令和4年度

校長より

オンオフ

仕事を極める人には、仕事中には集中して取り組む一方で、休日になると、ある意味集中して、趣味に没頭して過ごすタイプの人が多く見られます。いわば、一流の仕事人とは、オフの過ごし方が上手な一流の趣味人、であるようです。こうしたオフの時間に良質なインプットをすることで、仕事に関する発想力や活力が生み出されます。

10月18日(火) 川俣高等学校長

様々な角度から

現在では、スマホやパソコンを使えば、すぐに一定の情報を集めることができます。でも、その情報は既に誰かがまとめたものであり、新たな側面を示してはくれません。以前には多くいた、見えないものを見ようとするタイプの人が少なくなり、今では、見えるものを確実に見ようとするタイプが多い、との指摘もあります。例えば、植物の研究をするのであれば、膨大な資料を集めて読み込むことに加えて、実際に外に出かけ、対象とする植物を、正面から、横から、真上から、そして土に埋もれた中まで見ようとする姿勢こそ大切です。39億年にもなる地球の歴史をヒシヒシと感じながら、太陽エネルギーの下で育つ生命のドラマに直面するのは、何かワクワクしませんか。植物に限ることなく、どんな分野に関わろうとも、見えないものを見ようとすれば、そこには必ず、筆舌に尽くしがたいロマンがあります。

10月17日(月) 川俣高等学校長

集団の在り方

会社では、集団により、一つの目標達成に向けた取組を求められることが多くあります。アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏のように、圧倒的な個の力により、企業を急成長させる場合もありますが、通常であれば、集団で行う意見交換等をとおして開発は行われます。ものづくりで大切なことは、メンバーの間の信頼感、そして共有意識とされています。集団である以上、そこにリーダーは存在しますが、リーダーが一人で100人分悩むよりも、100人のメンバーで1人分ずつ悩む方が、結果として集団のコンセプトは固まりやすく、修正や深化を図ることも容易とされます。1人の100歩よりも、100人が1歩ずつ歩みを進めれば、1歩進んだ100人全員が、それぞれ確実に成長を遂げるので、集団の力は一層大きくなります。

さて、本校は明日より修学旅行となります。次回の本投稿は、10月17日(月)を予定しております。

10月11日(火) 川俣高等学校長

ゼロからイチへ

人は大抵、前回取り組んだことを基に次回に備えます。つまり、既に持っている1(イチ)に掛けることで、2や3などにしていきます。でも、これまで自分が身に付けてきた知識や経験をすべて消し去り、全くの0(ゼロ)からやり直す場合には、前年踏襲の考えは通用しません。0を1にするエネルギーは相当なものです。こうしたときに、絶対に頭に浮かべてはいけないのは、「どうせ無理」という類の言葉です。この言葉からは、何一つ新しいことは生まれません。これまで様々な開発に関わってきた多くの方々は、過程で失敗をしても常に前を向き、挑戦を繰り返し、0を1にしてきました。今後、この使命を引き継ぐのは、生徒の皆さんです。

10月7日(金) 川俣高等学校長

時間による拘束

「人に対して平等に与えられた1日24時間は、使い方次第で36時間にもなるし、12時間にしかならないこともある。」。生徒の皆さんは、こうした趣旨のことを言われた経験があると思います。好きなことには長い時間でも没頭でき、充実した時を過ごせることを考えれば、確かに言い得て妙ですね。発明王エジソンの工場には、針のない時計が掛けられていたそうです。針のない時計は無意味との指摘に対して、彼は、「時間は自分がコントロールすべきもの。時計というバロメータに左右されていては何もできない。疲れたと思えば、その場で休めばいい。仕事が完成するまでが昼間、その後からが夜。自分のリズムを持つことが大切。」と話したそうです。学校や会社など多くの場所においては、そのすべてを適用することは難しい環境にはありますが、ある程度の自由度の高い日などがあれば、試してみるのもよさそうです。

10月6日(木) 川俣高等学校長

異 論

京セラの創業者である稲盛和夫氏が第二電電設立を発表した際に、各署から反対の声が噴出したそうです。彼は、「一定期間、一定金額を使わせてくれ。それでだめなら設立をやめる。」と明言します。いわば、失敗の線引きをしたわけです。その設立が成果を上げた背景には、異論を基に何度も何度も改善を図ったから、とも言われています。新たな計画に異論が存在しないことは有り得ません。異論がないということは、異論を見逃している場合もあり、大きな失敗につながる可能性があります。正面からこうした意見に立ち向かうことで、異論は私たちに、これまで気づくことのなかった課題や欠点をそっと教えてくれるのです。

10月5日(水) 川俣高等学校長

忘 却

学習活動をしている生徒の皆さんにとって、せっかく覚えたことを忘れてしまうのは残念なことだと思います。一方で、覚えたすべてのことを忘れずにいたとしたら、すぐに頭の容量を超えてしまうことにもなります。ドイツには、「どうにもならないことを忘れるのは幸福だ。」という諺もあるように、忘却とは、人を守る機能とも言えます。忘れてしまえば何も見えなくなるので、色に例えて黒、逆に、記憶は読める必要があるため、その色は輝く白とします。でも、考えてみてください。すべてが白などの光明であれば、何も読むことはできなくなります。白い文字が読めるのも、黒の存在があるからです。生徒の皆さん、忘れることを恐れないでください。もしも忘れてしまったら、また覚え直せばよいのです。

