令和4年度

常識を見つめ直す

アスリートの持つ記録は、飛躍的に向上しています。アスリートご本人の努力はもちろんですが、それを支える周囲の環境もその一因です。かつて日本のマラソン界では、金栗四三さん考案の、地下足袋に似た「金栗たび」を履いて走るのが当たり前でした。その金栗たびには、走りやすいという利点に対して、走り終わったときにマメができるという難点がありました。後に、マラソンシューズの改良に尽力された鬼塚喜八さんも、当初は、マメを克服してこそ一流、という当時の選手の考えに疑問を持つことはありませんでした。でも、ふと、マメのできない靴は作れないものかと思い、文献を検索したり、医学部教授に話を聞いたりして研究を始めます。マメの予防には足の裏を冷やすことが重要と気づき、底に水を入れた靴を作ったり、横に穴を開けて風通しを良くしたものを作ったりするなど試行錯誤を重ね、ついに二重底で衝撃を和らげるシューズの開発に成功します。一層の改良により、目の前の常識が、後の常識であり続ける保証はありません。常識をあらゆる角度から眺め、見つめ直す意識が大切です。

5月30日(月) 川俣高等学校長