うことなく、結果としてスピーディーな判断を可能とします。生徒の皆さんが学習する際に、教科書やテキストの内容をノートにまとめていたら、ただもう1冊、同じ教科書やテキストができあがったにすぎない、ということはありませんか。

9月15日(木) 川俣高等学校長

コメントから見える人間性

かつて知事選に臨んでいた俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー氏が、遊説先で観衆から生卵をぶつけられる事件がありました。彼は相手に怒りを向けるのではなく、こう切り返します。「奴にはベーコンの貸しだ」。さて、生徒の皆さんは、このコメントの意味がわかりますか。「生卵をぶつけるなら、ついでにベーコンもよこせば、ベーコンエッグを作れるじゃないか、ベーコンが足りないじゃないか」という、彼独特のジョークです。こうしたジョークが好まれるアメリカとはいえ、普通ならキレることも考えられる緊張した場面で、うまいことを言うものだと感心させられます。では、改めて生徒の皆さんに問います。皆さんがアーノルド・シュワルツェネッガー氏の立場であれば、どう切り返しますか。「投げるのは、ゆで卵にしてくれ。」「塩コショウはないのか。」などでしょうか。「温泉卵もいいぞ。」も、あるかもしれませんね。こうした発言ができるのは、緊張状態の中にあっても、セルフコントロールができている証でもあります。気の利いたコメントは、周囲を和ませるなど、人間関係を円滑にしてくれます。

9月14日(水) 川俣高等学校長

無駄の減らし方

日常的な無駄遣いを減らすには、何か好きなものに置き換えて考える方法があります。パッと財布を開けてしまいそうになるときに、このお金があれば自分の好きな本を1冊購入できる、など、好きなものを思い出すワンクッションを作り出すのです。こうした取組は、時間に関しても同じことが言えます。ぼんやりと過ごす時間を、自分の好きなことに費やせる時間に変換するよう心がけることで、高い満足感も得ることができます。そして自然に、自分の周囲から無駄な存在がどんどん減っている、ということに気づくはずです。自分の好きなものへの変換、生徒の皆さんも、今日から試してみませんか。

9月13日(火) 川俣高等学校長

聞く聴く訊く

生徒の皆さんが会社に就職し、上司から、「仕事について何か問題はありますか。」と尋ねられたとします。皆さんなら、どう答えるでしょうか。大抵の場合、「順調です。特に問題はありません。」との回答が多くなされるそうです。でも、その上司が、「どんな小さなことでも構いませんので、問題や課題などありませんか。」と、さらに尋ねると、「少しだけあります。」と、いつくかの問題や課題が挙げられ、またさらに、「たとえば、こんな問題や課題、無駄はありませんか。」と具体的に尋ねられると、一般的には、かなり多くの意見が出されるのだそうです。結果として、100を超える問題等が挙げられることもある、とのことです。さて、最初の問いかけで全くなかったはずの問題が、実は100もあったというこの事実が、会社にとってみれば、まさに問題です。自らの取り組むことに隠されている問題を明確にしておくためにも、周囲の人やその様子、自分のことをよく「見る観る診る」とともに、周囲の人に対して「聞く聴く訊く」など、複数回にわたる問いかけをする姿勢を持つことは大切です。

9月12日(月) 川俣高等学校長

エリザベス女王

本日未明に、イギリスのエリザベス女王がお亡くなりになりました。本HPの投稿(5月9日)を再掲するとともに、エリザベス女王のご冥福をお祈りいたします。

イギリスで、多くの国賓の方々をもてなす晩餐会が開かれたときの話です。手を洗うために出された水を、ある国賓の方が思わず飲んでしまったそうです。政府要人の方々から失笑がもれたそのとき、その方が間違って水を飲まれたことに気づいたエリザベス女王は、ごく自然に、自分の前に置かれた水をお飲みになったそうです。相手の立場を思う振舞いや心配りは、日頃の意識から生じます。私たちも見習うべきことが多くありそうです。

9月9日(金) 川俣高等学校長

締切仕事術

限界状況になると人は思わぬ力を発揮することから、仕事効率を上げるために、締切を設けることを推奨する本を多く見かけます。締切を設けると、少なからずストレスはかかります。でも、大きすぎないストレスは、程よい緊張感や緊迫感をもたらしてくれます。自然にノルアドレナリンも分泌されるので、注意力と集中力が高まります。生徒の皆さんには、漫然と何かに取り組み始めることに代えて、予め、期日や時間など締切設定を施すことをお薦めします。

9月8日(木) 川俣高等学校長

改善の繰り返し

大抵の場合、人は慣れたやり方で物事に取り組みます。でも、成果の出ない場合には、新しいやり方を取り入れなくてはなりません。もしも、その新しいやり方が原因でトラブルが生じたときに、生徒の皆さんならどう対処しますか。改善しようとして改悪になったのだから、元に戻すこともできますが、そこに成長は期待できません。そうした場合には、さらに改善を加える選択肢もあります。期待通りの結果が伴うまで、改善し続けるのです。何もしないこと、元に戻すことは停滞につながります。変えること、そして変わることこそ大切です。よく言われる、PDCAサイクルを止めたり、逆回転させたりするのではなく、常に正なる方向に回し続けるところから、成長は生まれます。

9月7日(水) 川俣高等学校長

機械の変容

生徒の皆さんが、ある工場の現場責任者だとします。自分の工場に、念願であった新しい機械が導入されました。これで今までのすべての問題が解決できると、皆さんはほっとすることと思います。でも、実はそうではありません。新しい機械は、他社でも導入できます。同じ機械を同じように使っていれば、他社との差別化を図ることはできません。では、どうすればよいのか。その機械に、人の知恵を付けるのです。知恵は、工夫と置き換えることもできます。機械に付けた人の知恵の数だけ、機械は変容を遂げ、その魅力も増します。数か月後に、他社で導入した同じ機械と自社の機械を見比べてみてください。姿・形は同じでも、きっと、全く違ったものとして見えるはずです。

9月6日(火) 川俣高等学校長

うまくいかない要因

あるメーカーで、特定地域の市場シェアが低下傾向にあったそうです。本社責任者が担当者に理由を尋ねると、「景気が悪い」「同業他社と比較して自社価格が高い」など、いわゆる外部要因を多くあげたそうです。そこにシェア低下の原因があると考えた責任者がお客様に直接話を聞いたところ、「こちらのニーズを無視して、売りたい商品の話ばかりする」「見積書の提出が遅い」「そもそも担当者が滅多に顔を出さない」など、内部要因がほとんどでした。営業方法を根本から見直し、より多くの企業の方と接する時間を確保するなど工夫したところ、売上は飛躍的に伸びました。外部要因にはどうにもならない要素も多くありますが、内部要因であれば、工夫次第で改善を図ることができます。また、不振の原因を内に求めることで、知恵が出ます。課題解決には、真摯な要因追求の姿勢が求められます。

9月5日(月) 川俣高等学校長

無茶な制約

車を生産するある会社の社長が、今の費用、そして生産に係る時間の2分の1程度で行うよう指示を出したそうです。何か月もの間、夢の中にも出てくるほど考えた末に、担当者は、他車と一部生産工程を同じにするなど、小さなものも含めて数百項目もの工夫を施し、一台の生産に係る費用と時間を大幅に短縮することに成功したそうです。潤沢な予算と時間があれば、人は何も変えようとはしません。予算と時間の極端な制約があれば、何とかしようとし、知恵を出します。時に生じる無茶な制約は、人に知恵を出すことの大切さを思い出させてくれます。そして、知恵を出すことは、人を大いに成長させてくれます。

9月2日(金) 川俣高等学校長

青い鳥

メーテルリンクの「青い鳥」という童話をご存じでしょうか。チルチルとミチルが夢の中で過去や未来の国を訪れて、幸福の象徴である青い鳥を探しに行く話です。でも、見つけることができずに家に帰った二人は、自分たちが飼っている鳥こそが、幸せの青い鳥であったことに気づくのです。私たちが気づかないだけで、幸せは、いつも自分の身近なところにあります。では、どこに私たちの幸せはあるのでしょうか。具体的には、脳の中にもあります。ある目標や計画を立てたとき、何かワクワク感を感じることはありませんか。それは、脳内にドーパミンが分泌されているからです。そして、その目標の実現が図られると、大きな達成感とともに、より多くのドーパミンが分泌されます。それは、幸福感に満たされる瞬間です。幸せに、大きい小さい、はありません。幸せは、間違いなく幸せなのです。生徒の皆さんも、こうした機会を一層多く持つことで、充実した楽しい生活を送ることができます。

