令和4年度

2023年3月の記事一覧

あこがれ

人は時に、周囲の人に嫉妬心を抱くことがありますが、激しい嫉妬心は、脳に悪影響を及ぼすこともあるそうです。嫉妬を感じると脳全体が熱を帯び、高度な情報処理をする超前頭野の血圧が上がります。すると、脳の酸素効率が悪くなり、複雑で深い思考がしにくい状況に陥るようです。一方で、人にあこがれを抱くと、超前頭野がクールダウンされるため、脳の酸素効率はよくなるのです。人より1歩前に出たとしても、それは一時のことです。他者比較以上に大切なことは、周囲の人への尊敬の念を忘れることなく、自分をよく見つめることです。

3月31日(金) 川俣高等学校長

生活領域

私たちが日々生活している領域のことをコンフォートゾーン(快適領域)といいます。コンフォートゾーンには、常に訪れる場所、常に会う人、常に食べるお店など全てが含まれます。日々の生活を楽しいと感じないときには、コンフォートゾーンの中に楽しいことが見つからないことも原因の一つと考えられます。コンフォートゾーンの外には無限の世界が広がっており、そこに足を踏み入れることで、新たな楽しいこと(興味や関心)にも出会えます。初めての領域に入る際には、勇気を要します。でも、大切な宝物を手にすることができます。

3月30日(木) 川俣高等学校長

瞬 間

生徒の皆さんはインスピレーションのようなものを感じて何かに取り組み、成果を上げた経験があることと思います。人にはそうした心惹かれる瞬間があり、そのときに、迷うことなく取り組むか、あるいは、面倒と感じて取り組まないかにより、大きな差が生じるようです。与謝蕪村も、牡丹有(ある)寺ゆき過(すぎ)しうらみ哉(かな)、と詠んで、 来年になれば、再び牡丹の花も咲くし春の風も体感できる、と思い、見過ごしてしまったものの、実際にはそうした体験はその時のみであることを知り、後に後悔した経験があるようです。自分の思いにかなうと感じた瞬間は、まさに一期一会として大切にしなくてはならないようです。

3月29日(水) 川俣高等学校長

尺 度

私たちが生きる今の時代は、科学技術の恩恵を受けることにより豊かな生活を送ることができています。多くの知識も得ることができます。一方で、過去と比較して、人の生活はバランスの欠けたものになっているとの指摘も耳にします。人が本来持つ尺度をはるかに超えた時空間で、私たちが生活していることから生じる現象によるもの、との指摘です。人間は万物の尺度である、と話したのは、古代ギリシアの哲人プロタゴラスです。人の素晴らしさを表す一方で、人はあくまでも人を基準としてしか物事を捉えない、との厳しい解釈もされているようです。人のあるべき姿を尺度とするならば、私たちは自分たち自身について、時には見直す機会を持つ必要があるのかもしれません。

3月28日(火) 川俣高等学校長

正確な問い

人は目の前の常識を疑うところから、その考えの深化を図ってきました。なぜ、と問うことで、新たな発見が生まれ、そのことにより、人は進歩を遂げてきました。その前提となるのは、正しい問いかけです。問いが正しくなければ、正しい答えを導くことはできません。生徒の皆さんが学んでいることは知識である一方で、正確な問い方を学ぶことでもあります。荀子も、問いの悪い者には答えるな、と説いています。生徒の皆さんにとって、今も、そして将来においても、良き問いができるよう、正しい問いの立て方を意識し学び続けることが必要です。

3月27日(月) 川俣高等学校長

山あり谷あり

生徒の皆さんも、人生は山あり谷あり、という表現を耳にしたことがあると思います。何かに取り組む際には、うまくいくときもあれば、うまくいかないときもある、という意味で使われていますが、実際に、自分にとって悪いことが起きるのは、思いがけない良いことが起こる前兆、ということはよくあります。登山を思い浮かべてみてください。山頂にたどり着いた後に、さらに高い山に登るときには、直通する道は存在しないので一旦は山を下ることになります。下山は想像をはるかに超えてつらいものです。でも、たとえば麓に下り立ったときに自分の登った山を見上げると、登山前に見上げた光景とは別のようにも見えて、異なる領域に達した満足感を感じることができる、と言う人もいます。一旦は谷に下りるからこそ、成長もできるのです。

