令和4年度

推 論

本を読んでいると、自分の理解できる内容ばかり出てくるわけではありません。そうした場面に遭遇すると、人は推論を働かせます。既に自分が手にしている情報をとおして思いを巡らすのです。でも、その範囲を超えた場面も当然あります。「中原中也はみつばのおひたしばかり食べていた。あるいは葱をきざんだものを水にさらして、ソースをかけて食べていた。自分ではこれくらいの調理しかできなかったとも言えるし、ダダイストをめざす意思が意図的に風変わりな素食を志向させたという側面もある」。これは、嵐山光三郎氏著『文人悪食』に書かれた表現です。大抵の人は、推論してもダダイストはわかりません。ちなみに、ダダイストとは、古い価値観に対抗し、既成概念を否定しようとした、第一次世界大戦中にスイスで起こったダダイズム芸術運動、その推進者を指すのだそうです。読書には、自分にとっては未知の、新たな側面に触れる楽しさもあります。

7月24日(月) 川俣高等学校長