令和4年度

校長より

試 験

中間試験や期末試験など、中学校や高校では年間をとおして多くの校内試験を実施します。東京にある私立中高一貫校も同様です。昭和60年代に、難関とされる私立中学1年生を対象とした校内試験に、次のような問題が出題されました。①〇〇を現す(学識が目立って人よりも秀でる)②〇〇に富む(年若く、将来が長い)③〇〇の交わり(間柄が極めて密接なさま)④〇〇暗鬼(疑いが生じると次々に妄想を生むこと)⑤〇肉〇食(味噌汁やお新香が付いて約700円程度)。難度の高い問題ですが、⑤についてはいかがでしょうか。試験問題作成の際には、何度も検討を重ね、先生方が自信をもって出題されます。この中学校では問題用紙に出題された先生の名前も記載されていますから、一層そうだと思います。この出題から、先生と生徒が、真剣な中にも良き関係を築きながら授業に取り組まれていることを垣間見ることができそうです。

8月22日(火) 川俣高等学校長

朝散歩

朝の散歩を推奨する人は多くいます。第一に、活性化すると清々しい気持ちになり、意欲と集中力がアップするセロトニンは、午前中に作られるためです。第二に、人の体内時計は平均24時間10分前後なので、10分ずつ就寝時間が遅れることを防ぐためにはリセットを要します。そのリセットに効果的なのが、2500ルクス以上の太陽光を5分程度浴びることとされているためです。第三に、カルシウムの吸収を助け、骨を丈夫にするビタミンDは、紫外線を原料として作られます。もちろん、紫外線の浴び過ぎには注意を要しますが、15分程度の朝散歩により、1日に必要とされるビタミンDの生成が行われるとされています。暑い時期ではありますが、まだ気温の上がり切らない時間帯での朝散歩、試してみてはいかがでしょうか。

8月21日(月) 川俣高等学校長

そこに居直る

美術家の中川一政氏が88歳の時に出した画文集『八十八』には、書について、「人は三様に生まれて来る。一つは手筋良く生まれて来る。二つは悪筆で生まれて来る。第三は両方入り混じって生まれて来る。しかし、手筋が良ければよいというものではなく、悪くてもよいのである。書に興味があったら誰でも書いたらよい。私はその見本である。そこに居直って度胸が出て来るのである。」と記されています。中川氏は、全ての始まりは興味を持つことであり、そこから深入りして、その世界を極めたいと思うほど没頭すれば、居直って自然に度胸も出て来る、としており、また、才能などは問うところではなく、むしろ才能は努力の結果生じるものだ、とも話しています。興味を感じ努力を重ねることは、今からでも始めることができます。将来、振り返って、今日が自分を変えた記念日、と位置付けることができたら、それは素晴らしいことです。

8月18日(金) 川俣高等学校長

ナンカ

東南アジアは、ドリアンやマンゴスチンなど果物が豊富な地域ですが、ジャックフルーツも印象に残る一つです。太い幹から長さ50センチを超える実がいくつもぶら下がる光景は圧巻だそうです。表面にはトゲがありますが、中は黄色い果肉で、独特の甘みがある人気の果物です。多くある果樹園に加えて、庭園樹としても育てられているため、旅行に行くと、いたるところで目につきます。現地ガイドさんはよく旅行者から、「あれは何ですか。」と尋ねられ、うっかりと「ナンカの実です。」と答えてしまい、お叱りを受けることがあるそうです。ちなみに、ナンカとはジャックフルーツの現地での呼び名です。日本語とも思える言葉が遠く離れた地域でも使用されているのには、何(なん)か所以があるのかもしれませんね。

8月17日(木) 川俣高等学校長

行間を読む

生徒の皆さんが、文章を読み、主人公の思いを問われる場面は多くあると思います。言葉には書かれていませんが、作者が読者に対して伝えようとしていることを読み解くことは、国語の授業以外の多くの場面でも重要とされています。この力は、文章に限ったことではなく、芸術を鑑賞する場合などにも使うことが可能です。もしも、キャンバスには描かれていない画家の訴えを受け止めることができれば、目の前の絵画を異なる視点からも楽しむことができるかもしれません。いわば、絵画の行間を読むわけです。最初は、自分の眼でじっくりと鑑賞してみます。でも、行間を読むことが難しいときには、絵画の周辺情報を探り、頭に入れた状態で、再度絵画と向き合います。描かれた場所や時代背景、画家の性格など、色々なことを考えながら鑑賞する絵画は十分に楽しく、一層身近なものとして捉えることができます。足りない情報を想像力で補うことにより、周囲にある日常的出来事も、深みを帯びて見えてくるようになります。

