令和4年度

校長より

着 想

昭和48年、ある中学校の理科の授業中のことです。一人の生徒が手を挙げて、「大雨が降ったら、その分、空から雲がなくなるんですね。」と先生に問いました。その生徒の根拠は、教科書にある、「雲の基となる小さな水の粒が集まり、重くなると雨になり、落ちる」という記述にありました。明確な回答ができずに授業を終えた先生は、ずっとそのことが頭に残っており、その後、その先生が科学教育研究センター長になられたときに、北海道大学に雲の調査を依頼します。カナダのバンクーバーで偶然目にした、高さ一万メートルもの巨大な積雲を写真に収めた北海道大学の教授は、煙ったように見える雲の一部(激しく雨の降っている部分)の上部の雲が、すっぽりと削り落ちていることを確認します。まさしく中学生の着想通り、雨が降ったために雲がなくなっていたのです。先生も明確に答えることのできなかったことを、一人の中学生が気づいたことに感動を覚えます。また、そのことをずっと念頭に置いていたその先生の、教師としての意識の高さにも驚かされます。ちなみに、前述した写真は、改訂された理科の教科書に掲載されました。

5月27日(金) 川俣高等学校長

チョウは適当にふわふわと飛んでいるように見えますが、そこに一定のルール(基本概念)があることをご存じでしょうか。ナミアゲハやクロアゲハなどアゲハチョウの仲間には、日当たりのいいところに育つミカンやカラタチの木に卵を産むものが多いため、自然にそうした木の上を飛ぶようになるのです。こうした通り道をチョウ道と呼びます。一方で、キアゲハは、セリやニンジン、パセリなどセリ科の草に卵を産むため、広がる草原の上を飛ぶこととなり、結果としてチョウ道はできません。また、モンシロチョウはアブラナ科の植物を好むため、耕したばかりの畑には近寄らず、また、緑のない場所も飛ばないのです。こうした研究は、かつて滋賀県立大学長であった日高敏隆氏によってなされました。当時はあまり注目されることのなかったこの研究は、時が移ろい、街に明るい公園を作り、中央に大きな花壇を設置して、チョウの舞う街づくりをしようとした多くの地方自治体に注目されることとなります。大学の研究意義は、現状を変えるだけではなく、将来を変えるという意味においても大きな意義があると思います。また、チョウにはチョウ道(チョウのルール)があるように、街づくりにも街づくり道(街づくりのルール)が、そして、学校づくりにも、確固とした学校づくり道(学校づくりのルール(基本概念))が必要不可欠とも言えます。

5月26日(木) 川俣高等学校長

承認欲求

周囲の人から一定の評価を得たい、と思う気持ちは誰にでもあります。心理学で承認欲求と呼ぶこの心理は、マズローの欲求5段階仮説でも、重要なものとして上から2番目に位置づけられています。一方で、他者からの承認を求めるために行動すると、他者のみを意識した生き方になる、との指摘もあります。アルフレッド・アドラーは、「他者からの承認を求め、他者からの評価ばかりを気にしていると、最終的には、他者の人生を生きることになる」としています。自分の培った経験や得た知識をとおした、自分の考えによる言動に自信を持てるよう、一定の客観的な視点を持ち合わせることは大切です。

5月25日(水) 川俣高等学校長

Iメッセージ

主語をYouとして話をすることを「Youメッセージ」といいます。「遅刻したりして、(あなたは)だめじゃないか。」といった表現がこれに当たります。相手に対する思いやりからの発言であっても、その相手にすれば、命令や指示を受けたと感じるため、反感を持たれる場合もあります。一方で、「Iメッセージ」という表現があります。これは、「時間を守る人を、(私は)信頼できる。」など、自分の願望や希望、思いを相手に伝えるような表現です。場面に応じて、適宜「Iメッセージ」を取り入れることで、良き人間関係を保つことができそうです。

5月24日(火) 川俣高等学校長

噺家(はなしか)の桂歌丸氏が、かつて語った言葉です。「弟子に噺を教えることはできるが、間(ま)を教えることはできない。噺家は、早く自分の間を拵(こしら)えた人が勝ちです。」ここでいう間とは、単に一定の時間を取ることを意味するのではなく、独自に作り上げたやり方のこと、と思っています。自分に合った間は、知識の習得にも応用できます。たとえば、先生方から授業で教えていただいた知識をそのままノートに写すのではなく、自分の解釈を加える工夫により、自分のものにすることができます。間を挟むことで、単色であった知識が、色彩溢れる魅力あるものに変わります。

5月23日(月) 川俣高等学校長