令和4年度

生徒の皆さんには、それぞれ夢があると思います。夢を持つことは良しとされていますが、一方で、夢を追いかけているうちは、夢と自分との間に距離がある、という厳しい指摘をする人もいます。プロのピアニストを夢見て、技術向上に励んでいた方の話です。緊張から、ステージに上がる前に足が震えるのは誰にでもあることですが、うまく弾くことのみ過剰に意識するあまり、結果としてうまく弾けないと感じる場面が多くなったそうです。そのときに考えたこと、それは準備の大切さでした。足の震えは体力の欠如も一因と考え、筋力トレーニングやウォーキングを取り入れます。また、ピアノに向かう際には、うまく弾くこと以上に魂で弾くことを心がけて練習に臨みます。徐々に、鍵を叩いたときに出る音は自分の心そのもの、と思えるようになりました。自分の人間性が貧しければ、そうした音を聴衆の皆さんに届けてしまうと思い、心の鍛錬にも励みます。すると、無の境地でピアノを演奏できるようになったそうです。そして、自分の夢であったプロのピアニストになられました。彼女の名前は、フジコ・ヘミングさんといいます。彼女とピアノの間に、距離は存在しません。私はピアノであり、ピアノは私、と、彼女はよく話されます。

3月17日(金) 川俣高等学校長