9月1日(木) 川俣高等学校長

目標達成

こうなればいい、というイメージを強く持ったほうがその達成率は高まる、と言われています。ここに、アファーメーションと呼ばれる方法を紹介します。紙を1枚用意して、まず最初に、自分の達成したい目標とその期限、内容を書きます。次に、その目標が達成されたときの自分の気持ちを書きます。そして、目標達成のための計画を具体的に書き込んでいきます。最後に、もう一度、最初に書いた自分の達成したい目標とその期限、内容を書けば出来上がりです。注意事項としては、「~しない」という否定形は使わず、すべて肯定形で書くこと、主語は「私」とすること、目標は「~に取り組んでいる」というように現在進行形で書くこと、が挙げられます。この紙を見える場所に貼り、毎日声に出して読むことで、意欲と自信が高まります。チームとしての目標であれば、チーム全体の士気や一体感が飛躍的に高まることになります。生徒の皆さんも是非試してみてください。

8月31日(水) 川俣高等学校長

気間理

先週金曜日に、本校2学期の始業式が行われました。その際に話したことを投稿いたします。

柔道や剣道で言えばきちんと身構えること、相撲で言えば両手をつくことなど、日本に古くからある競技には、立会いという「きまり」があることを知っているでしょうか。ただし、「きまり」といっても、規則に従うことだけを意味するものではなく、次に述べる言葉から取ってそう呼んでいます。まず、きまりの「き(気)」とは、気合や気迫を指します。試合に臨む際の集中力を高める意味においても非常に重要です。次に、「ま(間)」とは、間合いを指します。剣道に例えれば、相手に近づきすぎれば打ち込まれることもあり、また、離れすぎては竹刀は届きません。自分の実力を十分に発揮するためにも、自分を客観視しながら、相手との適切な距離感を取ることが求められます。最後に、「り(理)」とは、道理を指します。物事をきちんとあるべきように整え、理にかなった方法で取り組むことが、周囲の皆さんの理解にもつながり、また、周囲の皆さんから、多くの協力をしていただけることにもなります。これら3つの気間理(きまり)は、学校生活にも大いに応用できます。今年本校では、公開文化祭が予定されています。川高ここにあり、と示す、大きな、そして大切な文化祭です。気間理の精神により、本気度の高い気持ちを込めながら準備に取り組む中で、時には作品を客観的に眺め、道理にかなった方法により完成を目指してほしいと思います。高校生として、豊かな表現力による発表を行うことで、関係する方々から高い評価をいただくことができるはずです。そして、来校される皆さんに大きな感動を与えることのできる「かえで祭」になると思っています。一糸乱れぬ川高魂の下、生徒の皆さんが取り組むことを楽しみにしています。

8月30日(火) 川俣高等学校長

 

タイムプレッシャー

時間に制約を設けることはあせりにもつながりますが、一方で、思わぬ力も生み出します。皆さんはウルトラマンを知っていると思います。正義のヒーローの代名詞ともなったウルトラマンは、なぜあんなに強いのでしょうか。その秘訣の一つは、3分しか闘えないことにもあります。活動できる3分が迫ると、胸のカラータイマーは点滅します。必ず3分以内に怪獣を倒さなければならない、その緊張感が強さを生むのです。このタイムプレッシャーとも言える時間の制約は、生徒の皆さんが日常取り組むことにも応用できます。普通なら100分でやっていることを80分で終わらせると周囲に宣言し、時計で計測するなど自分に負荷を与えると、大抵、80分でできるのです。60分に時間設定をしたとしても、これも実現可能です。モチベーションは、タイムプレッシャーをかけることで高まります。それは、ドーパミンの一層の分泌も促します。時間の制約を設けるウルトラマン取組術の有効活用は、とても楽しそうです。

8月29日(月) 川俣高等学校長 

過去の自分との比較

自分を知ることは大切です。心理学でも、メタ認知として重要とされています。そして、人はよく他者比較をして、自分をもっと深く知ろうとします。でも、このことで、相手に激しい妬みを感じたり、強い自己否定を起こすこともあるなど、他者と自分との比較には危険も伴います。では、私たちは、何と比較をすればよいのでしょうか。少しだけ背伸びをすれば届くかもしれない、憧れのような存在が近くにいればよいのですが、もしもそうした対象が見当たらない場合には、過去の自分との比較をすればよいのです。今の自分を見て、過去より明らかによくなっていれば上出来です。わずかな進歩であったとしても、それもまた素晴らしいことです。誰を傷つけることもなく、誰に傷つけられることもなく、己を知ることができ、そして、結果として、自分の成長につながります。

8月26日(金) 川俣高等学校長

脳内物質

幸福に関するドーパミンや恐怖・不安に関するノルアドレナリン、興奮や怒りに関するアドレナリン、落ち着きに係るセロトニンや眠気に係るメラトニン、ひらめきに関するアセチルコリンや多幸感に関するエンドルフィンなど、人には7つの脳内物質があると言われています。そして、ドーパミンが出過ぎるとセロトニンが抑制的に働くなど、それぞれが重要な役割を担っています。どれか一つが突出していても有効とは言えません。大切なのは、それら7つのバランスです。不規則な生活や偏った食事、ストレスはそのバランスを崩し、私たちの生活に大きな影響を及ぼします。7つの脳内物質の効果的な活用を図るためにも、基本的生活習慣の確立とその実践が必要です。

8月25日(木) 川俣高等学校長

いつから学ぶか

知識を持っていると一層楽しくなる、と言われています。でも、今から学ぶにはもう遅い、という声もよく耳にします。学びの旬はいつなのでしょうか。学びの気持ちが高まる時期、そのときこそ学び時です。年齢を重ね過ぎたからもう遅い、ということもありません。むしろ、大人になってからのほうが、より効率よく学べる材料を手にしています。大人の学びは、回り道をすることなく、大事なことだけを覚えることができます。たとえば、様々な日本語の語彙やコミュニケーション手段等を知ったうえで学んだほうが、外国語の習得は格段に速くなります。高校生の皆さんならもちろんのこと、学びについて遅すぎることはありません。もしかすると今日が、生徒の皆さんにとって学び時かもしれません。

8月24日(水) 川俣高等学校長

努力の継続

昨日の自分よりも少しだけ成長できたかな、と感じるうれしい瞬間は、誰でも経験したことがあると思います。そうした実感を持てるからこそ、人は前に進んでいくことができます。純粋に自分の目的に向かって進んでいるので、自分の経歴や他者からの評価は気になりません。自分の努力にすべてがかかっているからこそ、他者や環境に左右されることがなくなります。結果として、自分の限界を決めるのは自分だ、という、当たり前のことに気づくのです。そう、生徒の皆さんの限界を決めることができるのは、生徒の皆さん自身です。

8月23日(火) 川俣高等学校長

エピソード記憶

人の持つ記憶には、長期記憶と短期記憶があります。自分で疑似体験するようなイメージについては、長期記憶の中でも、特にエピソード記憶と呼ばれています。教科書の内容は忘れがちでも、自分に起きた出来事はめったに忘れることはありません。まさにこれこそ、エピソード記憶の強みです。ということは、例えば教科書を読む際にも、そこに書かれている人の気持ちになって、その世界に入り込みながら読むことで、記憶の度合いは一層増します。これは、学習以外にも応用できます。仕事でプレゼンテーションや会議がある場合には、参加する方々と自分が話している想像の世界に入り込み、「相手はどんな反応を示すだろうか。」など、想定できるシーンを前もって数多くイメージすることで、当日のコミュニケーションは良質になることが証明されています。意外に難しいことではないので、是非、生徒の皆さんも試してみてください。

8月19日(金) 川俣高等学校長

全体像の把握

学習には計画性が必要です。でも、先が見通せずに、途中で挫折してしまうこともあります。詳細な説明がなされている厚いテキストは深く知る上では有効ですが、一方で、やや薄めのテキストを使って、学習の全体像、言い換えれば、学習内容の骨格を短期間で把握してしまうのも一つの方法です。テキストの作成者ではなく、自分で学習ロードマップの作成を手掛けるのです。学ぶべき骨格を先に把握できれば、あとで、じっくりと身(深い知識)をつけていく作業に取り組むことができます。そのためにも、生徒の皆さんには、教科書やテキストの目次の有効活用をお薦めします。

8月18日(木) 川俣高等学校長

スギてはいませんか?