10月4日(火) 川俣高等学校長

仕事のプロ

生徒の皆さんがレストランのスタッフだと仮定します。そこに、若い頃に訪れた思い出のレストランで食事をしたいとの思いから、老夫婦から食事の予約が入りました。皆さんなら、その老夫婦をどのようにお迎えしますか。他のお客様同様、特別なことをせずに対応することも選択肢の一つです。でも、せっかくこのレストランを選んでくれたのだから、何かしたいと思うのも自然なことです。レストランが提供する美味しい料理を、お客様に一層美味しくいただいてもらえるよう、全スタッフによる環境づくりを考えることで、お客様に満足いただける度合いも高まるはずです。当時と全く同じメニューを準備してみたり、当時と同じ店内装飾を施したり、同じ座席に座っていただいたり、料理に合わせて店内に流れる音楽も、またテーブルクロスも変えてみたりするなど多くの工夫をとおして、積極的な舞台創りが可能となります。アスリートが筋トレを継続するように、仕事のプロは考えることを継続します。また、考えるという行為は、自分の感性を磨き、心の筋肉の成長を促してくれます。

10月3日(月) 川俣高等学校長

シャウティング

陸上のハンマー投げの選手がハンマーを投げる瞬間に、大きな声を出す場面を目にしたことがあると思います。また、多くの種目で、試合が始まる直前に選手が輪を作り、かけ声を掛け合うシーンもよく見られます。これは、単に気合を入れるためのものではなく、大きな声を出して叫ぶことで脳に刺激を与え、アドレナリンを分泌させるための行為であり、シャウティングと呼ばれています。これにより、身体機能や筋力、集中力や判断力を高めることが確認されています。野球選手が「ボールが止まって見えた。」と話すのも、この表れとされています。ただし、このシャウティング効果は長くは続かず、最大でも30分程度と言われています。競技によっては、最初から最後までその効果を期待できないため、ピンチになったときなど、ピンポイントで使用されているようです。場面にもよりますが、平時を超えた身体機能や集中力を要するとき、生徒の皆さんも使ってみる価値はあります。

9月30日(金) 川俣高等学校長

計画の微調整

生徒の皆さんは、学習計画を立ててはみたものの、その通りに進まず、自分にイライラした経験はありませんか。Amazonの創業者ジェフ・ペゾス氏は几帳面な性格で知られています。起業前には数十ページにも及ぶ綿密な計画を策定するなどしていますが、一方で、「過去に立てた計画に拘束されるなんて馬鹿げている。」とも話しています。しっかりとした計画であっても、現実は、なかなかその通りには動いてくれないものです。ときに、予期せぬ良いことも生じます。そうした場合に大切なことは、「計画通り」ではなく、「臨機応変に物事に対応する姿勢」です。良い、悪いに関わらず、微調整機能を働かせることで計画と現実のズレを修正すれば、後に大きな発展が生まれます。

9月29日(木) 川俣高等学校長

伝える

投資家のウォーレン・バフェット氏は、自ら、自社の株主向けに年次報告書を書くことで知られています。その際に、彼はいつも、専門家ではない自分の姉が、読んで理解できるかどうかを念頭に書くのだそうです。自分が本当の意味で理解していれば、他者が理解しやすいよう表現できるはずです。伝えたいことが相手に伝わらないのは、伝え方にも問題があるのかもしれません。適切・的確な要点まとめができるよう、予め、しっかりとした分析と真の理解の定着が求められます。

9月28日(水) 川俣高等学校長

ドキドキ

緊張する場面にいるとドキドキする、といった経験は誰にでもあると思います。これは、緊張するという精神的な刺激によって、カテコールアミンという物質が分泌されることで起こる現象です。以前にも話したように、こうした場合には、アドレナリンやノルアドレナリンも同時に分泌されるので、集中力も筋力もアップするなど、心と身体が臨戦状態になっています。ドキドキは、緊張の証というよりもむしろ、脳も身体も最高のパフォーマンスを発揮できる状態、とも言えます。生徒の皆さんが試験や試合の際にドキドキしたら、いつもよりもうまくできる兆候、成功する証、と考えることができます。

9月26日(月) 川俣高等学校長

言葉の印象

「天使のように」「悪魔のように」に続く言葉を考えなさい、と問われたとします。通常であれば、「天使のように清らかに、悪魔のようにずる賢く」など、天使には良き言葉を、一方で、悪魔には悪しき言葉を続ける傾向にあります。また、それらの言葉に、「大胆に」か「細心に」のいずれかを続けるとすれば、「天使には細心、悪魔には大胆」を続けると、何となくですが腑に落ちそうです。でも、ゲーテの「ファウスト」に描かれている悪魔は、天使と比較して細かく取り決めをするなど、意外にも慎重で憶病な性格をしています。ということは、「大胆なのは天使、細心なのは悪魔」とも言うことができるのです。私たちは長い経験によって、言葉の持つ印象を決めている場合があります。でも、その印象が違っていることもよく見られます。調べてみると興味深いかもしれませんね。ちなみに、「天使のように大胆に、悪魔のように細心に」という言葉は、映画づくりのコツについて問われた際に、映画監督の黒澤明氏が話された表現です。

