令和4年度

校長より

時分の花

能を大成した世阿弥の本「風姿花伝」の中に、「時分(じぶん)の花」という言葉が出てきます。人はその時々により年齢に応じた花がある、という意味を持ちます。例えば、若い時の勢いを感じる魅力の花、そして、年齢を重ねた時の人間の幅を感じる寛容の花、といったものです。生徒の皆さんは、10年後、20年後、あるいは50年後に、どのような花になっているでしょうか。心の中に「花」の概念を持つことで、生きる上での自らの美学になることは間違いありません。

11月15日(月) 川俣高等学校長

苦痛の中の光

生徒の皆さんもこれまでに、何かに取り組んでいる際に苦しくてたまらず逃げ出したい、と感じた瞬間を経験していることと思います。誰でも楽しく過ごしたいと思っています。でも、鉄鋼王と呼ばれたアンドリュー・カーネギーのように、敢えて紆余曲折の道を選択した人もいます。苦しみに満ちた険しい道の上を歩くことで、勇気が鍛えられるなど、得られるものが数多くあるからだそうです。順風満帆な生活とは趣を異にする、知識や知恵を得ることのできるこうした機会は、貴重とも言えます。

11月11日(木) 川俣高等学校長

友との共有

学習活動は一人で取り組むことが多くありますが、一方で、友人と一緒に学ぶことで、その効果を高めることもできます。福沢諭吉氏は、自分が勉強してきたオランダ語よりも、これからの日本には英語が必要となることを知り、大きな絶望感を感じたそうです。その後に彼が取った行動、それは、英語を深く知る人を探し、共に学ぶ機会を作ったことでした。ちなみに、彼は得意とするオランダ語もまた、多くの友人と共に学んでいます。友人との学びは、知識を共有できることに加え、何かを成し遂げたときの喜びも分かち合うことができます。同じ志を持つ者同士、お互いを高め合う機会を持つようにしてみませんか。

11月9日(火) 川俣高等学校長

最大限の可能性

何かをしているときに、「このくらいでいいだろう」と思い、その取組をやめてしまう経験は誰にでもあります。でも、大抵の場合、後になり、やめたことを後悔することになります。自分の目の前に広がる無限の未来を、自分自身の手で消去してしまうことは、非常にもったいない話です。自分で自分にストップをかけてはいないか、あるいは、自分に言い訳を言い聞かせてはいないか、こういったことについて、私たちは常に検証を試みる必要がありそうです。「最大の敵は自分自身」との認識を持ち、克己心の下、日々の生活を送ってみませんか。

11月8日(月) 川俣高等学校長

授業風景(美術編)

芸術科目のうち、美術を選択する1年生の皆さんが静止画作成に取り組んでいます。先生の描いた模範絵を越えようと様々な工夫をしながら、今月中の完成を目指します。

 

立体感を出すために、

色遣いを考慮するなど

工夫しています。

 

 

個々の形を整えるなどして、

より一層良いものとするよう

取り組んでいます。

 

 

なお、美術室内には、先輩が残した作品が数多く展示されています。先輩方のレベルに少しでも近づくことができるよう、授業をとおして一生懸命に取り組みます。

 

 

 

        

 

          

 

 

 

 

 

11月5日(金) 川俣高等学校長

 

 

軽やかな心

人が持たなくてはならないものを一つあげよ、と言われたら、生徒の皆さんは何を思い浮かべますか。それは軽やかな心である、と、哲学者ニーチェは指摘しています。幼い子どもが、「やりたい。」と思い行動する根底にあるもの、それが軽やかな心だそうです。言い換えれば、好奇心です。先天的に、こうした心を備えている人もいます。一方で、多くの知識に触れることでも、その習得は可能です。先人が切り拓いてくれた新たな分野を知ることにより、目の前にかかっていた霧が晴れるかのように、先を見通すことができます。軽やかな心を備えることで、毎日の生活も元気に送ることができます。自分の中に湧き出るかのようなエネルギーを、生徒の皆さんも是非感じ取ってみてください。