3月24日(金) 川俣高等学校長

可 能

全国規模で事業展開をする企業が、野外に置く商品を架設するのに、これまでのコンクリート使用から、耐久性や軽さを考慮して鋼管柱を用いることに決めたそうです。でも、鋼管は中が空洞になっているため、小鳥が入り込み、出られなくなる事案が多く発生してしまいます。年間数百万羽もの小鳥が命を落としていることが報じられると、多くの非難が寄せられました。そのことが最初に企業内で報告されたとき、鋼管柱にキャップを取り付けるには多くの費用と年数がかかる、という理由で、対応に二の足を踏む傾向にありましたが、命の大切さを重視すべきとの声が社内で高まり、本格的な検討を始めます。結果として、プラスチックで作成したフタは大量注文のため、当初予想された費用の10分の1で済みました。また、年間2回実施していた点検時にキャップを付けるようにしたために、新たな人件費もかかることなく、作業期間も半年程度で済んだそうです。不可能という文字が頭に浮かぶと、間違いなくすべての取組は不可能になります。創意工夫により、不可能が可能に変わる瞬間は、必ず存在します。

3月23日(木) 川俣高等学校長

物に聞け

ものづくりに関わる企業では、者に聞くな、物に聞け、という教訓があるそうです。人(者)から伝え聞いたことには、その人の思い込みや誤解も含まれる場合があり正確とは言えず、一方で、目の前にある商品(物)を自分の目でしっかりと見ることで状況を正確に把握することができる、という姿勢を説いている言葉です。生徒の皆さんであれば、目の前にある教科書(物)に何度も問いかけること(何度でも教科書から学ぶこと)が、物事の真意を把握する最適な手立てであり、また、理解の深化を図る近道となります。

3月22日(水) 川俣高等学校長

精 進

一つの道を極めるには精進を継続することが必要とされます。そのためには考え方を変える必要も生じます。考え方が変わると、徐々に行動が変わります。行動が変わると、結果が変わります。何かに取り組むことには苦しみを伴うこともありますが、その苦しみから逃れようとしたり手を抜こうとしたりすると、結果として、苦しみは継続します。苦楽という言葉があります。苦しみの先には楽しみがある、という意味で、苦楽吉祥とも言うそうです。そういえば、楽には、多くの人が集まる、という意味も含まれていたことがあったそうです。一人だけで苦しみを感じることはありません。友が集まり、協力し合いながら物事に向き合うことで、効果も高まり、楽しくもなります。楽しくなれば、その場に光もあたります。

3月20日(月) 川俣高等学校長

生徒の皆さんには、それぞれ夢があると思います。夢を持つことは良しとされていますが、一方で、夢を追いかけているうちは、夢と自分との間に距離がある、という厳しい指摘をする人もいます。プロのピアニストを夢見て、技術向上に励んでいた方の話です。緊張から、ステージに上がる前に足が震えるのは誰にでもあることですが、うまく弾くことのみ過剰に意識するあまり、結果としてうまく弾けないと感じる場面が多くなったそうです。そのときに考えたこと、それは準備の大切さでした。足の震えは体力の欠如も一因と考え、筋力トレーニングやウォーキングを取り入れます。また、ピアノに向かう際には、うまく弾くこと以上に魂で弾くことを心がけて練習に臨みます。徐々に、鍵を叩いたときに出る音は自分の心そのもの、と思えるようになりました。自分の人間性が貧しければ、そうした音を聴衆の皆さんに届けてしまうと思い、心の鍛錬にも励みます。すると、無の境地でピアノを演奏できるようになったそうです。そして、自分の夢であったプロのピアニストになられました。彼女の名前は、フジコ・ヘミングさんといいます。彼女とピアノの間に、距離は存在しません。私はピアノであり、ピアノは私、と、彼女はよく話されます。