9月22日(木) 川俣高等学校長

好きなこと

仕事に取り組んでいるときに、光り輝くような存在である理由を尋ねると、「仕事が好きだから。」と答える方が多くいらっしゃいます。好きなことから得られる経験やスキルは、減ることのない財産になるので、ますます仕事が好きになる好循環を生み出しているようにも思えます。「自由にできる仕事だから。」という答えも耳にします。でも、ここでいう自由とは好き放題することではなく、自分の望んだ人生を、自分で責任をもって選択し生きていくことを意味します。マイケル・サンデル教授が講義の中で述べた、「自由とは、自分のルールに従って行動すること、すなわち、自律のことである。」という内容に匹敵します。一流の仕事人は皆、心から仕事を楽しんでいます。生徒の皆さんの場合には、仕事を学習に置き換えて考えてみてください。本校には今日も、心から学習を楽しめる機会が多く用意されています。

9月21日(水) 川俣高等学校長

直 観

直観は、誰もが備えている能力です。アメリカのヴァンダービルト大学の研究チームによると、論理的に考え熟慮の末に行動するときと、直観によって物事を判断するときでは、脳で行われている情報処理のプロセスが全く異なる、と指摘しています。直観で判断を下すとき、人は論理的な思考プロセスを無視します。では、直観による判断には誤りが多いのか、と言えば、そうではありません。イスラエルの大学での研究によると、左右に2つの異なる数字を瞬間的に表示して、数字の大きい方を尋ねると、被験者の9割は正しい判断をしたそうです。人は、意識的、論理的に思考しても無理なことに対して、直観的に判断することで正しい選択ができる生き物なのです。人が、自分の身を守るために発達したと考えられるこの直観を、もっと大切な存在として扱う必要がありそうです。

9月16日(金) 川俣高等学校長

まとめ

アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏は、ある企業が示した100ページに及ぶ契約書をゴミ箱に放り投げ、「私と話をしたいなら、数枚にまとめよ。」と言ったことがあるそうです。また、GEの売上を伸ばしたジャック・ウェルチ氏は、社内から上がる厚い企画書を指して、「本にするな。」と指示したそうです。共通に言えるのは、厚い書類は自分の思考を整理し切れていない表れであり不要、との信念に基づくものです。例えばA4版1枚の資料であれば、簡潔に要領よくまとめられているため、読む側の時間も奪うことなく、結果としてスピーディーな判断を可能とします。生徒の皆さんが学習する際に、教科書やテキストの内容をノートにまとめていたら、ただもう1冊、同じ教科書やテキストができあがったにすぎない、ということはありませんか。

9月15日(木) 川俣高等学校長

コメントから見える人間性

かつて知事選に臨んでいた俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー氏が、遊説先で観衆から生卵をぶつけられる事件がありました。彼は相手に怒りを向けるのではなく、こう切り返します。「奴にはベーコンの貸しだ」。さて、生徒の皆さんは、このコメントの意味がわかりますか。「生卵をぶつけるなら、ついでにベーコンもよこせば、ベーコンエッグを作れるじゃないか、ベーコンが足りないじゃないか」という、彼独特のジョークです。こうしたジョークが好まれるアメリカとはいえ、普通ならキレることも考えられる緊張した場面で、うまいことを言うものだと感心させられます。では、改めて生徒の皆さんに問います。皆さんがアーノルド・シュワルツェネッガー氏の立場であれば、どう切り返しますか。「投げるのは、ゆで卵にしてくれ。」「塩コショウはないのか。」などでしょうか。「温泉卵もいいぞ。」も、あるかもしれませんね。こうした発言ができるのは、緊張状態の中にあっても、セルフコントロールができている証でもあります。気の利いたコメントは、周囲を和ませるなど、人間関係を円滑にしてくれます。

9月14日(水) 川俣高等学校長

無駄の減らし方

日常的な無駄遣いを減らすには、何か好きなものに置き換えて考える方法があります。パッと財布を開けてしまいそうになるときに、このお金があれば自分の好きな本を1冊購入できる、など、好きなものを思い出すワンクッションを作り出すのです。こうした取組は、時間に関しても同じことが言えます。ぼんやりと過ごす時間を、自分の好きなことに費やせる時間に変換するよう心がけることで、高い満足感も得ることができます。そして自然に、自分の周囲から無駄な存在がどんどん減っている、ということに気づくはずです。自分の好きなものへの変換、生徒の皆さんも、今日から試してみませんか。

9月13日(火) 川俣高等学校長

聞く聴く訊く

生徒の皆さんが会社に就職し、上司から、「仕事について何か問題はありますか。」と尋ねられたとします。皆さんなら、どう答えるでしょうか。大抵の場合、「順調です。特に問題はありません。」との回答が多くなされるそうです。でも、その上司が、「どんな小さなことでも構いませんので、問題や課題などありませんか。」と、さらに尋ねると、「少しだけあります。」と、いつくかの問題や課題が挙げられ、またさらに、「たとえば、こんな問題や課題、無駄はありませんか。」と具体的に尋ねられると、一般的には、かなり多くの意見が出されるのだそうです。結果として、100を超える問題等が挙げられることもある、とのことです。さて、最初の問いかけで全くなかったはずの問題が、実は100もあったというこの事実が、会社にとってみれば、まさに問題です。自らの取り組むことに隠されている問題を明確にしておくためにも、周囲の人やその様子、自分のことをよく「見る観る診る」とともに、周囲の人に対して「聞く聴く訊く」など、複数回にわたる問いかけをする姿勢を持つことは大切です。