人は多くの人との関係により生活をしています。だからどうしても、人に気を使いすぎたり、人に合わせすぎたり、または、人の評価を気にしすぎたりするなど、多くの「スギ」を抱え込むこととなります。そして、その「スギ」は大抵、息苦しさを招きます。スギだらけの心に必要とされるもの、それは、車のハンドルがそうであるように「あそび」の感覚です。「スギ」ではなく、敢えて心に「スキ」を作るのです。「スキ」のある状態は、人の心を穏やかにし、創造性豊かな発想を可能とします。そして、その「スキ」からある対象を好きになることで、興味や関心の領域を広げたり、その深化を図ったりすることができます。

8月17日(水) 川俣高等学校長

整 頓

この投稿でも何度か整理整頓について話をしました。正確には、整理とは、いらないものを処分することを言い、整頓とは、すぐに取り出せる状態にすることを指します。重要性は整頓にあります。でも、生徒の皆さんは、学習活動の際に、何かを探すことに多くの時間を費やしてはいませんか。アメリカのビジネスマンに関する調査によれば、平均的なビジネスマンは、年間の総労働時間の約30日分にあたる時間を何かを探すことに費やしている、というデータがあり、今もその意識改革に取り組んでいます。仕事(学習)効率を上げる最善の策こそ、整頓です。生徒の皆さんも、ものを探すことは学習活動の一環である、という意識の変革を図ってみませんか。

さて、本投稿はしばらくの間お休みをし、再開は8月17日(水)を予定しております。その際には、またよろしくお願いいたします。

8月2日(火) 川俣高等学校長

詩人である坂村真民氏の詩に、「光る、光る、すべては光る。光らぬものはひとつとしてない。みずから光らないものは、他から光を受けて光る。」というものがあります。一部のもののみが光るのではなく、すべての存在が光り輝くことができる、と訴えています。そういえば、美術家の清川泰次氏も、「どんな人でも、他の人にはない良さを持って生まれてくる。自分の中の宝石は自分でしか磨けないが、それを磨くことが生き甲斐というものである。たとえそのとき、自分の中に宝石が見つからず石であったとしても、その石を、どこにもない美しい石に磨き上げることだ。磨かぬダイヤモンドよりも、どれほど美しいことか。」と話されていました。私たちは、あるときは、自ら光を放つことで周囲を明るくし、一方で、あるときには、周囲の人の放つ光によって助けられたりしているのかもしれませんね。

8月1日(月) 川俣高等学校長

予 防

ものづくりに必要な機械、この故障は、企業にとって大きな損失となります。故障の未然防止には、劣化を防ぐ日常点検や劣化測定のための定期点検、劣化を早期に回復するための予防修理などの観点が必要とされます。人に例えてみれば、日頃から食事に気を配り、健康診断を受け、早期発見や早期治療に努める、といったことになるのでしょうか。機械が壊れるという場合、前述したことを考慮すると、人が機械を壊している一面もあるのかもしれません。機械の修理以上に故障の未然防止に努めるのは、人に関する予防医学にも通じる考えです。

7月29日(金) 川俣高等学校長

夢の実現

夢を持つから人は成長する、と言われます。その実現に向けて努力し、試行錯誤を繰り返すからこそ達成感を感じることができ、また、その達成感から、次の夢の実現に向けた大きなエネルギーを得ることができます。大切なのは、夢は必ず実現する、と、迷うことなく信じることにあります。例えは少し異なりますが、羽が小さなクマバチは、航空力学上は飛べないはず、とされています。でも実際には、クマバチは立派に飛んでいます。「理論上、君は飛べないんだよ。」と語りかけたら、クマバチに迷いが生じ、そして、それ以降は飛べなくなるかもしれませんね。生徒の皆さんには、自分の持つ夢を真正面から見据え、その実現を信じ抜く信念の下、学習活動に取り組んでほしいと思っています。

7月28日(木) 川俣高等学校長

整 理

生徒の皆さんの机上は、整理整頓ができているでしょうか。できる人はその机を見ればわかる、とも言われます。でも、意識はしても、なかなかうまくいかないこともあると思います。どうすればよいでしょうか。お店のトイレに入ろうとすると、きちんと並べて置くよう、壁には張り紙があっても、脱ぎ捨てられたスリッパが散乱していることがあります。そうした場合に、スリッパを脱ぐエリアを区画線で区切ることで明確にスペースを確保すると、利用者には、きれいに並べて脱ぐ意識が芽生えます。同様に、机の上に区画線を引く(頭の中で区画線を引いてもかまいません)ことで、作業スペースが確保でき、また、物を置く場所や物を置かない場所などを分けることができ、結果として、作業効率が飛躍的に向上します。生徒の皆さんの周囲が整理整頓に満ちた空間となるよう、取り組んでみませんか。

7月27日(水) 川俣高等学校長

プラスとマイナス

言葉のイメージとして、マイナスよりもプラスは良い、という印象があります。でも、ドライバーで考えてみると、プラスドライバーはプラスのネジしか回すことができませんが、マイナスドライバーは、どちらのネジも回すことが可能です。自分の弱点をマイナスとするなら、それを認識した上で強化することで、プラスに変えることもできるはずです。マイナスドライバーになり切った自分を想像してみてください。ネジという環境に入り込み、ネジ溝に完全にフィットすることで、相手がどういった対象であっても自分は適応できます。加えて、相手のことを変えることもできます。そこに、変な力みは不要です。柔道の山下泰裕氏が言うように、自然体が最も強いのだと思います。

7月25日(月) 川俣高等学校長

緊張は味方

緊張により実力を発揮できなかった、という話をよく耳にします。でも、適度の緊張は課題達成率を上げるなど、学習能力を高めてくれることがわかっています。発見者の名前から、ヤーキーズ・ドットソンの法則と呼ばれています。適度の緊張状態では、ノルアドレナリンという物質が分泌されます。集中力や判断力、脳のパフォーマンスを飛躍的に高めてくれる物質です。ただし、緊張は適度であることが条件です。過度のそれは、頭を真っ白にし、筋肉を強張らせるなど、パフォーマンスの低下を招くそうです。場面に応じて緊張をコントロールすることができたら、かなり楽しそうです。

7月21日(木) 川俣高等学校長

個 性

個性の重要性は言うまでもありません。でも、個性は確固とした変わらぬ存在、という考えにより、自分を拘束してしまうことは、かえって少し堅苦しさを覚えます。そもそも、個性(パーソナリティ)の語源は、仮面を意味するペルソナ、だと言われています。私たちは日常生活の中で、場面に応じてペルソナを使い分けます。素の自分を出せる個性にもペルソナがあるのであれば、個性は決まりきった1つのものではない、というのが今の心理学の考え方です。自らの成長や取り入れる知識量に応じて、個性は、臨機応変、変幻自在に変わっていきます。自分の個性を見つけることができないと悩んでいる生徒の皆さん、もしかすると、皆さんの個性は今、変化を遂げている最中なのかもしれません。

7月20日(水) 川俣高等学校長

良質の睡眠

睡眠が人にとって重要なのは言うまでもありません。良質の睡眠を得るには、特に、寝る前の2時間の過ごし方を改善することが有効です。その一つとしては、ブルーライトを浴びないことです。ブルーライトとは、スマホやPC、蛍光灯から発せられる光をいい、青空の波長、つまり、昼に出る光の波長と同じものです。ブルーライトを浴びれば、今が昼と誤認し、睡眠物質のメラトニンの分泌を抑制してしまうのです。一方で、赤い光は夕焼けの波長です。そうした光を浴びると、脳は夜になったと認識し、メラトニンが分泌され、全身活動に徐々にブレーキがかかります。生徒の皆さんは、夜にたっぷりとブルーライトを浴びてはいませんか。