11月5日(金) 川俣高等学校長

読書という名の知の筋トレ

読者は、知性を鍛える上で重要です。最近では、挿入絵を多く取り入れた本も販売されていますが、想像力を働かせるという観点からは、挿入絵は少ない方が望ましい、と齋藤孝先生は指摘します。挿入絵があると、見たままを理解することで十分であるため、想像の余地は残らなくなります。能動的に想像力を働かせなくても、面白いことが次から次へと出てくるため、そもそも能動的になる必要がなくなる、ということだそうです。こうした意味において、文字を主体とした本を読むことは、知の筋トレとも言えます。そういえば、たまたま読んだ本が、後にドラマ化や映画化された際に、自分の考えていたものとはかなり異なっていて違和感を感じた、という経験はありませんか。これも、私たちが読書をした際に、無意識のうちに、文字から想像したものを頭の中で映像化していた証だと思います。そして、こうした体験もまた、読書の醍醐味の一つとされています。

11月4日(木) 川俣高等学校長

柔軟性

心理学者アルフレッド・アドラーは、人が、ある程度の年齢と経験を積み重ねていくことで思考法が固まっていくことを、ライフスタイルの確立と呼んでいます。しっかりとしたライフスタイルを持つことは、一見するとよいことにも思えますが、一方で、ものの見方も固定化してしまう一面があります。アインシュタインも、「常識とは、その人が18歳になるまでに獲得した偏見のコレクションである」との厳しい言葉を残しています。頭を柔軟にして、様々なことに対処できる力を備えるにはどうしたらよいのか。それは、物事を論理的に突き詰めて考える型と、直感で判断できる型の両方を持ち合わせることによります。そして、その習慣化には読書が最適です。多くの筆者が、読者である私たちに投げかけてくれる提案を正面から受け止め、自分の中に定着を図ろうと心がけることにより、前述した力の習得を一層円滑に行うことができます。

11月2日(火) 川俣高等学校長

人生の花

人生の美しい在り方がよく花に例えられるなど、人と花は縁が深い関係にあります。花を美しく咲かせるには、肥料や水の与え方、時期に合う適切な手入れなど、大変な準備と苦労を重ねる必要があります。「ひと晩に咲かせてみんと梅の鉢を火にあぶりしが咲かざりしかな」という石川啄木の歌もあります。さて、花への気遣いは、そのまま人の成長にも当てはまります。生徒の皆さんも、心身の健康に心がけながら、自分に合った、自分の目的に沿った生活を継続し、十分な栄養を蓄える時期をとおして、自分自身の大きな花を咲かせてみませんか。

11月1日(月) 川俣高等学校長

真の価値

私たちは、多くのするべきことを抱えて生活しているので、どうしても目先のことに注意のすべてを向けてしまいがちです。でも、目先の有効性と比較すると、遠い将来において必要とされるもの、その価値は非常に大きなものです。では、そうした真の価値はどこにあるのか。また、どうやってそれを見つけるのか。韓非子には、「道は見るべからざるに在り、用は知るべからざるに在り」とあります。一見すると無駄と思われるものであっても、じっくりと吟味すると、そこには深い役割があり、また尊い価値もあります。さしあたって役に立たないと思われることの集積が、将来の自らの人生を形作ることもあります。裏に隠れて表面上には出ていないもの、それを見つける力が求められています。

10月29日(金) 川俣高等学校長

小さな親切運動

昭和37年度の東京大学卒業生に向けた当時の学長さんの話の中に、「小さな親切にも心を配ろう」との提唱があり、その実践を図った高等学校の一つに、群馬県の明和高等学校がありました。通学時に、各生徒が自主的に、電車やバスの中で席を譲る活動を始めたそうです。この日常生活のごく自然な取組は、これもごく自然に上級生から下級生に受け継がれました。席に座ることのできた方々からの「ありがとう。」の一言に支えられ、約15年程前に閉校となるまで、百万回をはるかに超える活動として定着したそうです。誰が決めたわけでもない、自らの真の思いの下、行動すれば、周囲の方々に大きな喜びを届けることができそうです。

10月28日(木) 川俣高等学校長

鏡から学ぶ

生徒の皆さんは、一日に何度か鏡を使うことと思います。映し出される自分の姿を見て、何を思うでしょうか。鏡は、自分を客観視できる貴重な道具です。さて、話は変わりますが、日本の古典芸能である能は、能役者が面をつけ、台詞のない、しぐさで演じる極めて精神的、象徴的な劇と言えます。よって、能役者には優れた心と、その心を形として表現する演技力が求められます。能役者は、舞台につながる鏡の間において舞台への出を待ちます。鏡の間には、その言葉通り壁に鏡がかけられており、役者は自分の姿を映し衣装を整えるとともに、静かに心を正すのだそうです。コンパクトな鏡を持ち歩き、自らの姿を確認することも大切である一方で、心の中に鏡を備え、自らの心を映しながら、正しい考え方を求めることもまた大切です。

