令和4年度

校長より

大切なもの

トンネル工事を行う際には、一般的に両側から同時に堀り始め、真ん中辺りで一致すると貫通となります。その最後に破られた岩石の破片のことを貫通石と呼びます。トンネルが貫通したときの感激は言葉で表すことのできないほど大きく、また、コンピュータ制御された掘削作業となった今であっても、その瞬間の感動が薄れることはないのだそうです。だから、貫通石は1つずつ丁寧に袋に入れられ、関係した方々に配られることもあります。複数年にわたり作業に従事した工事関係者の方々は、それを大切にポケットにしまい込み家族のもとに帰ります。ちなみに、これまでにかなり多くの貫通石が配られたのは青函トンネルが完成したとき、とも言われています。生徒の皆さんは、何か大切にしている思い出深いものはありますか。

9月22日(金) 川俣高等学校長

記憶力

物覚えが悪くなる要因は、脳にあるワーキングメモリの容量が小さくなるからだと言われています。記憶の容量とされるこのワーキングメモリが小さくなるのは、大きな机の上でテキストやノートを思いっきり広げて作業ができる状態から、徐々に机の幅が狭くなっていくような状態を指すのだそうです。でも、狭くなった机を広げる方法として、音読を薦める大学の先生がいます。川島隆太先生によれば、音読は、文字を読む視覚と耳で察知する聴覚という2つの感覚を使用することから、脳に程よい刺激を与えると話されています。言語を使って思考する人間にとって、脳の中の机が広くなればその思考の幅を広げることができ、豊かな発想力も生み出すことができます。そして、途中で息を吸った際に脳の回路が切れることを避けるために、文章などを一気に読み上げると一層の記憶力向上に良いとされています。生徒の皆さんも一度試してみてはいかがでしょうか。

9月21日(木) 川俣高等学校長

思 い

阪神タイガースのセリーグ優勝とともに色々と注目を浴びているカーネル・サンダース人形ですが、元々は、1985年にタイガースが日本一になったときに活躍したランディ・バース選手の代わりに、やや姿が似ているとの理由で胴上げされたのが事の始まりだったようです。それはともかく、そのカーネル・サンダース人形は本場アメリカではほとんど見かけることはなく、日本独特のものであることをご存じでしょうか。観光で日本を訪れたアメリカ人の方々が、その人形の脇で記念写真を撮られるのもうなずけます。日本にはかねてより、商売繁盛を願って、よく店頭に招き猫を置いたりします。そういえば、マネキンという言葉は、招き入れる、から来ているとの説もあります。そうした慣習から独自に作成されたものだとすれば、海外と日本の文化融合による象徴とも言えるのかもしれません。

9月19日(火) 川俣高等学校長

欠乏と過剰

トルストイ『戦争と平和』の中に、『ピエールは、頭ではなく己の全存在、全生命によっておよそ人間は幸福のために創られた者であること、幸福は彼自身の中に、その自然な人間的要求の満足の中に存すること、一切の不幸は欠乏から来るのではなく、むしろ過剰から来ることを知った。』という一節があります。人は、欲するものや要求するものを手に入れることができれば幸福を感じると思い込んでいますが、実はそれは錯覚なのだという指摘です。過剰という豊かさがあまり大きな意味を持たないことは、かつて高度経済成長を経験した際に明確になったことでもあります。苦悩があって幸福があるのは、闇があって光があるのと同じです。この逆説的存在があるからこそ、苦悩の中にも希望を持ち続け、後に必ず幸福が訪れるのです。一時闇にいる瞬間があっても、必ず光に辿り着くことができるのです。そして、その幸福や光は、意外にも身近なものであったりします。日常の何でもない光景が至福の光と感じることは、ドストエフスキーの作品の中にも多く描かれています。

9月15日(金) 川俣高等学校長

白 砂

かつて、バンカーの砂を白くしてゴルフのテレビ中継の際に映えるようにしようとしたゴルフ場があったそうです。そのときに使用したのが、オーストラリアから取り寄せた珪砂です。元々はガラス製品の原料にするために輸入していた珪砂は、花岡岩が風化してできたものなので、白く細かい形状をして、太陽に当たるほどその白さが増すそうです。狙い通りテレビ映えはしたものの、プロからは不評でした。砂の大きさが揃い過ぎているため抵抗感がなく、打ちづらいことがその理由です。また、あまりにも白く輝いて見えるため、目線がどうしてもバンカーにいってしまうとの意見もありました。新しいことを取り入れると、これまでにはなかった課題が生じることはよくあります。ちなみに、その後、白さを失わない程度に日本の細かい砂を混ぜるなど工夫して、珪砂の良さを引き出すことに成功したそうです。

9月14日(木) 川俣高等学校長