7月15日(金) 川俣高等学校長

五月晴れ

昔の話です。ある高校の校長先生が5月に行われた集会で、「文字通りの五月晴れの下」と話されたとき、一人の生徒は、ふとした疑問が浮かびました。松尾芭蕉の句「五月雨をあつめて早し最上川」の中に出てくる五月雨は梅雨の雨を指し、新緑の季節である五月を指してはいない、と授業で習ったことを思い出し、五月晴れも、古くからある表現であれば、同様に梅雨の合間の晴れを指すのではないか、と考えたからです。その生徒は校長室に行き、直接、校長先生に自分の疑問について話します。二人で辞書を調べ、新暦五月の晴れという意味もあることを確認した上で、でも、表現する際に、「文字通りの」を付けると誤解が生じることから、その校長先生はその生徒に誤り、その後二人で、しばし松尾芭蕉の時代の話に浸ったそうです。学んだ知識を応用して考え、勇気をもって校長室のドアをたたいたその生徒は立派です。学ぶことの大きな意義が、そこにはあります。ちなみに、その校長先生はすぐに校内放送をとおして、ご自身の話された表現に間違いがあったことを全校生徒に伝えたそうです。

7月12日(火) 川俣高等学校長

責任の倫理

ロンドンの街中を車椅子で移動していたイギリスの少年が、歩道の轍に車輪を取られ、動けなくなりました。偶然そこを通りかかった日本人が手を差し伸べようとすると、周囲にいたイギリスの方々から、止めるよう言われたそうです。周囲のイギリスの方々は、誰一人その場を立ち去ることなく、手を出す代わりに、苦労して轍から出ようとするその少年に大きな声援を送り続けました。そして、彼が脱出に成功すると、大きな拍手を送ったそうです。ヨーロッパ伝統の、自分の人生は自分で切り拓く、という人間観の一端を垣間見ることができる出来事です。手を差し伸べないことは冷淡な行為ではなく、人と人との間に、心の橋が架かっているからこそできることです。日本では信条の純粋さを重んじる傾向にあります。一方で、行為の先にある責任までは考慮しないこともあります。信条の倫理に加えて、責任の倫理の重要性を説いたのは、ドイツの社会学者マックス・ウェーバーでした。価値観の多様化に直面する中、私たちには、どういった言動を取るのがよいのかを瞬時に判断する責任が求められています。ちなみに、偶然少年の脇を通りかかった日本人は、私の大学の同級生です。

7月11日(月) 川俣高等学校長

普 通

人は初めて会った人に対して、好きか嫌いか、の感情を持つ傾向にあります。自分の身を守るために備わっている、そうした判断を下す場所が偏桃体です。ちなみに、偏桃体では、0.02秒で判断をするそうです。でも、嫌いという感情を持ってしまうと、それが相手にも伝わるので、人間関係という観点からは好ましくありません。嫌いの感情を抑制するには、好きか嫌いか、という基準に、普通という基準を加えるとよい、とされています。大脳皮質を進化させ、じっくりと考える論理的思考ができる人間には、偏桃体の働きをコントロールできる力が備わっています。嫌いの感情を薄めて、できれば、好きか普通か、の2つの基準により、人と接してみるのも楽しそうです。

7月8日(金) 川俣高等学校長

甲子園の砂

高校野球全国大会が開催される甲子園、全力で闘った後に、甲子園の砂(土)を袋に詰める球児の姿を目にしたことがあると思います。その砂は、かつては中国福建省から、現在では、岡山県や三重県、鹿児島県や大分県、鳥取県など複数の県から運ばれているそうです。もともと、甲子園の周囲は白砂青松の地で、浜砂が豊富にありましたが、その鮮やかな白さからボールが見えにくいこともあり、黒土を混ぜるようになったそうです。春は雨が多いので、水はけをよくするために砂を増やし、白砂6に対して黒土4に、一方で、夏は日差しが強くボールが見えにくいので、白砂4.5に対して黒土5.5と配合を変えています。こうした工夫一つ見ても、大会を運営される方々が、選手の皆さんが良い環境でプレーできるよう、様々なことに気を配っていらっしゃることが窺えます。ちなみに、初めて甲子園の砂を持ち帰った球児は、読売巨人軍監督を勤められた川上哲治氏と言われています。昭和12年の決勝で敗れた熊本工投手川上氏は、涙をぐっとこらえて、黙々とグランドの砂を集めたそうです。間もなく夏の甲子園の季節です。

7月6日(水) 川俣高等学校長

自己都合

人は自分に都合のよい情報を集め、一方で、不都合な情報を遠ざける傾向にあります。これを心理学では、確証バイアスといいます。でも、客観的な判断を行うためには、こうした確証バイアスに抗うことも大切になります。立場の異なる人の話に耳を傾け、多方面から情報を得ることで、導かれる判断の正確さは格段に増します。生徒の皆さんも、こうした取組を意識的に行うことにより、自らの一層のスキルアップを図ることができます。

7月5日(火) 川俣高等学校長

自己受容

生徒の皆さんも、自己肯定感という言葉を聞いたことがあると思います。自分の可能性を信じ、自分に自信を持ち、肯定的に自己認識をすること、これが自己肯定感です。一方で、自分に自信が持てないなどの感情を自己否定感といいます。自分の感情にマイナスを掛け合わせてしまうこうした瞬間は、確かにありますね。その改善を図る第一段階として、自己受容に努めることが大切であり、その方法として、精神科医樺沢紫苑氏は、「自己受容の4行日記」を推奨されています。1行目に、「ミスをして叱られた」など、自分の体験したネガティブな事例を書き、次の2行には、「誰にでもミスはある」「少し落ち込んだ」など、自分の自然な感情を書き込み、最後の1行は、「それでも、まずまず良い一日だった」など、前向きな表現で締めくくるのだそうです。自己否定から自己受容を行うとともに、最後の前向きな表現により、脳内にプチ変化が生じ、そしてプチ成長を遂げることができます。

7月4日(月) 川俣高等学校長

単位の考え方

ある企業の経営者が、「これまで7日かかっていたリードタイム(すべての工程が完成するまでの所要時間)が3日になりました。」と話すと、それを聞いた別の経営者はその取組を賞賛した上で、「では次は、72時間(3日)を、1時間、2時間と、さらに短縮化を図ることができそうですね。」と話したそうです。リードタイムを「日」という単位で考えれば、4日の短縮は十分な対応ですが、「時間」という単位で考えれば、まだ改善の余地があることに気づきます。加えて、「時間」を「分」に置き換えて考えることもできます。このような取組を継続すれば、最初の経営者の会社は、将来、リードタイムが2日になっているかもしれませんね。時間の単位(時単)を変えることで、時間の短縮(時短)につながるわけです。生徒の皆さんの周囲にも、改善の余地は無限にありそうです。

7月1日(金) 川俣高等学校長

百聞は一見に如かず

人の話を百回聞くよりも一度でも自分の目で見た方が、はるかに理解できることを表す諺「百聞は一見に如かず」はよく知られています。でも、百回見るよりも一度でも行動してみると、一層正しい判断ができます。「百見は一行に如かず」です。加えて、きちんとした成果が出れば、苦労も報われます。「百行は一果に如かず」です。生徒の皆さんが、スピード感を持って対応しなければならないとき、そして成果を求めたいときの参考にしてみてください。

6月30日(木) 川俣高等学校長

整 理

生徒の皆さんが、工場で働いていると仮定します。ものづくりの現場は、集団作業により成り立ちます。一人ひとりの個人作業で完結することは、一つとしてありません。前工程の後に自分の作業があり、後工程に引き継がれます。前と後ろの人との連携があって、円滑な作業実践を図ることができます。よって、重要なことは整理整頓です。不特定多数の人が手にするものは、定位置を定め、必ずそこに戻すことが大切です。誰もが素早く、ものを取り出せる環境づくりは、一部、皆さんの学習活動にも応用ができます。学んだ知識は、頭の引き出しに入ります。その際に、知識の出し入れをスムーズにできるよう、引き出しの表面にラベル(タイトル)を貼るイメージを持ってみてください。出した知識を、必ず元の引き出しの中に戻すことで、次に必要なときにも、短時間でその出し入れが可能です。考査日程が迫ってきました。知識の整理整頓の重要性が高まっています。

6月29日(水) 川俣高等学校長

個 性

自らの個性を磨くことにより自らの魅力を十分に発揮できる瞬間は、実にうれしいものです。かつては、個性を前面に押し出し過ぎることを躊躇する時もありました。一方で、他との違いをアピールしすぎるなど、奇抜さを個性として捉えた時もありました。でも今では、個性は尊重されるべき存在という考えがしっかりと定着しています。すべてが全く他と同じことはありません。自分が存在していること、そのことが既にあなたの個性です。身に着けたことを自然に発揮すること、そのことが立派にあなたの個性なのです。「他人と違うことを恐れるな。違いこそが個性を生む。他人は他人、自分は自分。他人の人生を自分が歩くことはできない。自分の人生を他人が歩くこともできない。」評論家佐高信氏の言葉です。

