令和4年度

2022年1月の記事一覧

体 格

時代を追うごとに、人の平均身長は伸びていると考えがちですが、意外にそうではありません。桃山時代まで、日本人男性の身長は平均160センチ以上あったとされていますが、江戸時代になると徐々に低くなり、最も身長の低いときが幕末で、155センチであったとの調査もあります。その要因として、江戸時代の肉食禁止措置や雑穀中心の食事等により、人が慢性的なタンパク質不足に陥っていた、という時代背景が関係しているようです。ある事象には必ず、それを引き起こす要因があります。生徒の皆さんも、周囲にある事象に目を向けてみてください。それは、偶然にそこにあるのではなく、確固たる理由の下、そこに存在しているのです。

1月31日(月) 川俣高等学校長

知識と情報

生徒の皆さんは授業をとおして新たな視野が広がったときに、心の底から喜びを感じると思います。知識は生きる上で大切なものであり、また、自らを守ってくれるツールでもあります。そして、知識を吸収する際には多くの情報を必要としますが、ネットに溢れるそれは玉石混淆であり、中には強い思い込みによる偏った主張も含まれているのが現状です。自らの判断を適切に行うためにも、情報の内容を見極める力が求められています。そして、問題の背景に横たわる本質を追求するためにも、本校の授業をとおしてそうした力の育成を図るなど、知的探求心を常に持ち続ける生活を送ってほしいと思っています。

1月28日(金) 川俣高等学校長

親 指

英語では、He has eight fingers.と表現することがあります。数が合わないのは、親指をthumbという別の語として扱うことによるものです。日本語では、その表現からもわかるように、親指を重視する傾向がある一方で、英語圏では、thumbはfingerほどには思われていないようです。His fingers are all thumbs.とは、「彼は不器用です。」という表現であることからも、そのことがうかがえます。どうしてそうした表現を使い、どうしてそうした意味を持つようになったのか、その歴史的・文化的背景を知ることで、一層、知識の深化を図ることができそうです。生徒の皆さんも、身近な言葉から、文化の違いを感じ取ってみませんか。

1月27日(木) 川俣高等学校長

今しかできないこと

作家の沢木耕太郎氏が、過去を振り返って話をされたことがあります。「中学生の頃まで住んでいた家の近くに、古本屋さんがありました。店主はいつも黙って、本を見る私をいい意味で放っておいてくれたので、本好きの私にとってはありがたく、よく足を運んでいました。ルポルタージュを書くようになってからも、よく立ち寄りました。あるとき、店主が私に話しかけてきました。今では何と声をかけられたのかも思い出すことはできませんが、間違いなく、そうした声かけは初めてのことだったと思います。そのとき、私は少し疲れた表情をしていたのかもしれません。声かけは店主の気遣いだったのでは、と、今では思っています。でも、私は返事をすることもなく、すぐに視線を古本の棚に向けてしまったのです。その店主が亡くなったのは、それから間もなくのことと聞きました。そのときの私は、何をそんなに急いていたのだろう。後悔しかありません。」私たちの周囲には、今しかできないことが想像以上に多くあります。でも、いつでもできることを優先して、選択してしまう場合も多く見られます。大切なことを見落とさぬよう、心がける必要がありそうです。

1月26日(水) 川俣校長学校長

ものに宿る自らの存在

靴職人だった小説家水上勉さんのお父さんは、靴には人の癖や性格などがよく出る、と話されていたそうです。靴はその履き方により底の減り方などが変わるので、実際に、玄関に置かれた靴を目にしただけで、どういった性格の人が履いているのかがわかったそうです。これは靴に限ったことではありません。ものには使う人の魂が宿ります。ものをよく見ることで一層深く人を知ることもできるし、一方で、使っているものから、自らを顧みる機会を得ることもできます。

1月25日(火) 川俣高等学校長

楽しんでやらなきゃ

シェイクスピアの戯曲「じゃじゃ馬ならし」の第一幕に、「楽しんでやらなきゃ、何事も身につきません。」という台詞があります。英文学者小田雄志氏は、「学問も芸術も、身につけるためには確かに苦しい思いをするだろうが、その苦しさの中に楽しみを見出さなければ、本当の意味で自分のものとはならない、という、日頃からのシェイクスピアの考えが、そこには表現されている。」と話されています。生徒の皆さんは、学校での授業を楽しみながら受けていますか。