9月12日(月) 川俣高等学校長

エリザベス女王

本日未明に、イギリスのエリザベス女王がお亡くなりになりました。本HPの投稿(5月9日)を再掲するとともに、エリザベス女王のご冥福をお祈りいたします。

イギリスで、多くの国賓の方々をもてなす晩餐会が開かれたときの話です。手を洗うために出された水を、ある国賓の方が思わず飲んでしまったそうです。政府要人の方々から失笑がもれたそのとき、その方が間違って水を飲まれたことに気づいたエリザベス女王は、ごく自然に、自分の前に置かれた水をお飲みになったそうです。相手の立場を思う振舞いや心配りは、日頃の意識から生じます。私たちも見習うべきことが多くありそうです。

9月9日(金) 川俣高等学校長

締切仕事術

限界状況になると人は思わぬ力を発揮することから、仕事効率を上げるために、締切を設けることを推奨する本を多く見かけます。締切を設けると、少なからずストレスはかかります。でも、大きすぎないストレスは、程よい緊張感や緊迫感をもたらしてくれます。自然にノルアドレナリンも分泌されるので、注意力と集中力が高まります。生徒の皆さんには、漫然と何かに取り組み始めることに代えて、予め、期日や時間など締切設定を施すことをお薦めします。

9月8日(木) 川俣高等学校長

改善の繰り返し

大抵の場合、人は慣れたやり方で物事に取り組みます。でも、成果の出ない場合には、新しいやり方を取り入れなくてはなりません。もしも、その新しいやり方が原因でトラブルが生じたときに、生徒の皆さんならどう対処しますか。改善しようとして改悪になったのだから、元に戻すこともできますが、そこに成長は期待できません。そうした場合には、さらに改善を加える選択肢もあります。期待通りの結果が伴うまで、改善し続けるのです。何もしないこと、元に戻すことは停滞につながります。変えること、そして変わることこそ大切です。よく言われる、PDCAサイクルを止めたり、逆回転させたりするのではなく、常に正なる方向に回し続けるところから、成長は生まれます。

9月7日(水) 川俣高等学校長

機械の変容

生徒の皆さんが、ある工場の現場責任者だとします。自分の工場に、念願であった新しい機械が導入されました。これで今までのすべての問題が解決できると、皆さんはほっとすることと思います。でも、実はそうではありません。新しい機械は、他社でも導入できます。同じ機械を同じように使っていれば、他社との差別化を図ることはできません。では、どうすればよいのか。その機械に、人の知恵を付けるのです。知恵は、工夫と置き換えることもできます。機械に付けた人の知恵の数だけ、機械は変容を遂げ、その魅力も増します。数か月後に、他社で導入した同じ機械と自社の機械を見比べてみてください。姿・形は同じでも、きっと、全く違ったものとして見えるはずです。

9月6日(火) 川俣高等学校長

うまくいかない要因

あるメーカーで、特定地域の市場シェアが低下傾向にあったそうです。本社責任者が担当者に理由を尋ねると、「景気が悪い」「同業他社と比較して自社価格が高い」など、いわゆる外部要因を多くあげたそうです。そこにシェア低下の原因があると考えた責任者がお客様に直接話を聞いたところ、「こちらのニーズを無視して、売りたい商品の話ばかりする」「見積書の提出が遅い」「そもそも担当者が滅多に顔を出さない」など、内部要因がほとんどでした。営業方法を根本から見直し、より多くの企業の方と接する時間を確保するなど工夫したところ、売上は飛躍的に伸びました。外部要因にはどうにもならない要素も多くありますが、内部要因であれば、工夫次第で改善を図ることができます。また、不振の原因を内に求めることで、知恵が出ます。課題解決には、真摯な要因追求の姿勢が求められます。

9月5日(月) 川俣高等学校長

無茶な制約

車を生産するある会社の社長が、今の費用、そして生産に係る時間の2分の1程度で行うよう指示を出したそうです。何か月もの間、夢の中にも出てくるほど考えた末に、担当者は、他車と一部生産工程を同じにするなど、小さなものも含めて数百項目もの工夫を施し、一台の生産に係る費用と時間を大幅に短縮することに成功したそうです。潤沢な予算と時間があれば、人は何も変えようとはしません。予算と時間の極端な制約があれば、何とかしようとし、知恵を出します。時に生じる無茶な制約は、人に知恵を出すことの大切さを思い出させてくれます。そして、知恵を出すことは、人を大いに成長させてくれます。

9月2日(金) 川俣高等学校長

青い鳥

メーテルリンクの「青い鳥」という童話をご存じでしょうか。チルチルとミチルが夢の中で過去や未来の国を訪れて、幸福の象徴である青い鳥を探しに行く話です。でも、見つけることができずに家に帰った二人は、自分たちが飼っている鳥こそが、幸せの青い鳥であったことに気づくのです。私たちが気づかないだけで、幸せは、いつも自分の身近なところにあります。では、どこに私たちの幸せはあるのでしょうか。具体的には、脳の中にもあります。ある目標や計画を立てたとき、何かワクワク感を感じることはありませんか。それは、脳内にドーパミンが分泌されているからです。そして、その目標の実現が図られると、大きな達成感とともに、より多くのドーパミンが分泌されます。それは、幸福感に満たされる瞬間です。幸せに、大きい小さい、はありません。幸せは、間違いなく幸せなのです。生徒の皆さんも、こうした機会を一層多く持つことで、充実した楽しい生活を送ることができます。