3月17日(金) 川俣高等学校長

京都の法隆寺や薬師寺の宮大工になることを夢見ていた方の話です。建築を学べることから工業高校への進学希望を家族に伝えると、宮大工として一流の地位にあった祖父や父から反対を受け、その意見に従い、彼は農業高校に進学することとなります。そして、3年間懸命に農業の勉強に取り組み、卒業後には祖父や父の仕事の手伝いを始めます。祖父から、「人は土から生まれ、土に返る。木も土に育ち、土に返る。建物も土の上に建てる。土を忘れたら、人も木も塔もない。土のありがたさをわからないようでは、立派な大工になれるはずはない。」との話を聞いたのは、彼が一人前の宮大工になった頃だったそうです。一見すると関係性を見出せないことでも、深く繋がりのある場合は多くあります。ちなみに、薬師寺金堂再建に使用する檜選びを任されたのも彼でした。その候補として、枝や葉に勢いのある樹齢2千年程の老木を勧める人がいたそうです。でも、その枝や葉に養分が取られるため中は空洞となっていることを彼は学んでおり、金堂に使用するには適さないと判断します。一方で、年相応に老いの風格の漂う木は芯がしっかりとしている、などの知識により、的確な判断の下、彼はその重責を立派に果たすこととなります。

3月16日(木) 川俣高等学校長

謙虚の美徳

将棋の世界は、盤上の勝負で対局料が決まるなど厳然たる実力主義に貫かれています。ところが、対局が行われる際に座る位置については趣が異なる場合があるそうです。対局が行われる座敷には床の間があり、それを背にする位置を上座、反対を下座としています。対局を迎える棋士のうち順位の高い方が上座となりますが、将棋の世界の先輩を立てたり、年齢を考慮したりして譲り合いが起こる場合もあるそうです。でも、一定の時間が過ぎると、他の棋士が見ても違和感を感じることがなく二人の位置が決まるというのですから、興味深いものです。棋士に必要とされる資質として、実力と謙虚の美徳の2つをあげる人が多くいます。まさに、座る位置の過程から見ても然りです。

3月15日(水) 川俣高等学校長

組 織

山の南斜面と北斜面に同時に植物を植えるとすれば、南斜面の方が育ちが良くなり、周囲からの注目度も高まります。組織も同様で、リーダーなど目立つ立場にいる一部の人に注目が集まる傾向は確かにあります。でも、植物で言えば、北斜面の木は年輪がよく締まり、木質も堅く丈夫であるために、やがて大きな花を咲かせるようになるのだそうです。一時、陽の当たりが悪いと感じても、そのときに全ての評価が決まるわけではありません。将来の太陽を独占するくらいの意気込みで、目の前のやるべきことに正面から向き合い続けることが大切です。

3月14日(火) 川俣高等学校長

マニュアルをこえる

企業には多くのマニュアルが存在します。顧客対応を要する企業では、2万5千を超えるマニュアルを持つ企業もあるそうです。でも、担当者間には売上実績に差が生じます。マニュアル通りに対応して、どうして差が生じるのでしょうか。そこには、一定の事由があるようです。たとえば、お客様に声をかけるタイミングや、かける声のトーンなど、マニュアル化されていない項目は数多くあります。笑顔で接することは書かれていても、どういった笑顔で接するのかについては、本人に任されます。また、想定外のやり取りが生じた際には、本人判断により対応する必要があります。こう考えると、マニュアルの数を2万5千から仮に5万に増やしたとしても、最終的に問われるのは本人の本質である、ということは間違いなさそうです。生徒の皆さんも、相手へのさりげない、そして、きめ細やかな心遣いができるよう、日頃より高い意識を持ち行動することが大切です。

3月13日(月) 川俣高等学校長

自然美

彫刻でも絵画でも、あるいは音楽でも、人は一つの意図を込めて作ります。そして、その美しさは、私たちの眼や耳を存分に楽しませてくれます。一方で、たとえば、富士山は誰かがあのような形にしようとしたものでないし、また、県内にもある鍾乳洞は、何万年、何十万年という途方もない歳月を経て、その中の石柱や石筍(せきじゅん)が作られるなど、自然が人智の及ばない形や色彩を形成しているものも多く存在します。自然の景観は、誰かの意図により作り出されるものではないので、バランスに欠けたりすることもあります。でも、そこも含めて大きな魅力があります。私たちには、こうした見飽きることのない自然美をこれからも大切にする責任があります。