毎回、本投稿を御覧いただきましてありがとうございます。次回投稿は8月17日(木)を予定しております。

8月4日(金) 川俣高等学校長

悩 み

自信にあふれた人と比べて、些細なことで悩む自分を情けないと感じることもあるかもしれません。でも、自信は悩みをとおして生み出される、ということを生徒の皆さんは知っているでしょうか。悩んだり傷ついたりするのは、むしろ人である証であり、普通のことです。人の持つ豊かな感性、その中にはこうした悩みも含まれています。人は、自分が痛みを感じることで、初めて他者の痛みを知ることができます。

8月3日(木) 川俣高等学校長

文化発祥

スイスのほぼ中央にシュビーツという街があり、1863年2月から不定期に、街中の人が日本人に扮する日本人劇が上演されているのだそうです。日本を忠実に表現しているというよりはむしろ、アジア全体の要素が取り入れられているようですが、遠く離れたスイスの地で日本人劇が始まったきっかけはどこにあるのでしょうか。スイスは時計を輸出して貿易立国を図っていたことは有名です。日本が鎖国を解き外国に門戸を開いたことで、他国同様にスイスも通商使節派遣を決めたのが1861年とされています。スイス国内で日本に対する関心が急激に高まり、それがシュビーツにも根付き、日本人劇発祥に至ったとも言われています。ちなみに、日本人劇が開催されている期間は、シュビーツの街の方々は皆、日本人を演じながら長い冬の厳しさを忘れ楽しんでいるようです。永く受け継がれ、その地の方々の生活の一部にもなっている文化は、ふとしたきっかけによるものが多いようです。

8月2日(水) 川俣高等学校長

思考法

物事を様々な角度から考えることができるようになると、思考を深めやすいとされています。特に、2つ以上の事柄を比較して考えることで、それぞれの特徴を明確に把握することができます。これを対比思考と呼びます。主観により判断してしまうと偏りが生じるため、相対する事項を比べ合わせることは、物事を第三者的に見る上でも効果があるようです。自分のものの見方が理にかなったことかどうかの適切な判断ができるとともに、対比思考により、発想の拡大、そして問題解決能力の一層の向上も図ることができます。

8月1日(火) 川俣高等学校長

決断の瞬間

人は瞬時を生きており、その中には多くの決断を要する瞬間があります。歴史上有名とされる人は、的確にその一瞬を捉え、そして的確なる決断のできる天賦の才があった、とする指摘もあります。生徒の皆さんにも、間違いなく決断の瞬間は訪れます。その時が輝ける瞬間となるかどうか、それは、それまでに培った教養や知識によります。同時に、その決断が輝けるものであったかどうかは、その時以上に、後になってわかる場合もあります。ナポレオンは「四千年の歴史が見下ろしている。」という言葉を発したそうです。四千年後に自分はどう評価されているのか、その責任をもち行動する、との自戒とも解されています。人生の決断には、常に歴史の重みが伴います。

7月31日(月) 川俣高等学校長

神 妙

ミロ90歳、ピカソ91歳、シャガール97歳など、世に知れた画人には長寿を保たれた方が多くいます。奥村土牛氏101歳、横山大観氏も89歳でした。これは体力以上に、絵を描くことへの執念にも近い気力の充実がもたらしたもの、とも言えます。江戸時代の浮世絵師葛飾北斎氏は、こう記しています。「いま73歳になって、ようやく描くものの生命の在りどころが見えてきた。80歳になれば、ますますこの一筋を進み、90歳でその奥意を極め、100歳では神妙の域に達するだろう。そして、110歳になれば、この筆から描き出される点も、線も、生けるがごときものとなろう」。生徒の皆さん、私たちには、まだまだ伸びしろがあることを痛感しませんか。