6月24日(金) 川俣高等学校長

身近なもの

中松義郎氏は、世界の発明王と称されるエジソンよりも多くの発明をしたことで知られています。彼が最初に特許を取得したのは中学二年生のときでした。第二次世界大戦中の物資の少ない中、冬でも暖房はありません。暖かくする材料はないか探しに探して、あまりにも身近な空気の存在に注目します。空気を逃げないようにして急速に圧縮すると高熱を発する、と本に書いてあったことを思い出し、シリンダーを作り、足で踏んで中のピストンを動かしてみると、放熱器の部分が触れることができないほど熱くなりました。さらに改良を加え、生み出したのが無燃料暖房装置です。無理だ、ダメだ、を禁句として、あきらめることなく取り組んだ大きな成果です。そして、大きな成果も、そのヒントは、意外に身近なところに隠されています。生徒の皆さんも、周囲にあるものを注視すれば、改善を図るヒントが見つかるかもしれません。

6月23日(木) 川俣高等学校長

納 得

人の話を聞く行為は簡単そうに見えますが、意外に難しいものです。でも、人の話には、参考となることが数多く含まれています。だからでしょうか、優れた指導者や経営者は、例外なく相手の話に耳を傾けます。松下幸之助氏も然りです。ディール・カーネギーも、人を動かすには人の話を熱心に聞くよう勧めています。一方で、人に話す立場で考えてみると、無理に説得を試みても、うまくいかないことに気づかされます。人は説得では動きません。納得して動きます。強制力や報酬、専門性を前面に押し出して話をしても、相手の心には響かないのです。では、何をもって話をするのがよいのでしょうか。一つの要素として、人間性があげられます。相手を信頼できると感じれば、人は自然に、その人のために動いてくれます。

6月22日(水) 川俣高等学校長

目標に向けた取組

何か興味のあることを継続して取り組んでいると、ある瞬間に、飛躍的な質の変化を起こすことがあります。人の潜在意識や深層心理に刻まれた経験値が引き起こすこうした事象を、シンギュラー・ポイントと呼びます。知識の深さも関係はしますが、大切なのは、面白いから一層知りたい、という気持ちを持つこと、そして、その気持ちを持ち続けることです。人の持つ能力を開花させてくれるパワーの源、シンギュラー・ポイントに到達できればできるほど、きっと、楽しさに満ち溢れた生活を送ることができます。

6月21日(火) 川俣高等学校長

新たな道

大正生まれの江頭匡一さんは、アメリカのレストラン王と言われたハワード・ジョンソンの本を読み、レストラン経営に興味を持ちます。まだ、飲食業が東京証券取引所一部に上場されていなかった時代に、彼は日本にも飲食業が定着すると考え、故郷福岡市に一軒の店を構えます。そして、江頭さんは常に、店の経営に関して創意工夫を積み重ねます。人通りの多い交通に便利な場所に店がなければ、人は入りません。でも、そうした場所は土地代が高くなります。そこで、全ての調理をお店でするのではなく、業務を分けることはできないか、と彼は考えます。郊外に広いスペースの調理場を作り、調理したものを各店舗に配ることでコストダウンを図る、セントラルキッチン方式を生み出したのも、そうした創意工夫の一つです。後に彼は、日本の外食産業の先駆者と称されるようになりました。新たな道を創り出すことは楽しいものです。そして、新たな道を見つけ出すヒントは、本の中、日常生活の中、生徒の皆さんの頭の中にあるのです。

6月20日(月) 川俣高等学校長

成功の秘訣

経済界のトップの方に成功の秘訣を尋ねると、周囲の方から信用を得ること、という回答が多く聞かれます。信用を得るために必要なことを問うと、時間を厳守すること、だそうです。お金をかけて一定の時間を節約することはできますが、相手の時間を買うことはできません。時間を貯めておくこともできません。一日24時間は、皆さんに与えられた平等な権利です。一年間の8760時間も然りです。使いたくはないと思っても、時間は流れていきます。時間の有効活用を図るためにも、やるべきことが多くあるのは幸せなことなのかもしれません。

6月17日(金) 川俣高等学校長

間違いの未然防止

やらなくてはならないことを先延ばしして、期限直前にまとめて行ったことで、多くのミスが生じた経験は誰にでもあると思います。会社などにおいてもそうです。締結日が近づいてから多くの承認依頼書等を提出すると、ミスや行き違いが生じ、そのことでやり直しに多くの時間を要することとなります。期限間近にまとめて行う大ロット生産よりも、多少の時間はかかるものの、早期から取り組む一個流し(小ロット生産)の方がミスの未然防止には効果的です。まるで川が淀みなくサラサラと流れていくように、滞りなく仕事が流れていくイメージですね。生徒の皆さんの場合は、試験に臨む際の学習の進め方に当てはまります。大切なのは、言うまでもなく計画性です。間もなくやってくる期末考査に向けて、小ロット生産の実行を図っていますか。

6月15日(水) 川俣高等学校長

兄 弟

孔子の弟子である司馬牛が、兄弟のいないことを寂しく感じる、と話すと、同じく弟子の子夏が孔子の言葉として、「己を慎み深くして過失のないように努め、人との交際はうやうやしい態度で礼儀正しくするならば、天下の人々も、兄弟同様に温かく接してくれる。」と伝えます。「四海皆兄弟(けいてい)たり」という言葉が、まさにそれにあたります。今から2500年前の、孔子と弟子との問答などを集めた論語には、現代にも通じる、人や社会の在り方についての記述が多くあります。

6月14日(火) 川俣高等学校長

達成感

ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーベンは、ドイツのボンで生まれます。宮廷オルガニストの指導を受け、技術力の向上とともに、彼の中に、自由と平和の考えが築かれていきます。26歳の頃に耳の病に罹りますが、第五交響曲「運命」など、代表的な作品の多くは、この後に生み出されたものです。最後の交響曲となる第九交響曲「合唱付き」では、その素晴らしさから、演奏後に、満員の観客から嵐のような賞賛の拍手が寄せられ、歌手ウンガーとともにその成功を喜び合った、とされています。彼の人生に係る達成感の大きさ、そして満足感の深さは相当のものであった、と推察されます。「諸君、ご喝采を。劇は終わったよ。」との言葉を残し、彼は永遠の眠りにつきます。

6月10日(金) 川俣高等学校長

思いの深さ

長野県伊那群中川村出身の写真家宮崎学さんは、中学校を卒業するとカメラ工場に就職し、カメラの交換レンズの組立て作業を担当します。毎日、ベルトコンベアで流れてくる磨き上げられたレンズを見ているうちに、子どもの頃に地元の自然の中で見た、動物の眼の輝きを思い出すようになります。カメラで生き生きとした動物を撮ってみたい、特に、幻と言われるニホンカモシカに接してみたい、と強く思うようになりました。その思いを叶えるために、宮崎さんは山岳会に入り、登山の基本を学び、山登りに励むようになります。そして、2年が経過した頃、中央アルプスの尾根から下に広がる灌木の中に、褐色のニホンカモシカを見つけます。でも、遠方からでは、生き生きとした写真とはなりません。そこで、宮崎さんはニホンカモシカの生態を知る必要性を感じ、毎日のように山に入り、朝から晩までニホンカモシカを追い、その行動を調べます。ついには、その一つひとつの仕草の意味まで理解できるまでになりました。ニホンカモシカの行動を事前に読むことができるようになったために、信じられないくらいの「生きた」写真を撮れるようになりました。「山に生きるニホンカモシカ」など、多くの写真集を出版され、後に、「動物と話せる男」とまで称されるようになりました。

6月9日(木) 川俣高等学校長

自己改装

お店であれば、数年に一度、多くの業者により店舗改装をすることはあります。では、人はどうやって改装(成長)するのでしょうか。自分の力により行うしかありません。こうした自己改装(自己成長)には、自己啓発と多くの教養を要します。でも、自己改装により、自分の持つ人間力が大きく増します。人間力の向上により、自身の魅力も増します。そして、まさに今取り組んでいる学習も、自己改装の原動力になります。一層輝ける存在となるよう、学習活動の継続を図ってほしいと思います。