3月10日(金) 川俣高等学校長

気づき

船に搭載される魚群探知機の発明は、少年時代にラジオいじりの大好きだった、電気店に勤める、ある一人の男性の発想によるものでした。海の底に向けて発信した超音波が反射してくるまでの時間を計測することで、その深さを知る超音波測深器をヒントに、その少年は、海底までの途中にいる魚を探知できないか、と考えます。相談をした大学教授からは、魚の体はそのほとんどが水でできているから、超音波には反応しない、との回答がなされます。でも彼はあきらめずに、直接漁師に魚を獲るコツについて聞いて回り、魚の大群は口から多くの泡を出すので、泡のかたまりが海面に出たところを狙って網を投げ込む、という話を耳にします。水は超音波を通すけれど、泡なら反射可能、と考えた彼は、自信を持って魚群探知機の開発を進めます。後に、彼の魚群探知機は、ベテランの漁師が気づかない魚群をいち早く察知するまでに精度を高めることとなります。ちなみに、魚自体には反応しないとされていた超音波は、その魚にも反応することもわかりました。大きな発明の最初の一歩は、実に身近なところに潜む、ふとしたときに気づく事実、であることがよくあります。

3月9日(木) 川俣高等学校長

感動作

生徒の皆さんは、映画や劇などを観て感動したことがあると思います。良き作品は観た者の心に突き刺さり、思わず感動の涙を流した経験もあるかもしれません。感動的な映像は人の持つ前頭前野の血流を活発にし、結果としてセロトニン神経を活性化するのだそうです。涙を流す前の交感神経優位の状態から、涙を流すことで副交感神経優位に切り替わるため、リラックスと癒しを得ることができます。ギリシャの哲学者アリストテレスも、著書『詩学』の中で、感動の涙は心の中に溜まっていた澱のような感情を解き放ち、気持ちを浄化させる、と述べています。カタルシスと呼ぶこうした状態を体験するためにも、生徒の皆さんに、数多くの良き映画や劇などの作品に触れてみることをお勧めします。

3月8日(水) 川俣高等学校長

想像以上

私たちは、一定の未来予想図を抱きながら物事に取り組みますが、その通りにいはいかない場面にも多く遭遇します。そして、それは、想像していた成果を大いに上回る場合もあります。昭和50年代の始めに、マイコン・チップの新しい販路先を模索していた企業がありました。冷蔵庫やミシンなどへの取込みを考える一方で、アメリカの事例を探ってみると、マイコン・チップを組み込んだ小さなおもちゃの製造をしていることを知ります。会社内で行われた検討会では、ほぼすべての役員がそのおもちゃの製造に反対を唱えます。でも、開発チームの商品に対する熱い思いから、試しに売り出してみよう、ということになり、結果、これが大当たりします。マイコン・チップ付きのプラモデル形式で販売したところ、自分で小さなコンピュータを組み立てる喜びを体験できるため、多くの需要を生み出します。加えて、特殊な電源を要するため、そのアダプタが開発されたり、テレビゲームのような製品ができると、そのゲームを扱う本が出版されるなど、サードパーティーが飛躍的に充実するなどしたそうです。大きな成果が生み出される背景には、常に、真摯に向き合う姿勢があります。

3月7日(火) 川俣高等学校長

能 力

今から30年程前に、企業に対して、21世紀に企業が求める基礎的・基本的能力についてアンケートを実施したところ、従来から重要であり、今後も重要と思われることとしては、行動力、人間関係を円滑にする力、新しい経験や知識を身に付ける力、論理的に考える力、課題を発見する力が上位になったそうです。一方で、今後新たに重要となることとしては、状況に柔軟に対応する力、コンピュータ活用能力、異文化を受容する力、情報収集力、語学力が上位となりました。今になって考えてみると、当時の認識は正しかったようです。そういえば、千葉商科大学の学長であった加藤寛氏も、社会科学系の研究をするには、自然言語と人工言語という2つの言語が基本となる、との話をされていました。ここでいう自然言語は英語を、また、人工言語とは情報を指します。私たちが今を生きる上で、こうした力を総合的に育成する努力は、一層その重要度を増しています。

3月6日(月) 川俣高等学校長

自我同一性

思春期から成長する過程で、自我がしっかりと固まった状態をアイデンティティと称したのは、人類学者エリクソンでした。日本語では自我同一性と訳されています。自分から見た自分と、社会から見た自分に一致点が見出され、大人としての責任ある行動を取ることができるようになること、それがアイデンティティの一つの基準とされています。その長短はあるにせよ、自分の存在を探し求め、もがき苦しむ期間は誰もが経験することです。そして、その期間の脱却に欠かすことのできないもの、それが読書であることも忘れてはなりません。

3月3日(金) 川俣高等学校長