9月1日(木) 川俣高等学校長

目標達成

こうなればいい、というイメージを強く持ったほうがその達成率は高まる、と言われています。ここに、アファーメーションと呼ばれる方法を紹介します。紙を1枚用意して、まず最初に、自分の達成したい目標とその期限、内容を書きます。次に、その目標が達成されたときの自分の気持ちを書きます。そして、目標達成のための計画を具体的に書き込んでいきます。最後に、もう一度、最初に書いた自分の達成したい目標とその期限、内容を書けば出来上がりです。注意事項としては、「~しない」という否定形は使わず、すべて肯定形で書くこと、主語は「私」とすること、目標は「~に取り組んでいる」というように現在進行形で書くこと、が挙げられます。この紙を見える場所に貼り、毎日声に出して読むことで、意欲と自信が高まります。チームとしての目標であれば、チーム全体の士気や一体感が飛躍的に高まることになります。生徒の皆さんも是非試してみてください。

8月31日(水) 川俣高等学校長

気間理

先週金曜日に、本校2学期の始業式が行われました。その際に話したことを投稿いたします。

柔道や剣道で言えばきちんと身構えること、相撲で言えば両手をつくことなど、日本に古くからある競技には、立会いという「きまり」があることを知っているでしょうか。ただし、「きまり」といっても、規則に従うことだけを意味するものではなく、次に述べる言葉から取ってそう呼んでいます。まず、きまりの「き(気)」とは、気合や気迫を指します。試合に臨む際の集中力を高める意味においても非常に重要です。次に、「ま(間)」とは、間合いを指します。剣道に例えれば、相手に近づきすぎれば打ち込まれることもあり、また、離れすぎては竹刀は届きません。自分の実力を十分に発揮するためにも、自分を客観視しながら、相手との適切な距離感を取ることが求められます。最後に、「り(理)」とは、道理を指します。物事をきちんとあるべきように整え、理にかなった方法で取り組むことが、周囲の皆さんの理解にもつながり、また、周囲の皆さんから、多くの協力をしていただけることにもなります。これら3つの気間理(きまり)は、学校生活にも大いに応用できます。今年本校では、公開文化祭が予定されています。川高ここにあり、と示す、大きな、そして大切な文化祭です。気間理の精神により、本気度の高い気持ちを込めながら準備に取り組む中で、時には作品を客観的に眺め、道理にかなった方法により完成を目指してほしいと思います。高校生として、豊かな表現力による発表を行うことで、関係する方々から高い評価をいただくことができるはずです。そして、来校される皆さんに大きな感動を与えることのできる「かえで祭」になると思っています。一糸乱れぬ川高魂の下、生徒の皆さんが取り組むことを楽しみにしています。

8月30日(火) 川俣高等学校長

 

タイムプレッシャー

時間に制約を設けることはあせりにもつながりますが、一方で、思わぬ力も生み出します。皆さんはウルトラマンを知っていると思います。正義のヒーローの代名詞ともなったウルトラマンは、なぜあんなに強いのでしょうか。その秘訣の一つは、3分しか闘えないことにもあります。活動できる3分が迫ると、胸のカラータイマーは点滅します。必ず3分以内に怪獣を倒さなければならない、その緊張感が強さを生むのです。このタイムプレッシャーとも言える時間の制約は、生徒の皆さんが日常取り組むことにも応用できます。普通なら100分でやっていることを80分で終わらせると周囲に宣言し、時計で計測するなど自分に負荷を与えると、大抵、80分でできるのです。60分に時間設定をしたとしても、これも実現可能です。モチベーションは、タイムプレッシャーをかけることで高まります。それは、ドーパミンの一層の分泌も促します。時間の制約を設けるウルトラマン取組術の有効活用は、とても楽しそうです。

8月29日(月) 川俣高等学校長 

過去の自分との比較

自分を知ることは大切です。心理学でも、メタ認知として重要とされています。そして、人はよく他者比較をして、自分をもっと深く知ろうとします。でも、このことで、相手に激しい妬みを感じたり、強い自己否定を起こすこともあるなど、他者と自分との比較には危険も伴います。では、私たちは、何と比較をすればよいのでしょうか。少しだけ背伸びをすれば届くかもしれない、憧れのような存在が近くにいればよいのですが、もしもそうした対象が見当たらない場合には、過去の自分との比較をすればよいのです。今の自分を見て、過去より明らかによくなっていれば上出来です。わずかな進歩であったとしても、それもまた素晴らしいことです。誰を傷つけることもなく、誰に傷つけられることもなく、己を知ることができ、そして、結果として、自分の成長につながります。

8月26日(金) 川俣高等学校長

脳内物質

幸福に関するドーパミンや恐怖・不安に関するノルアドレナリン、興奮や怒りに関するアドレナリン、落ち着きに係るセロトニンや眠気に係るメラトニン、ひらめきに関するアセチルコリンや多幸感に関するエンドルフィンなど、人には7つの脳内物質があると言われています。そして、ドーパミンが出過ぎるとセロトニンが抑制的に働くなど、それぞれが重要な役割を担っています。どれか一つが突出していても有効とは言えません。大切なのは、それら7つのバランスです。不規則な生活や偏った食事、ストレスはそのバランスを崩し、私たちの生活に大きな影響を及ぼします。7つの脳内物質の効果的な活用を図るためにも、基本的生活習慣の確立とその実践が必要です。

