令和4年度

着 想

昭和48年、ある中学校の理科の授業中のことです。一人の生徒が手を挙げて、「大雨が降ったら、その分、空から雲がなくなるんですね。」と先生に問いました。その生徒の根拠は、教科書にある、「雲の基となる小さな水の粒が集まり、重くなると雨になり、落ちる」という記述にありました。明確な回答ができずに授業を終えた先生は、ずっとそのことが頭に残っており、その後、その先生が科学教育研究センター長になられたときに、北海道大学に雲の調査を依頼します。カナダのバンクーバーで偶然目にした、高さ一万メートルもの巨大な積雲を写真に収めた北海道大学の教授は、煙ったように見える雲の一部(激しく雨の降っている部分)の上部の雲が、すっぽりと削り落ちていることを確認します。まさしく中学生の着想通り、雨が降ったために雲がなくなっていたのです。先生も明確に答えることのできなかったことを、一人の中学生が気づいたことに感動を覚えます。また、そのことをずっと念頭に置いていたその先生の、教師としての意識の高さにも驚かされます。ちなみに、前述した写真は、改訂された理科の教科書に掲載されました。

5月27日(金) 川俣高等学校長