令和4年度

今しかできないこと

作家の沢木耕太郎氏が、過去を振り返って話をされたことがあります。「中学生の頃まで住んでいた家の近くに、古本屋さんがありました。店主はいつも黙って、本を見る私をいい意味で放っておいてくれたので、本好きの私にとってはありがたく、よく足を運んでいました。ルポルタージュを書くようになってからも、よく立ち寄りました。あるとき、店主が私に話しかけてきました。今では何と声をかけられたのかも思い出すことはできませんが、間違いなく、そうした声かけは初めてのことだったと思います。そのとき、私は少し疲れた表情をしていたのかもしれません。声かけは店主の気遣いだったのでは、と、今では思っています。でも、私は返事をすることもなく、すぐに視線を古本の棚に向けてしまったのです。その店主が亡くなったのは、それから間もなくのことと聞きました。そのときの私は、何をそんなに急いていたのだろう。後悔しかありません。」私たちの周囲には、今しかできないことが想像以上に多くあります。でも、いつでもできることを優先して、選択してしまう場合も多く見られます。大切なことを見落とさぬよう、心がける必要がありそうです。

1月26日(水) 川俣校長学校長