8月25日(木) 川俣高等学校長

いつから学ぶか

知識を持っていると一層楽しくなる、と言われています。でも、今から学ぶにはもう遅い、という声もよく耳にします。学びの旬はいつなのでしょうか。学びの気持ちが高まる時期、そのときこそ学び時です。年齢を重ね過ぎたからもう遅い、ということもありません。むしろ、大人になってからのほうが、より効率よく学べる材料を手にしています。大人の学びは、回り道をすることなく、大事なことだけを覚えることができます。たとえば、様々な日本語の語彙やコミュニケーション手段等を知ったうえで学んだほうが、外国語の習得は格段に速くなります。高校生の皆さんならもちろんのこと、学びについて遅すぎることはありません。もしかすると今日が、生徒の皆さんにとって学び時かもしれません。

8月24日(水) 川俣高等学校長

努力の継続

昨日の自分よりも少しだけ成長できたかな、と感じるうれしい瞬間は、誰でも経験したことがあると思います。そうした実感を持てるからこそ、人は前に進んでいくことができます。純粋に自分の目的に向かって進んでいるので、自分の経歴や他者からの評価は気になりません。自分の努力にすべてがかかっているからこそ、他者や環境に左右されることがなくなります。結果として、自分の限界を決めるのは自分だ、という、当たり前のことに気づくのです。そう、生徒の皆さんの限界を決めることができるのは、生徒の皆さん自身です。

8月23日(火) 川俣高等学校長

エピソード記憶

人の持つ記憶には、長期記憶と短期記憶があります。自分で疑似体験するようなイメージについては、長期記憶の中でも、特にエピソード記憶と呼ばれています。教科書の内容は忘れがちでも、自分に起きた出来事はめったに忘れることはありません。まさにこれこそ、エピソード記憶の強みです。ということは、例えば教科書を読む際にも、そこに書かれている人の気持ちになって、その世界に入り込みながら読むことで、記憶の度合いは一層増します。これは、学習以外にも応用できます。仕事でプレゼンテーションや会議がある場合には、参加する方々と自分が話している想像の世界に入り込み、「相手はどんな反応を示すだろうか。」など、想定できるシーンを前もって数多くイメージすることで、当日のコミュニケーションは良質になることが証明されています。意外に難しいことではないので、是非、生徒の皆さんも試してみてください。

8月19日(金) 川俣高等学校長

全体像の把握

学習には計画性が必要です。でも、先が見通せずに、途中で挫折してしまうこともあります。詳細な説明がなされている厚いテキストは深く知る上では有効ですが、一方で、やや薄めのテキストを使って、学習の全体像、言い換えれば、学習内容の骨格を短期間で把握してしまうのも一つの方法です。テキストの作成者ではなく、自分で学習ロードマップの作成を手掛けるのです。学ぶべき骨格を先に把握できれば、あとで、じっくりと身(深い知識)をつけていく作業に取り組むことができます。そのためにも、生徒の皆さんには、教科書やテキストの目次の有効活用をお薦めします。

8月18日(木) 川俣高等学校長

スギてはいませんか?

人は多くの人との関係により生活をしています。だからどうしても、人に気を使いすぎたり、人に合わせすぎたり、または、人の評価を気にしすぎたりするなど、多くの「スギ」を抱え込むこととなります。そして、その「スギ」は大抵、息苦しさを招きます。スギだらけの心に必要とされるもの、それは、車のハンドルがそうであるように「あそび」の感覚です。「スギ」ではなく、敢えて心に「スキ」を作るのです。「スキ」のある状態は、人の心を穏やかにし、創造性豊かな発想を可能とします。そして、その「スキ」からある対象を好きになることで、興味や関心の領域を広げたり、その深化を図ったりすることができます。

8月17日(水) 川俣高等学校長

整 頓

この投稿でも何度か整理整頓について話をしました。正確には、整理とは、いらないものを処分することを言い、整頓とは、すぐに取り出せる状態にすることを指します。重要性は整頓にあります。でも、生徒の皆さんは、学習活動の際に、何かを探すことに多くの時間を費やしてはいませんか。アメリカのビジネスマンに関する調査によれば、平均的なビジネスマンは、年間の総労働時間の約30日分にあたる時間を何かを探すことに費やしている、というデータがあり、今もその意識改革に取り組んでいます。仕事(学習)効率を上げる最善の策こそ、整頓です。生徒の皆さんも、ものを探すことは学習活動の一環である、という意識の変革を図ってみませんか。

さて、本投稿はしばらくの間お休みをし、再開は8月17日(水)を予定しております。その際には、またよろしくお願いいたします。

8月2日(火) 川俣高等学校長

詩人である坂村真民氏の詩に、「光る、光る、すべては光る。光らぬものはひとつとしてない。みずから光らないものは、他から光を受けて光る。」というものがあります。一部のもののみが光るのではなく、すべての存在が光り輝くことができる、と訴えています。そういえば、美術家の清川泰次氏も、「どんな人でも、他の人にはない良さを持って生まれてくる。自分の中の宝石は自分でしか磨けないが、それを磨くことが生き甲斐というものである。たとえそのとき、自分の中に宝石が見つからず石であったとしても、その石を、どこにもない美しい石に磨き上げることだ。磨かぬダイヤモンドよりも、どれほど美しいことか。」と話されていました。私たちは、あるときは、自ら光を放つことで周囲を明るくし、一方で、あるときには、周囲の人の放つ光によって助けられたりしているのかもしれませんね。