1月24日(月) 川俣高等学校長

思いやり表記

私たちが多くの人と情報を伝達し合う際に用いるものとして、メールがあげられます。でも、表記の仕方により全く意図しない捉え方をされるなど、多くの誤解が生じることもあります。そうならないためにどうすべきか。当たり前のことですが、伝わりやすい言葉を選び表記することだと思います。そして、相手に応じた、わかりやすい表記を心がける背景には、相手への思いやりが必要とされます。

1月19日(水) 川俣高等学校長

異常値の価値

大学では、予め研究テーマを明確にし、その目的達成を図るために実験を行います。99回は目的に沿ったデータが得られたものの、1回だけ異なるデータが出た場合、「たった1%のこと、なかったことにしよう」とはできません。つまり、異常値除去はあり得ない行為なのです。この1%をうやむやにすることで、99%の成功データの信ぴょう性まで疑われることになります。むしろ、「なぜ、こうしたデータが出たのか」「なぜ、こうしたデータが今までは出なかったのか」を考えることで、研究の深みは一層増します。実験の失敗から生じた異常値が新たな発見の発端となった事例は多くあり、かつてノーベル化学賞を受賞された田中耕一さんの場合も、それに当てはまります。うまくいかなかったケースの中にこそ、宝物が隠れているのかもしれません。

1月18日(火) 川俣高等学校長

思考経験

ガリレオ・ガリレイが振り子の法則を発見したのは、ピサの聖堂で神父さんの説教を聞いていたときだそうです。規則正しく揺れているランプをじっと見ているうちに、物理学の大発見がなされました。生徒の皆さんが過ごす日常の中にも、興味深いことが多くあります。日常に潜む面白そうなことを見つけるのは、登下校の際にもできます。学校の休み時間にもできます。思考経験を増やすことにより、新しい変化、そしてすばらしい変化を生み出す土台が、日々、皆さんの中に作られていきます。

1月17日(月) 川俣高等学校長

3学期が始まります

昨日本校では、3学期の始業式が行われました。その際に、校長から生徒の皆さんに伝えたことを投稿いたします。

本日は、人として生きる上で大切なことについてお話をします。

まず第一に、学問に対する心構えについてです。人として何ができるのか、人として何をすべきなのかについて、真剣に自らに問いかけるとともに、思い描く希望実現のために、辛抱強く学問を追い続けることを求めたいと思います。大リーグのジョージ・シズラーのシーズン安打世界記録を塗り替えた、元大リーガーのイチロー選手は、「結局は、細かいことを積み重ねることでしか頂上に行くことはできない。それ以外に方法はない。」と話しています。一つ一つは小さく見えることでも、継続することで成果を上げることができる、まさに水滴石を穿つという諺に通じる考えを大切にしてほしいと思います。

第二に、パートナーについてです。人は出会いにより進化するし、深化もします。「良き師、良き友」との出会いが大切です。本校には、良き指導者として先生方がいます。会社では、先輩方がそれにあたります。生徒の皆さんが求めることに十分に応えてくれる頼もしい存在に対して、大いに頼ってほしいと思います。また、良き友との友情を深めてください。「良き友人を得る唯一の方法は、まず自分が、人の良き友人になることである」。これは19世紀アメリカの詩人ラルフ・エマーソンの言葉です。

今世紀は環境問題やエネルギー問題、人口問題や食糧問題など、地球規模の多くの課題に直面し、多くの国、地域の利害が絡み、極めて複雑な様相を呈しています。一方で、科学技術の進歩は加速度的に進行しており、人に利便性を与えてくれる反面、多くの新たな課題が生じているのも現状です。生徒の皆さんが生きる時代には、こうした変化に対応できる能力や工夫が求められます。

以上のことを踏まえ、1年生や2年生は、あらゆるシステムの改革が必要な社会に対応できるよう、高校での学問をしっかりと身に着けてほしいと思います。また、3年生には、社会に出た後においても、常に柔軟な考えを持ち続ける人になってほしいと願っています。