6月8日(水) 川俣高等学校長

私たちの生活に必要な水は、空からもたらされます。雨の素となる大気中の水蒸気は、地球全体に平均25ミリの雨を降らす量に相当します。年間では1000ミリの雨が降ることを考えると、365日の中で40回の循環をしていることがわかります。地球に降った雨は、9日経つと再び水蒸気となり、空に戻るわけです。この9日という短いサイクルの中で、水は、私たちの生活に潤いを与えてくれているのです。家庭にある水道も、空の水道も、どちらも大切にしたいものです。

6月6日(月) 川俣高等学校長

進 化

人工知能やコンピュータの進化は目覚ましく、特定分野では、人の能力を超えるレベルにまで達しています。では、人はいつの日か、自らが作り出した人工知能やコンピュータに凌駕されてしまうのでしょうか。そんなことはないと思います。ノーベル賞受賞者の江崎玲於奈博士は、「人には欠点があるものの、むしろ欠点があるからこそ、人は進化する。」と話されています。欠点による不安定さの中にこそ、創造性が秘められています。自分の気づかない欠点を指摘されたとしても、下を向く必要はありません。まだまだ伸びる可能性がある、ということがわかったのですから。

6月3日(金) 川俣高等学校長

自らを磨く

学校を巣立ち、社会に身を置くときには、自らの判断力やコミュニケーション能力が求められます。生徒の皆さんは、学習活動をとおして、そうした自己力を高めています。やるべきことを疎かにして、自己力育成を図ることはできません。また、自己力のないまま仕事に向き合うことは、仕事に対しても失礼なことです。一方で、陽明学には事上磨練(じじょうまれん)という言葉があるように、仕事は、自らを一層磨く場でもあります。自己力が高まれば、毎日の仕事を、心の底から楽しむことができます。

6月2日(木) 川俣高等学校長

庭 訓

孔子の子である伯魚が庭に佇む孔子の前を通ると、孔子は、「詩を学んだか。詩を学ばねば、人と立派に処することはできない。」と話しかけます。またあるとき、庭にいる孔子の前を通ると、孔子は伯魚に対して、「礼を学んだか。礼を学ばねば、立派に世に処することはできない。」と話されます。庭での教えから、庭訓(ていきん)という言葉が生まれました。「君子はその子を遠ざくる」とあるように、本来、君子は我が子を遠ざけるものですが、庭訓から、孔子の、父としての一端を垣間見ることができます。親であれば、我が子を思います。発する言葉が少なくても、その中には、深い思いが込められています。生徒の皆さんは、保護者の方の話に耳を傾けていますか。

6月1日(水) 川俣高等学校長

有言実行

自分に課したことを実行できず、悔しい思いをした経験は誰にでもあると思います。実行を図る上で大切なのは、心の中で目標を唱える以上に、敢えて口に出して言うことです。未来に向かって言葉を投げかけることにより、自分にハードルを設けることができます。周囲の人にも、そのハードルは見えています。ハードルを飛ぶことができるよう、何度でもチャレンジする姿を目にすれば、きっと、周囲の人も応援してくれるはずです。未来の自分に期待することをやめないでほしいのです。

5月31日(火) 川俣高等学校長

常識を見つめ直す

アスリートの持つ記録は、飛躍的に向上しています。アスリートご本人の努力はもちろんですが、それを支える周囲の環境もその一因です。かつて日本のマラソン界では、金栗四三さん考案の、地下足袋に似た「金栗たび」を履いて走るのが当たり前でした。その金栗たびには、走りやすいという利点に対して、走り終わったときにマメができるという難点がありました。後に、マラソンシューズの改良に尽力された鬼塚喜八さんも、当初は、マメを克服してこそ一流、という当時の選手の考えに疑問を持つことはありませんでした。でも、ふと、マメのできない靴は作れないものかと思い、文献を検索したり、医学部教授に話を聞いたりして研究を始めます。マメの予防には足の裏を冷やすことが重要と気づき、底に水を入れた靴を作ったり、横に穴を開けて風通しを良くしたものを作ったりするなど試行錯誤を重ね、ついに二重底で衝撃を和らげるシューズの開発に成功します。一層の改良により、目の前の常識が、後の常識であり続ける保証はありません。常識をあらゆる角度から眺め、見つめ直す意識が大切です。

5月30日(月) 川俣高等学校長

着 想

昭和48年、ある中学校の理科の授業中のことです。一人の生徒が手を挙げて、「大雨が降ったら、その分、空から雲がなくなるんですね。」と先生に問いました。その生徒の根拠は、教科書にある、「雲の基となる小さな水の粒が集まり、重くなると雨になり、落ちる」という記述にありました。明確な回答ができずに授業を終えた先生は、ずっとそのことが頭に残っており、その後、その先生が科学教育研究センター長になられたときに、北海道大学に雲の調査を依頼します。カナダのバンクーバーで偶然目にした、高さ一万メートルもの巨大な積雲を写真に収めた北海道大学の教授は、煙ったように見える雲の一部(激しく雨の降っている部分)の上部の雲が、すっぽりと削り落ちていることを確認します。まさしく中学生の着想通り、雨が降ったために雲がなくなっていたのです。先生も明確に答えることのできなかったことを、一人の中学生が気づいたことに感動を覚えます。また、そのことをずっと念頭に置いていたその先生の、教師としての意識の高さにも驚かされます。ちなみに、前述した写真は、改訂された理科の教科書に掲載されました。

5月27日(金) 川俣高等学校長

チョウは適当にふわふわと飛んでいるように見えますが、そこに一定のルール(基本概念)があることをご存じでしょうか。ナミアゲハやクロアゲハなどアゲハチョウの仲間には、日当たりのいいところに育つミカンやカラタチの木に卵を産むものが多いため、自然にそうした木の上を飛ぶようになるのです。こうした通り道をチョウ道と呼びます。一方で、キアゲハは、セリやニンジン、パセリなどセリ科の草に卵を産むため、広がる草原の上を飛ぶこととなり、結果としてチョウ道はできません。また、モンシロチョウはアブラナ科の植物を好むため、耕したばかりの畑には近寄らず、また、緑のない場所も飛ばないのです。こうした研究は、かつて滋賀県立大学長であった日高敏隆氏によってなされました。当時はあまり注目されることのなかったこの研究は、時が移ろい、街に明るい公園を作り、中央に大きな花壇を設置して、チョウの舞う街づくりをしようとした多くの地方自治体に注目されることとなります。大学の研究意義は、現状を変えるだけではなく、将来を変えるという意味においても大きな意義があると思います。また、チョウにはチョウ道(チョウのルール)があるように、街づくりにも街づくり道(街づくりのルール)が、そして、学校づくりにも、確固とした学校づくり道(学校づくりのルール(基本概念))が必要不可欠とも言えます。

5月26日(木) 川俣高等学校長

承認欲求

周囲の人から一定の評価を得たい、と思う気持ちは誰にでもあります。心理学で承認欲求と呼ぶこの心理は、マズローの欲求5段階仮説でも、重要なものとして上から2番目に位置づけられています。一方で、他者からの承認を求めるために行動すると、他者のみを意識した生き方になる、との指摘もあります。アルフレッド・アドラーは、「他者からの承認を求め、他者からの評価ばかりを気にしていると、最終的には、他者の人生を生きることになる」としています。自分の培った経験や得た知識をとおした、自分の考えによる言動に自信を持てるよう、一定の客観的な視点を持ち合わせることは大切です。

5月25日(水) 川俣高等学校長

Iメッセージ

主語をYouとして話をすることを「Youメッセージ」といいます。「遅刻したりして、(あなたは)だめじゃないか。」といった表現がこれに当たります。相手に対する思いやりからの発言であっても、その相手にすれば、命令や指示を受けたと感じるため、反感を持たれる場合もあります。一方で、「Iメッセージ」という表現があります。これは、「時間を守る人を、(私は)信頼できる。」など、自分の願望や希望、思いを相手に伝えるような表現です。場面に応じて、適宜「Iメッセージ」を取り入れることで、良き人間関係を保つことができそうです。