8月1日(月) 川俣高等学校長

予 防

ものづくりに必要な機械、この故障は、企業にとって大きな損失となります。故障の未然防止には、劣化を防ぐ日常点検や劣化測定のための定期点検、劣化を早期に回復するための予防修理などの観点が必要とされます。人に例えてみれば、日頃から食事に気を配り、健康診断を受け、早期発見や早期治療に努める、といったことになるのでしょうか。機械が壊れるという場合、前述したことを考慮すると、人が機械を壊している一面もあるのかもしれません。機械の修理以上に故障の未然防止に努めるのは、人に関する予防医学にも通じる考えです。

7月29日(金) 川俣高等学校長

夢の実現

夢を持つから人は成長する、と言われます。その実現に向けて努力し、試行錯誤を繰り返すからこそ達成感を感じることができ、また、その達成感から、次の夢の実現に向けた大きなエネルギーを得ることができます。大切なのは、夢は必ず実現する、と、迷うことなく信じることにあります。例えは少し異なりますが、羽が小さなクマバチは、航空力学上は飛べないはず、とされています。でも実際には、クマバチは立派に飛んでいます。「理論上、君は飛べないんだよ。」と語りかけたら、クマバチに迷いが生じ、そして、それ以降は飛べなくなるかもしれませんね。生徒の皆さんには、自分の持つ夢を真正面から見据え、その実現を信じ抜く信念の下、学習活動に取り組んでほしいと思っています。

7月28日(木) 川俣高等学校長

整 理

生徒の皆さんの机上は、整理整頓ができているでしょうか。できる人はその机を見ればわかる、とも言われます。でも、意識はしても、なかなかうまくいかないこともあると思います。どうすればよいでしょうか。お店のトイレに入ろうとすると、きちんと並べて置くよう、壁には張り紙があっても、脱ぎ捨てられたスリッパが散乱していることがあります。そうした場合に、スリッパを脱ぐエリアを区画線で区切ることで明確にスペースを確保すると、利用者には、きれいに並べて脱ぐ意識が芽生えます。同様に、机の上に区画線を引く(頭の中で区画線を引いてもかまいません)ことで、作業スペースが確保でき、また、物を置く場所や物を置かない場所などを分けることができ、結果として、作業効率が飛躍的に向上します。生徒の皆さんの周囲が整理整頓に満ちた空間となるよう、取り組んでみませんか。

7月27日(水) 川俣高等学校長

プラスとマイナス

言葉のイメージとして、マイナスよりもプラスは良い、という印象があります。でも、ドライバーで考えてみると、プラスドライバーはプラスのネジしか回すことができませんが、マイナスドライバーは、どちらのネジも回すことが可能です。自分の弱点をマイナスとするなら、それを認識した上で強化することで、プラスに変えることもできるはずです。マイナスドライバーになり切った自分を想像してみてください。ネジという環境に入り込み、ネジ溝に完全にフィットすることで、相手がどういった対象であっても自分は適応できます。加えて、相手のことを変えることもできます。そこに、変な力みは不要です。柔道の山下泰裕氏が言うように、自然体が最も強いのだと思います。

7月25日(月) 川俣高等学校長

緊張は味方

緊張により実力を発揮できなかった、という話をよく耳にします。でも、適度の緊張は課題達成率を上げるなど、学習能力を高めてくれることがわかっています。発見者の名前から、ヤーキーズ・ドットソンの法則と呼ばれています。適度の緊張状態では、ノルアドレナリンという物質が分泌されます。集中力や判断力、脳のパフォーマンスを飛躍的に高めてくれる物質です。ただし、緊張は適度であることが条件です。過度のそれは、頭を真っ白にし、筋肉を強張らせるなど、パフォーマンスの低下を招くそうです。場面に応じて緊張をコントロールすることができたら、かなり楽しそうです。

7月21日(木) 川俣高等学校長

個 性

個性の重要性は言うまでもありません。でも、個性は確固とした変わらぬ存在、という考えにより、自分を拘束してしまうことは、かえって少し堅苦しさを覚えます。そもそも、個性(パーソナリティ)の語源は、仮面を意味するペルソナ、だと言われています。私たちは日常生活の中で、場面に応じてペルソナを使い分けます。素の自分を出せる個性にもペルソナがあるのであれば、個性は決まりきった1つのものではない、というのが今の心理学の考え方です。自らの成長や取り入れる知識量に応じて、個性は、臨機応変、変幻自在に変わっていきます。自分の個性を見つけることができないと悩んでいる生徒の皆さん、もしかすると、皆さんの個性は今、変化を遂げている最中なのかもしれません。

7月20日(水) 川俣高等学校長

良質の睡眠

睡眠が人にとって重要なのは言うまでもありません。良質の睡眠を得るには、特に、寝る前の2時間の過ごし方を改善することが有効です。その一つとしては、ブルーライトを浴びないことです。ブルーライトとは、スマホやPC、蛍光灯から発せられる光をいい、青空の波長、つまり、昼に出る光の波長と同じものです。ブルーライトを浴びれば、今が昼と誤認し、睡眠物質のメラトニンの分泌を抑制してしまうのです。一方で、赤い光は夕焼けの波長です。そうした光を浴びると、脳は夜になったと認識し、メラトニンが分泌され、全身活動に徐々にブレーキがかかります。生徒の皆さんは、夜にたっぷりとブルーライトを浴びてはいませんか。