1月13日(木) 川俣高等学校長

合理的な解を導く

私たちがよく目にするGoogle、この入社試験に、「シアトルにあるすべての窓ガラスを拭くとして、あなたはどのくらいの代金を請求しますか。」という問題が出たことがあるそうです。清掃業者でもないし、ビル会社に勤務した経験もない、だから答えられるわけがない、と思いますよね。求められているのは完璧な正解ではなく、知識として持っている脳内データから、いかにして合理的な解を導き出せるか、だと思います。たとえば、居住人口や世帯数から窓の数を想定したり、1軒の窓拭きを、何人の人手で何分で終了させる、との仮定から全体では何時間かかる、などと考えていく、その考察のプロセスこそ重要とされるのです。学習をとおして知識を入力するだけではなく、その知識を活用して出力させる、このことの重要性と同じです。ちなみに、前述した入社試験の解答の中には、「シアトルは雨が多いので、雨がガラス窓をきれいにしてくれる。だから代金は無料。」といったものもあったそうです。その方が採用になったかどうかは、定かではありません。

1月12日(水) 川俣高等学校長

姿 勢

就職をした当初には、作成されたマニュアルなどに沿って、その仕事内容の説明を受けることと思います。でも、そうした形あるものから学ぶ以上に大切なこと、それは、仕事に向かう先輩方の姿勢です。集中して取り組む先輩方の様子を感じ取ることができれば、それは間違いなく、生徒の皆さんに最適な仕事と言えます。彫刻家の平櫛田中氏のように、「わしがやらねば、たれ(誰)がやる。いまやらねば、いつできる。」といった気概を先輩方から学ぶことは、皆さんにとって大変幸せなことと思います。マニュアルは時代の変化に応じて書き換える必要がありますが、仕事に向かう姿勢は、いつの時代も変わることのない存在です。

1月11日(火) 川俣高等学校長

最適解

将棋に魅力を感じている人は多くいます。そして、アマチュアの方の中には、一瞬で100手先まで読むことができる人もいるそうです。では、プロであればどうか。羽生善治氏によれば、大山康晴名人は晩年、あえて5手先以上は読まなかった、とのことです。パターン化思考が定着すると、直観を重視して将棋を指したとしても、それはそれで当たるようになるのだそうです。プロは最適解になりそうな候補を絞り込むことに長けており、一方でアマチュアの方には、容易にその手が最適かどうか判断を下すことができずにいる、これが両者の違いなのかもしれません。将棋の世界に限ることなくどの分野においても、熟練領域に入った際には、相手の手を見た上でシンプルに考え、そして対応したほうが、結果として良い判断になる場合が多そうです。

1月7日(金) 川俣高等学校長

歴史を知る

日本の文化や伝統を知るにはどうすればよいか、生徒の皆さんは考えたことがありますか。そんな大層なこと、と思わないでください。小林秀雄さんは以前、「日本の二千年の歴史は、君のこの体に流れている。君が自分自身を大事にすることは、歴史を大事にすることになる。だから、歴史を知ることは、自己を知ることになる。」と述べられました。そういえば、日本の古典には、「大鏡」など鏡という文字が付くものが多く見られます。これらの歴史書に鏡を付けたことで、かねてより、日本人が歴史を、自らの姿かたちを映し出す鏡、と考えていたことがうかがえます。歴史を学べば自分の本当の姿が見えてくる。時間のあるときにちょっとでも、こうした歴史書をひも解いてみるのもいいかもしれません。

1月5日(水) 川俣高等学校長

ゆっくり急げ

ゆっくり急げ、この逆説的表現は、ローマ初代皇帝アウグストゥスが日常的に好んで使った言葉です。何事によらず少しでも先へ先へと急ぐ人は、かえって手間取ったり失敗したりする、という戒めです。日本でいう「急いては事を仕損じる」に似た言葉は、他にも、イギリスの「急ぐときほどゆっくりせよ」や、イタリアの「ゆっくり行く者が遠くまで行く」、あるいはドイツの「あわてる者から、良いものの生まれたことはない」など、世界中にたくさんあります。生徒の皆さんは、たとえば、教科書にある問題の解答のみ求めてはいませんか。また、総合的な探究の時間の際に、探究活動以上に、目的達成に重点を置きすぎてはいませんか。ゆっくり急げ、この精神もお忘れなく。

1月4日(火) 川俣高等学校長