令和4年度

五月晴れ

昔の話です。ある高校の校長先生が5月に行われた集会で、「文字通りの五月晴れの下」と話されたとき、一人の生徒は、ふとした疑問が浮かびました。松尾芭蕉の句「五月雨をあつめて早し最上川」の中に出てくる五月雨は梅雨の雨を指し、新緑の季節である五月を指してはいない、と授業で習ったことを思い出し、五月晴れも、古くからある表現であれば、同様に梅雨の合間の晴れを指すのではないか、と考えたからです。その生徒は校長室に行き、直接、校長先生に自分の疑問について話します。二人で辞書を調べ、新暦五月の晴れという意味もあることを確認した上で、でも、表現する際に、「文字通りの」を付けると誤解が生じることから、その校長先生はその生徒に誤り、その後二人で、しばし松尾芭蕉の時代の話に浸ったそうです。学んだ知識を応用して考え、勇気をもって校長室のドアをたたいたその生徒は立派です。学ぶことの大きな意義が、そこにはあります。ちなみに、その校長先生はすぐに校内放送をとおして、ご自身の話された表現に間違いがあったことを全校生徒に伝えたそうです。

7月12日(火) 川俣高等学校長