5月24日(火) 川俣高等学校長

噺家(はなしか)の桂歌丸氏が、かつて語った言葉です。「弟子に噺を教えることはできるが、間(ま)を教えることはできない。噺家は、早く自分の間を拵(こしら)えた人が勝ちです。」ここでいう間とは、単に一定の時間を取ることを意味するのではなく、独自に作り上げたやり方のこと、と思っています。自分に合った間は、知識の習得にも応用できます。たとえば、先生方から授業で教えていただいた知識をそのままノートに写すのではなく、自分の解釈を加える工夫により、自分のものにすることができます。間を挟むことで、単色であった知識が、色彩溢れる魅力あるものに変わります。

5月23日(月) 川俣高等学校長

わかる

何かについて「わかる」ためには、「分ける」ことが大切だと言われます。すべてがわからない、ということはないので、何がわかり何がわからないのか、分けながら考えることにこそ意味があります。そして、分けながら考える分析的習慣が身につくと、その過程で解決してしまう課題も多くあります。理解の深化を図るためにも、私たちは常に、分ける意識を持つ必要がありそうです。

5月20日(金) 川俣高等学校長

読解力の精度

『名探偵コナン』をご存じの方は多いと思います。小五郎さんは、数少ない証拠をもとに、即座に、そしてかなり勝手に話を創ってしまい、誤った方向に進むことがよくあります。一方で、コナン君は、じっくりと証拠を集めて、それを合理的に組み上げる作業をします。小五郎さんが話を「創造」してしまうのに対して、コナン君は、「想像」はしても「創造」はしません。その根本的な違いは、どこにあるのでしょうか。それは、対象からの視線の切り方にあると思います。小五郎さんは、すぐに現場から目を離します。つまり、すぐに視線を切ってしまうのです。コナン君は、現場を徹底的に見るので、なかなか視線を切ろうとしません。だから、真実が見えるのです。読解力を問われる文章を読み込む際にも、この視線の切り方により大きな差が生じます。生徒の皆さんも、今度文章を読むときには、すぐに視線を切ることなく、また、思い込みによる創造をすることなく、じっくりと文を読み込んでみてください。これまでには味わったことのなかった深い領域まで、文の中に踏み込めるはずです。

5月19日(木) 川俣高等学校長

分 類

図書館を利用すると、自分の見つけたい本を比較的容易に探すことができます。日本十進分類法により、整理・分類されているのがその理由です。森清氏が、海外の十進分類法を基に生み出したこの分類法は、1から9までの数字に当てはめた哲学や歴史、社会科学などの「類」を作り、その類を10個の「綱」に分け、さらにその中を「目」に分けるなど、体系的な分類となっており、そのことが、本を管理する図書館側にも、利用者側にも優しい環境を生み出すこととなりました。私たちも、頭の中でよく物事を整理し分類します。その秩序を保つよう努めることは、生活の上でも非常に重要なことです。

5月18日(水) 川俣高等学校長

江戸時代の寺子屋で、教科書として使用された「実語教」の中に、「水は方円の器に従い、人は善悪の友による」という表現があります。水は入れ物の形に応じて、四角にも丸にもなるのと同様に、人は交わる友により変わる、というものです。人の友は、人とは限りません。自分の身近な存在、たとえば、本や花、動物なども友です。自分が無意識のうちに向ける目線の先によくあるもの、それが友です。自らの可能性を広げ、高めてくれる友の存在に感謝するとともに、その存在を、いつまでも大切にする必要がありそうです。

5月17日(火) 川俣高等学校長

読 書

正確な情報を得るためにも、読書習慣は大切なものです。でも、2018年度調査によれば、高校生の1週間の読書時間の平均は約2時間とのことです。文庫本1冊を読み終えるのに4時間程度かかるとすれば、2週間かけて1冊の本を読むこととなり、本の内容の興味は薄れてしまいそうです。また、全く読書をしない高校生は57%にもなるとのことです。かつてアメリカでは、多忙な人が短時間で本を読むことができるよう、速読を取り入れる傾向にありました。ケネディ元大統領も速読者として有名です。本を読む際の方法としては、こうした速読もありますが、一方で、一字ずつ文字を追い、文脈をたどり、行間の意味を考えるなど、じっくりと時間をかけた読書法もあります。自分の時間と相談しながら、読書法を変えてみるのも楽しみの一つです。いずれにしても、読書による思索体験の積み重ねが、主体的な人間形成に欠かせないことは確かなようです。

5月13日(金) 川俣高等学校長

心を磨く

私たちは、一日に数えきれないほどの言葉を発しています。言葉は、相手を励まし勇気づけることもできれば、悲しませることもあるなど、大きな力を持っています。「心が言葉をつくり、言葉が心をつくる」と言われます。優しい心を持つ人から、優しい言葉は発せられます。また、優しい言葉から、一層優しい心が形成されます。心を磨く一つの手段として、言葉を意識してみませんか。

5月12日(木) 川俣高等学校長

自 立

ウミガラスの親鳥は、若鳥を1千メートルもの断崖に置き去りにするのだそうです。海にあるエサを食べるためには、若鳥は、その断崖から飛び立つ必要があります。こうした試練を経て、若鳥は自立していきます。自然界には今でも、危険や困難が当たり前に存在しており、その克服に、自立は欠かすことのできない要素とされています。では、自立の先には何があるのか。大きな成長があります。私たち人間も、そこから学ぶことは多くありそうです。

5月11日(水) 川俣高等学校長

無知の知

自分の無知を自分で自覚すること、つまり無知の知が人間行動の始まり、とする考え方があります。少なくとも、湯川秀樹博士のいう、「何もかも知ってしまうことよりも、無知を知ることのほうが一層人間らしい。」という言葉は、よく理解できます。新しいことを知ったときの新鮮な驚きは進歩を呼び込み、未知の分野に挑戦する意欲と興味を引き起こします。私たちは、すべてを知ることはできません。知識に人間の本質があるのではなく、知らないことに気づく知恵こそ、人間にとって大切であると思います。何を知らなくてはいけないのかについて、じっくりと考え、自分を見つめる時間は十分にあります。

5月10日(火) 川俣高等学校長

心配り

イギリスで、多くの国賓の方々をもてなす晩餐会が開かれたときの話です。手を洗うために出された水を、ある国賓の方が思わず飲んでしまったそうです。政府要人の方々から失笑がもれたそのとき、その方が間違って水を飲まれたことに気づいたエリザベス女王は、ごく自然に自分の前に置かれていた水をお飲みになったそうです。相手の立場を思う振舞いや心配りは、日頃の意識から生じます。私たちも見習うべきことが多くありそうです。

5月9日(月) 川俣高等学校長

「今やらねばいつできる。わしがやらねば誰がやる」を合言葉として、かつて仕事に取り組んだ区役所がありました。私たちは、刻一刻と過ぎ去る時間を無駄にしてしまうことがよくあります。松下幸之助氏は、「自分に20歳の若さを与えてくれる人がいたら、自分の財産と取り替えてもいい。」と話されたことがあるそうです。古代ローマの思想家セネカは、「人生は短いのではない。我々がそれを短くしているのだ。」と語りました。一日24時間は皆平等に与えられます。何もせずに日々過ぎてしまうと悔やむ前に、充実した生活を送るためにも、人生の先達の言葉を噛みしめ味わうべきなのかもしれません。

5月6日(金) 川俣高等学校長

習い

多くの知識を身に着けるためには、短時間で理解度を高める必要はありますが、一方で、すぐにはわからなくても、悪いことばかりではありません。学ぼうとする知識が手軽に手に入らないからこそ、いったん身に着けると、絶対に忘れないものです。不器用であったとしても、長い時間をかけて自分を内面から変革していく過程もまた、学ぶ魅力の一つです。読書百編、意自ら通ず。生徒の皆さんも、時の概念を脇に置き、じっくりと考える経験を大切にしてみてください。

4月28日(木) 川俣高等学校長

後ろ姿への責任

相撲の力士が花道を引き揚げる際に、その後ろ姿がテレビに映し出されます。仮にその取組を目にしていなくても、後ろ姿から勝ち負けを想像することができます。生徒の皆さんは、皆さんの前(目や意識の届くところ)に加えて、後ろにも注意を向けているでしょうか。たとえば、バスや電車に乗っているときに、自分の背負っているバッグが周囲にいる人の邪魔になってはいないでしょうか。また、歩道に広がって歩くことで、後ろを歩く方々の通行を妨げてはいないでしょうか。就職や大学の試験では、多く面接が課せられます。緊張感を強いられる中、試験会場に入室してすべての応答をし終えた、まさにそのときの皆さんの表情、そして、退室する際の所作こそ、面接をされる方の知りたいところなのです。皆さんは、自分の後ろ姿(目や意識の届かないところ)にも、責任を持つ必要があります。