7月15日(金) 川俣高等学校長

五月晴れ

昔の話です。ある高校の校長先生が5月に行われた集会で、「文字通りの五月晴れの下」と話されたとき、一人の生徒は、ふとした疑問が浮かびました。松尾芭蕉の句「五月雨をあつめて早し最上川」の中に出てくる五月雨は梅雨の雨を指し、新緑の季節である五月を指してはいない、と授業で習ったことを思い出し、五月晴れも、古くからある表現であれば、同様に梅雨の合間の晴れを指すのではないか、と考えたからです。その生徒は校長室に行き、直接、校長先生に自分の疑問について話します。二人で辞書を調べ、新暦五月の晴れという意味もあることを確認した上で、でも、表現する際に、「文字通りの」を付けると誤解が生じることから、その校長先生はその生徒に誤り、その後二人で、しばし松尾芭蕉の時代の話に浸ったそうです。学んだ知識を応用して考え、勇気をもって校長室のドアをたたいたその生徒は立派です。学ぶことの大きな意義が、そこにはあります。ちなみに、その校長先生はすぐに校内放送をとおして、ご自身の話された表現に間違いがあったことを全校生徒に伝えたそうです。

7月12日(火) 川俣高等学校長

責任の倫理

ロンドンの街中を車椅子で移動していたイギリスの少年が、歩道の轍に車輪を取られ、動けなくなりました。偶然そこを通りかかった日本人が手を差し伸べようとすると、周囲にいたイギリスの方々から、止めるよう言われたそうです。周囲のイギリスの方々は、誰一人その場を立ち去ることなく、手を出す代わりに、苦労して轍から出ようとするその少年に大きな声援を送り続けました。そして、彼が脱出に成功すると、大きな拍手を送ったそうです。ヨーロッパ伝統の、自分の人生は自分で切り拓く、という人間観の一端を垣間見ることができる出来事です。手を差し伸べないことは冷淡な行為ではなく、人と人との間に、心の橋が架かっているからこそできることです。日本では信条の純粋さを重んじる傾向にあります。一方で、行為の先にある責任までは考慮しないこともあります。信条の倫理に加えて、責任の倫理の重要性を説いたのは、ドイツの社会学者マックス・ウェーバーでした。価値観の多様化に直面する中、私たちには、どういった言動を取るのがよいのかを瞬時に判断する責任が求められています。ちなみに、偶然少年の脇を通りかかった日本人は、私の大学の同級生です。

7月11日(月) 川俣高等学校長

普 通

人は初めて会った人に対して、好きか嫌いか、の感情を持つ傾向にあります。自分の身を守るために備わっている、そうした判断を下す場所が偏桃体です。ちなみに、偏桃体では、0.02秒で判断をするそうです。でも、嫌いという感情を持ってしまうと、それが相手にも伝わるので、人間関係という観点からは好ましくありません。嫌いの感情を抑制するには、好きか嫌いか、という基準に、普通という基準を加えるとよい、とされています。大脳皮質を進化させ、じっくりと考える論理的思考ができる人間には、偏桃体の働きをコントロールできる力が備わっています。嫌いの感情を薄めて、できれば、好きか普通か、の2つの基準により、人と接してみるのも楽しそうです。

7月8日(金) 川俣高等学校長

甲子園の砂

高校野球全国大会が開催される甲子園、全力で闘った後に、甲子園の砂(土)を袋に詰める球児の姿を目にしたことがあると思います。その砂は、かつては中国福建省から、現在では、岡山県や三重県、鹿児島県や大分県、鳥取県など複数の県から運ばれているそうです。もともと、甲子園の周囲は白砂青松の地で、浜砂が豊富にありましたが、その鮮やかな白さからボールが見えにくいこともあり、黒土を混ぜるようになったそうです。春は雨が多いので、水はけをよくするために砂を増やし、白砂6に対して黒土4に、一方で、夏は日差しが強くボールが見えにくいので、白砂4.5に対して黒土5.5と配合を変えています。こうした工夫一つ見ても、大会を運営される方々が、選手の皆さんが良い環境でプレーできるよう、様々なことに気を配っていらっしゃることが窺えます。ちなみに、初めて甲子園の砂を持ち帰った球児は、読売巨人軍監督を勤められた川上哲治氏と言われています。昭和12年の決勝で敗れた熊本工投手川上氏は、涙をぐっとこらえて、黙々とグランドの砂を集めたそうです。間もなく夏の甲子園の季節です。

7月6日(水) 川俣高等学校長

自己都合

人は自分に都合のよい情報を集め、一方で、不都合な情報を遠ざける傾向にあります。これを心理学では、確証バイアスといいます。でも、客観的な判断を行うためには、こうした確証バイアスに抗うことも大切になります。立場の異なる人の話に耳を傾け、多方面から情報を得ることで、導かれる判断の正確さは格段に増します。生徒の皆さんも、こうした取組を意識的に行うことにより、自らの一層のスキルアップを図ることができます。

7月5日(火) 川俣高等学校長