令和4年度

異常値の価値

大学では、予め研究テーマを明確にし、その目的達成を図るために実験を行います。99回は目的に沿ったデータが得られたものの、1回だけ異なるデータが出た場合、「たった1%のこと、なかったことにしよう」とはできません。つまり、異常値除去はあり得ない行為なのです。この1%をうやむやにすることで、99%の成功データの信ぴょう性まで疑われることになります。むしろ、「なぜ、こうしたデータが出たのか」「なぜ、こうしたデータが今までは出なかったのか」を考えることで、研究の深みは一層増します。実験の失敗から生じた異常値が新たな発見の発端となった事例は多くあり、かつてノーベル化学賞を受賞された田中耕一さんの場合も、それに当てはまります。うまくいかなかったケースの中にこそ、宝物が隠れているのかもしれません。

1月18日(火) 川俣高等学校長