4月27日(水) 川俣高等学校長

後始末より

何かに取り組んで失敗してしまった際に、その後始末に大きな時間やエネルギーを費やすことがあります。失敗自体は悪いことではなく、そこから学ぶことは多くあります。でも、失敗しないために十分な備えをしたか、と問われると、自信を持って答えることはできない場合もあります。計画的に物事を進める先見性や情報収集、また、情報の適切な整理や分析などの洞察力をとおして、事前の備えを万全にすることを前始末と呼ぶとすれば、こうした前始末に係る時間やエネルギーは、後始末のそれと比較してもかなり短く、そして小さくてすみます。

4月26日(火) 川俣高等学校長

雀になれ

学習活動には、先生方から教えをいただく場面同様に、自ら考え、努力により実力をつける取組も重要です。教えてもらえば、余すところなく学ぶことができるし、効率的な学習も可能である一方で、自分の眼で見て、自分の頭で考えて、自分の肌で感じる瞬間は圧倒的に少なくなります。「カナリアは、愛鳥家に育てられ、立派な籠の中で十分な餌を与えられるなど、何不自由ない生活を送るが、これに慣れると、自力自活の術を失っていく。それに対して雀は、自然の中で風雨にさらされ、餌も自分で見つけなければならない。しかし、雀は、思いのまま自然界を飛び回ることができる鳥に成長する。」これは、日産自動車元会長の川又克二氏が、入社式の際に新人社員に対して述べた言葉です。いつの時代にも、厳しいけれど、こうした試練を避けては真に学ぶことはできない、という戒めと受け止めています。

4月25日(月) 川俣高等学校長

理想の人の在り方

論語に、「質文に勝てば即ち野なり。文質に勝てば即ち史なり。文質彬彬として、然る後に君子なり。」という表現があります。質とは人の持つ誠実さ、文とは教養、野とは粗野なこと、史とは、物知りではあるものの心からの誠のない人をいい、また、彬彬とは、美しく調和の取れていることを指しています。つまり、孔子は、生まれながらに持つ誠実心と、後天的に身に着ける教養とが調和した人物を理想的な人と捉えているようです。人としてのバランスを保つことは、いつの時代においても大切なことのようですね。

4月22日(金) 川俣高等学校長

一生涯実行するに値する言葉を問われ、孔子は、「其れ恕か。己の欲せざるところは、人に施すことなかれ」と答えています。恕とは、自分の「心」に対するが「如く」に人に対する思いやり、のことです。歳を取るにつれて、身体には衰えが生じるかもしれませんが、心には永遠に衰えはありません。常にこの言葉を念頭に置いて、人と接する姿勢を持ち続けたいと思います。

4月21日(木) 川俣高等学校長

良 心

昭和22年頃の公衆電話料金は、50銭で利用できる、交換手を介して相手と話をするものでした。でも、50銭硬貨というものはなく、また、10銭硬貨を5枚揃えるのも難しかったので、当時の電話局は50銭紙幣を入れることのできる箱を設置してみたそうです。でも交換手には、利用者が50銭紙幣を実際に箱に入れたかどうかを確認することはできません。信用して電話を繋ぐしかなかったのです。数日後に箱を開けた係員は、驚くべき光景を目にします。料金の収納率は105%だったのです。お釣りが出ないことを知っていながら10円札を入れる人もいるなどしたため、100%を上回る結果となりました。人の目があろうとなかろうと、日本人は揺らぐことのない良心を持っている証です。こうした伝統は末永く受け継ぐものだ、と改めて思います。ちなみに、当時のアメリカでは、「日本人の道義心、恐るべし」と紹介されたそうです。

4月20日(水) 川俣高等学校長

有言実行

国によって人を判断する基準は異なりますが、多くには次の4つの型が見られるようです。第一に有言実行型です。言うまでもなく、最も信頼されるタイプです。次に不言実行型です。言葉を発することはなくても、自分のすべきことについてしっかりと取り組むタイプです。第三に不言不実行型です。言うことも言わなければ、やることもやらないタイプで、周囲からの評価は概ね低くなります。最後に有言不実行型です。やるはずのことに手を付けないわけですから、その穴埋めをするために、周囲の負担はかなり増します。信用の信は、人が言う、と書きます。人は、口に出したことを守る義務があります。生徒の皆さんには、自らの発言に責任を持ち、周囲との良き人間関係を築いてほしいと思っています。

4月19日(火) 川俣高等学校長

時の大切さ

「世の中は三日見ぬ間の桜かな」というように、日々の変化の激しさには驚くばかりです。ほんの少し本を読まずにいれば、考え自体が空疎なものとなってしまうことを言う、「三日 書を読まざれば、その言 含蓄なし」という言葉もあります。このように、時を大切なものとして捉える表現は多くあります。現在は永遠ではありません。中国の詩人陶淵明も、「盛年は重ねて来たらず、一日再び あしたなり難し」とうたっています。青年(盛年)期は、2度はやって来ません。生徒の皆さんの年齢時に学ぶことはたくさんあります。皆さんにとって、毎日が進歩的日々であることを期待します。

4月18日(月) 川俣高等学校長

日本では温帯林が繁茂していたため、かねてより、家や道具に、また燃料としても木が多く利用されてきました。一見すると柔らかく、弱々しくも見える木ですが、法隆寺の修理を担当する宮大工さんによれば、桧の柱は千年以上もの寿命があるとのことです。一方で、法隆寺の改修に必要な桧は日本国内では見つからず、台湾など海外から輸入して対応するとのことです。木の文化は日本の大きな特徴の一つです。私たちの生活に身近な存在である木ですので、これからも大切にしていきたいものです。

4月15日(金) 川俣高等学校長

和よりも積

1957年から1年間、南極観測隊の越冬隊長として昭和基地で業務に関わった西堀栄三郎氏は、個性の強さを基準として11名の人選を行ったそうです。長期間にわたり寝食を共にするメンバーであれば、まずは個人よりも集団を優先するタイプを選びそうですが、西堀氏には一つの信念がありました。「同じ性格の人が一致団結しても、その力はせいぜい「和」の形でしか大きくならない。しかし、異なる性格の人が団結すれば「積」の形となり、その力が格段に大きくなるはずである。」。集団の在り方を考える上で、一つの参考になりそうです。

4月13日(水) 川俣高等学校長

長 崎

坂道の多いことで知られる長崎、そこに住む人は様々な取組や工夫をされているようです。たとえば、引越しのときに、坂道が急すぎるため車を横付けできない家がほとんどなので、横付けできる家の場合には、「車横付け可」が不動産屋さんのキャッチフレーズになっている地域もあるそうです。また、バスの定期券を購入するときには、決まった停留所間を往復分買うものですが、長崎の場合には、往復別々の区間、つまり片道ずつの定期券を買うのだそうです。朝の出勤の際には、自宅を出て坂道を下りて行けるバス停から乗り、帰宅するときには、自宅より高い場所にあるバス停で下り、坂道を下って家に着けるよう工夫しているのだそうです。坂道を意識するのは、何も芸能界に限ったことではなさそうです。

4月12日(火) 川俣高等学校長

生徒の皆さんは、周囲にある物を大切にしているでしょうか。現在のように物に溢れる時代とは異なり、かつて物がなかった頃には、使い古したものを再度加工して使用するのは当たり前で、物に対する意識は相当に高かったと思います。人がそうであるように、物にも命があります。諸行無常という言葉が表すように、物にはすべて命が宿っており、だから変化もします。人と同様に物に対しても、感謝の気持ちや謙虚な心を持って接してみませんか。

4月11日(月) 川俣高等学校長

言葉は戻る

自分の感情の苛立ちから、周囲の人に強い言葉をぶつけてしまう経験は誰にでもあると思います。そうした言葉を発してから後悔することもまた、多くあります。でも、いったん発せられた言葉を消すことは、なかなか難しいものです。そして、自分の後悔にとどまることなく、言葉はそのまま自分に戻ってきます。周囲の人に不快感を与えれば、自分に不快感が戻ってきます。言葉を発する前に自分の心を正す冷静さを持ち、言葉を発した後の行動には責任を持つ、このことを念頭に過ごしたいと常に思っています。

4月8日(金) 川俣高等学校長