7月28日(金) 川俣高等学校長

孤独と向き合う

金沢出身の室生犀星氏は、「ふるさとは遠くにありて思ふもの」と表現したことで有名です。彼の詩には、都会に生きる孤独の思いが根底にある、とも言われています。周囲に多くの人が集っていても、常に誰かが傍にいるわけではありません。時の長さは異なりますが、誰にでも一人になる場面があります。孤独は自分を見つめる瞬間なのかもしれません。室生犀星氏は『室生犀星詩集』に、こう綴っています。「きよい孤独の中に住んで 永遠にやって来ない君を待つ うれしさうに 姿は寂しく 身と心とにしみこんで けふも君をまちうけてゐるのだ それをくりかえす終生に いつかはしらず祝福あれ まことの人のおとづれのあれ」と。孤独から目を背けることは、真の自己に出会うことを拒むことにつながるのかもしれません。また、孤独と正面から向き合うことにより、「まことの人のおとづれ」、つまり親友との出会いがあるのだとも感じます。

7月27日(木) 川俣高等学校長

技術者

商品開発において、1%の可能性があればそれを信じて取り組むのが技術者の姿勢、とされる中、次のような「ぎ術者になってはいけない」と話している、ある会社の社長さんがいらっしゃいます。①やりますと言うものの、目標達成を図ろうとしない欺術者 ②できない理由は述べるものの、どうすればできるようになるのかを述べることのできない偽術者 ③頑張りますとは言うものの、そのやり方を説明できない疑術者 ④専門用語を使って話はするものの、やることが理屈から外れている擬術者。さて、どれも厳しい言葉に思えます。でも、企業は人の生活を一層豊かにする宿命を担う存在なので、その達成を図ろうとする本気度も自然に高くなります。ちなみに、その社長さんは自分に対しても、以下のような「こう害をしない」よう心がけているそうです。①柔軟な対応ができない硬害 ②考えすぎて実行に移すことのできない考害 ③じぶんの考えは常に正しいと思い込み、他者の意見を取り込まない抗害 ④あまりにも細かいところまで仕事に口をはさむ口害

7月26日(水) 川俣高等学校長

人、一生、一万冊

これは、二宮尊徳氏や福沢諭吉氏など多くの方が話されている言葉です。読書をとおして、人は知性と教養を高めることができ、これは豊かな人生にも繋がります。もしもこの言葉を忠実に実行したとすると、日々読書しても27年かかるほどの長期計画ですが、その真意は、人は人生の途中において完成をみることはなく、一生にわたり学びの過程にある、といったことと理解しています。いい本に巡り合ったときの喜びは大きく、まるで親友を得るのと同じ意味合いを持つ、ともされています。また、良書は友の中でも最良の友、という表現もあります。身近な読みやすい本から始めて、一生の財産を作ってみるのもよいと思います。

7月25日(火) 川俣高等学校長

推 論

本を読んでいると、自分の理解できる内容ばかり出てくるわけではありません。そうした場面に遭遇すると、人は推論を働かせます。既に自分が手にしている情報をとおして思いを巡らすのです。でも、その範囲を超えた場面も当然あります。「中原中也はみつばのおひたしばかり食べていた。あるいは葱をきざんだものを水にさらして、ソースをかけて食べていた。自分ではこれくらいの調理しかできなかったとも言えるし、ダダイストをめざす意思が意図的に風変わりな素食を志向させたという側面もある」。これは、嵐山光三郎氏著『文人悪食』に書かれた表現です。大抵の人は、推論してもダダイストはわかりません。ちなみに、ダダイストとは、古い価値観に対抗し、既成概念を否定しようとした、第一次世界大戦中にスイスで起こったダダイズム芸術運動、その推進者を指すのだそうです。読書には、自分にとっては未知の、新たな側面に触れる楽しさもあります。

7月24日(月) 川俣高等学校長

ひらめき

人は、数多くの場面で素晴らしいひらめきを感じます。でも、こうしたひらめきはゼロから生み出されるわけではなく、材料は既に頭の中にあることを前提として、脳内で起こる情報連結こそひらめきである、とされています。よって、素晴らしいひらめきを感じるためには、予め多くの情報をインプットしておく必要があります。多くの本を読み、多くの体験をし、多くの人と話し、試行錯誤を繰り返すことで、人はひらめきの瞬間に立ち会うことができます。