10月27日(水) 川俣高等学校長

中 庸

私たちは、大小を問わず無意識のうちに、すべての勝負に勝ちたいと願う傾向にあります。そういえば、白黒(しろくろ)をつける、または黒白(こくびゃく)をつける、という言葉もありますね。これは、囲碁に例えた表現です。でも、その囲碁の世界では、先手後手が最善を尽くし、最後には持碁(黒白の面積が同じ)になること、これを理想的な対局とする考えもあるのだそうです。どちらに偏ることもない中庸の考えは、現代においても必要とされています。

10月26日(火) 川俣高等学校長

課題解決

歴史的に成功したと言われる人は、あきらめないことの大切さを強調します。成功した人は、多くの人が感じる、「無理だ、だめだ」の感覚を持ちません。加えて、多くの人が、後々のことを考えて余力を残すのに対して、ここぞというときに、最後の1%まで躊躇なく力を出し切ります。私たちは、全力を尽くして課題解決を図ろうとしているように見えて実は、課題と正面から向き合うことなく、ただ課題解決の先送りをするために、多くの時間とエネルギーを費やしているのかもしれません。こうした場合に大変貴重なもの、それは、自分を客観的に見てくれる友からのアドバイスです。

10月25日(月) 川俣高等学校長

断捨離

物を捨てることを想像してみてください。これまでの努力や苦労、楽しかったことなど、思い出のあるものであればあるほど、捨てる際には当然悩みます。過去のものを捨てることで得られるもの、それは未来です。成功するのかしないのか、定かではない未来に向かう際の一抹の不安も、捨てる行為の妨げになります。でも、「坐忘」という禅の言葉があります。古いものを捨てなければ新しいものは手に入らない、という意味の言葉です。未来に向かう試みの過程で、たとえ失敗したとしても、それは成功のもとになる。その繰り返しが大きな成功につながる。時代の変革期には特に、坐忘の考えは重要です。

10月22日(金) 川俣高等学校長

最も重要なこと

生徒の皆さんは、何かを考え、何かを信じ、何かを知ることで安心してはいませんか。こうした行為は大切なことではありますが、本来の目的とは異なります。最も重要なこと、それは、こうした行為を基にして何をするか、です。

10月20日(水) 川俣高等学校長

3ワーク

生徒の皆さんが、自らの進路目標の達成を目指すときに必要とされること、その第一は知識の定着です。教科書等を活用するこうした学習活動は、ヘッドワークと呼ばれます。第二としては、志望する大学や会社についてよく知ることがあげられます。情報を活用したネットワークです。そして第三に、同じ環境にある友人とのチームワークを要します。一人で行うヘッドワークやネットワークには限界があることから、それぞれの得意分野を持つ者同士が教え合うチームワークは、特に有効です。自らが「一を聞いて十を知る」存在となることと同じくらい、「十を知る人」から教えてもらうことは、理解の一層の深化を図ることができます。受験はチームワーク、と言われる所以はここにもあります。

10月19日(火) 川俣高等学校長

勇 気

新しい局面を迎えるとき、誰でも躊躇します。でも、新たなことに取り組むことができる、これは幸せなことです。自身の進歩がなければ、何の変化も生じません。自身の進歩があるからこそ、新しい局面を迎えることができます。常に、新たなことに挑戦し続ける勇気を持ちたいと思っています。詩人のゲーテは、次のように述べています。「名誉を失うのは、多くを失うことになる。でも、勇気を失うのは、すべてを失ったことになる。」

10月15日(金) 川俣高等学校長

魅 力

人から尊敬される存在になるためには、何が必要でしょうか。多くの知識に加えて、相手を思いやる優しい気持ち、意思決定力、そして行動力も要します。こうした様々な事象が重なり合って、徐々に人の魅力は形成されていきます。そういえば、人を引き付ける魅力(attraction)には、行動(action)という単語も含まれていますね。

10月14日(木) 川俣高等学校長

心の時間

現代では特に、私たちの行動は、その多くを時間により拘束されている感があります。その時間とは、いわゆる時計の時間を指しますが、一方で心の時間も存在する、と、心理学者の一川誠氏は指摘しています。時計が表す時間に対して心の時間は、人の心理状態や体調、置かれている環境など様々な要因により、時の進み方が人それぞれに異なるのが特徴です。こうした時間の持つ側面を念頭に置くことで、他者と時間の共有化を図る際にもお互いを気遣うことができます。相手に対する思いやりも生まれます。

10月13日(水) 川俣高等学校長