7月21日(金) 川俣高等学校長

異なる

生徒の皆さんはゾウリムシを知っているでしょうか。真核を有する単細胞生物で、身体の周囲にはびっしりと繊毛が生えています。この繊毛が一斉に同じ方向に波打つように動くことで、ゾウリムシは素早く前進することができます。でも、かつて東京工業大学教授であった今田高俊氏は、数本の繊毛が勝手な動きをしていることに気づきます。前進する際には、異分子とも見える、このめちゃめちゃな動きをする繊毛ですが、方向転換をする際には、他の数百本の繊毛がこの繊毛にぴたりと動きを合わせるのです。この数本の繊毛にも、とても重要な任務があったのです。この世に存在しているものはすべて、重要な役割を担っています。

7月20日(木) 川俣高等学校長

仲間の存在

友を持つことの大切さについては、本投稿をとおして何度も話してきたところですが、仲間を持つことについて、生徒の皆さんはどう考えているでしょうか。友との繋がりの原点が友情である一方、仲間の場合、夢や目的が繋がりの原点となります。同じ夢や目的の実現を目指すことが結束力の中心となるため、もしも方向性に違いが生じた場合には、その集団から抜けるなど自由な面も伴っています。関係性にゆるやかさを含む仲間は、気を楽にしながら人間関係を築くことのできる、友にも変わり得る、頼りになる存在です。生徒の皆さん、周囲をよく見渡してみてください。同じ夢や目的を持つ仲間は、想像以上に多くいます。

7月19日(水) 川俣高等学校長

学習効率

一般的に、起床した後の午前中の2~3時間は、脳のゴールデンタイムとされています。睡眠により前日の記憶が整理され、十分な休息も取れていることから作業能率が高まるためです。もともと午前中という時間帯は、脳内物質のセロトニンやドーパミンなどのアミンが優位となり、整合性や気密さ、論理性など高い集中力を要求される作業に向いているともされています。高度で複雑な計算や、冷静さを要する重要な決断などにはこの時間帯を有効活用するとともに、生徒の皆さんには、学習活動に係る目標設定や計画立案などをすることをお勧めします。

7月18日(火) 川俣高等学校長

睡眠中に

人にとって睡眠は重要です。ただ脳を休めるといったこと以上に、睡眠中に大きな発見のヒントを得たとする例は多くあります。たとえば、ベンゼンの亀の甲型の構造式を発見したドイツの化学者ケクレは、ヘビが自分の尻尾を噛んで輪状になっているウロボロスの夢を見て、ベンゼンの六員環構造を発見したとされています。ロシアの化学者メンデレーエフが宇宙にある全ての原子がどういった体系にあるのかを悟ったのも睡眠中であり、化学の教科書にも掲載されている周期表をまとめることができたとされています。もしも目が覚めたときに、生徒の皆さんが昨夜見た夢の一端を覚えていたとすれば、そのことが皆さん自身に大きな影響を与える要素となる可能性も大いにあります。

7月14日(金) 川俣高等学校長

視野の広がり

「白日(はくじつ)山に依りて尽き、黄河海に入りて流る 千里の目を窮(きわ)めんと欲して、更に一層楼(ろう)を上る」と歌った中国の詩人がいます。「太陽は山にかかってその背に落ち、黄河は海に向かって滔々と流れている。その千里の彼方まで見極めようと、楼閣を更に一層上へとのぼった。」という意味の詩ですが、高いところに登ると周囲を見渡すことができる、という、ごく当たり前のことを述べている裏側には、実はもっと深い意味が含まれている、とする人もいます。人は自分の背丈からはあまりものを見ることができないので、もっと先まで見通したいと思うなら、少しでも高いところ、つまり目標に向かって一歩ずつでも歩みを進めていく必要がある、という向上心の尊さを表現している、とする説です。千里の先を窮めたいという強い意思には、人の生き方にも影響を及ぼすほどの力が込められています。

7月13日(木) 川俣高等学校長