令和4年度

校長より

能 力

今から30年程前に、企業に対して、21世紀に企業が求める基礎的・基本的能力についてアンケートを実施したところ、従来から重要であり、今後も重要と思われることとしては、行動力、人間関係を円滑にする力、新しい経験や知識を身に付ける力、論理的に考える力、課題を発見する力が上位になったそうです。一方で、今後新たに重要となることとしては、状況に柔軟に対応する力、コンピュータ活用能力、異文化を受容する力、情報収集力、語学力が上位となりました。今になって考えてみると、当時の認識は正しかったようです。そういえば、千葉商科大学の学長であった加藤寛氏も、社会科学系の研究をするには、自然言語と人工言語という2つの言語が基本となる、との話をされていました。ここでいう自然言語は英語を、また、人工言語とは情報を指します。私たちが今を生きる上で、こうした力を総合的に育成する努力は、一層その重要度を増しています。

3月6日(月) 川俣高等学校長

自我同一性

思春期から成長する過程で、自我がしっかりと固まった状態をアイデンティティと称したのは、人類学者エリクソンでした。日本語では自我同一性と訳されています。自分から見た自分と、社会から見た自分に一致点が見出され、大人としての責任ある行動を取ることができるようになること、それがアイデンティティの一つの基準とされています。その長短はあるにせよ、自分の存在を探し求め、もがき苦しむ期間は誰もが経験することです。そして、その期間の脱却に欠かすことのできないもの、それが読書であることも忘れてはなりません。

3月3日(金) 川俣高等学校長

不言実行

言うは易く行うは難し、という言葉があります。言葉で表明するにも勇気を要しますが、実行する際にはより多くの困難を伴う、ということを意味します。百の言葉よりも一つの実行が大切であり、実行する裏付けがなくては、その言葉から重みが消え去る、という意味合いも含んでいます。一方で、自分の取り組んでいることの大変さを、他に語ることなく控えることを不言実行といいます。言葉以上に心を込ることに重きを置き、物事にあたることで立派な仕上がりにもなるし、周囲からの評価も高まる一面はありそうです。他者に惑わされることなく、自らの信念の下、取り組む姿勢を、武者小路実篤氏も、「見るもよし、見ざるもよし、されど我は咲くなり」と表現しています。

3月2日(木) 川俣高等学校長

共感力

生徒の皆さんは、テレビや映画を観ているときに、思わず主人公になり切っている自分に気づくことはありませんか。感情移入することは共感できたことを意味するため、心理的にも良いこととされています。主人公はなぜそういった行動を選択したのか、など考えながら観ることで、作品も一層身近なものになります。主人公の心理が理解できることは、相手の気持ちになって考えることのできる証拠です。周囲への思いやりの点からも、主人公の気持ちに自分の気持ちをチューニングしながら多くの作品を楽しんでみてください。

3月1日(水) 川俣高等学校長

趣 味

砂を集めることを趣味としている人がいます。旅行先で手にした岩手県浄土ヶ浜やアメリカのサンディエゴ海岸の少量の砂は、小さなガラス瓶に入れて大切にしています。インド洋のモルジブの砂にはピンク色のサンゴが、ジャマイカの海岸の砂には多くの巻貝が混ざっており、その時の海の美しさを思い出させてくれるのだそうです。また、アフリカのサハラ砂漠の砂は赤茶けた唐辛子に似た色をしており、また、南極越冬隊員の友人からもらったという南極の砂は、白を基調とした中に黒や茶色の粒がはっきりと見えます。砂にも個性があり、それぞれの匂いを持ち、振った時の音にも違いがあるそうです。五大陸の砂を集め比較することで、以前に、こちらの大陸とあちらの大陸が繋がっていたなど、発見ができたらうれしい、とその人は話しています。生徒の皆さんは、どんな趣味を持っていますか。

2月28日(火) 川俣高等学校長

ゴールデンタイム

朝起きてからの2~3時間は、人の脳が活き活きと活躍するゴールデンタイムと言われています。この時間帯で何をするかにより、一日でこなせる仕事量にも影響を与えます。でも、多くの人は、この貴重な時間を通勤や通学に要しています。読書などをしながら通勤・通学できる環境であればまだよいのですが、何も考えることなく過ごすには、もったいない気がします。できる限り早起きをして脳を活性化するためにも、防犯等の問題はありますが、カーテンを閉めずに寝ることを推奨する研究者もいます。朝日からの光刺激が網膜から縫線核に届くと、セロトニンの合成が始まり、セロトニンからのインパルスが脳全体に行き渡ることにより、脳をクールな覚醒状態にしてくれるのだそうです。朝日を浴びることで生じるセロトニンの存在が、快適な1日を確約してくれます。早起きは三文の徳ですね。

2月27日(月) 川俣高等学校長

精神一到

随分と前の話になります。山形県で生まれ育った阿部さんは、猛勉強の末に、希望する山形大学医学部に合格しますが、運動系サークルの練習中に頸椎の脱臼骨折を起こします。1年間のリハビリを経て大学に復学はしたものの、両手両足はほぼ麻痺した状態であったといいます。教授の中には、医師としての勤務は難しく、他の進路を選択した方がよいのではないか、と話す方もいましたが、医者になり社会貢献をしたい、という安部さんの強い意思を尊重し、彼は医学の専門課程に進むことになります。学習以外の要素を極力排除して懸命に学ぶ彼の姿を見て、大学は、大学の目の前に通学用宿舎を用意するなど配慮してくれたそうです。また、多くの友人が彼の車椅子を押したり、ノートのコピーを手伝ってくれました。そして、彼は見事に医師国家試験に合格します。彼は山形県内にクリニックを開業し、社会貢献をしたいという当時の信念の下、今日も診療を行っています。ちなみに、彼のモットーは、精神を統一して事に当たれば、どんなに難しいことでも必ず成し遂げることができる、ということを意味する、精神一到何事か成らざらん、です。

2月24日(金) 川俣高等学校長

光 沢

床の掃除と言えば、掃く、拭く、磨く、を基準とします。ある大手スパーでは、そこに、床に光沢計をあててそのピカピカ度を測る、という工程を加えるのだそうです。たとえば、光の80%が反射されると80という数字が表示され、かなり光沢に優れていますが、60であれば、やや光沢に欠けるため再度磨く必要があるなど、一定の目安にしているのだそうです。お客様は、床が綺麗なのでお店に行こう、とは思わないかもしれないけれど、床が綺麗であれば気持ちよく買い物をしていただける、とのお店の方の思いから、毎日欠かすことなく取り組んでいるそうです。一方で、綺麗な床は、従業員にも大きな影響を及ぼします。床が綺麗なら棚も綺麗に整えよう、商品の並べ方にも気を配ろう、など、各人の意識が高まり、結果として、商品管理のレベル向上に繋がる、という副次的効果を生み出している、とのことです。さて、生徒の皆さんが学習活動をしている教室の床は、ピカピカでしょうか。

2月22日(水) 川俣高等学校長

高校生や大学生の時間間隔は、「今」に集約される傾向にあるのだそうです。情報化社会においてその度合いは加速しており、これまで以上に「今」を強く実感する場面が増えています。「今」起きたことを即時に伝える多くのツールにより、情報は個から個へとかなりの速度で駆け巡り、一瞬で全員が「今」を共有するようになりました。これは、目の前にある「今」を大切に生きることが求められていることであり、決して悪いことではありません。遠い過去、遥かな未来に思いをはせるのも、その出発点には、「今」への深い認識が必要です。

2月21日(火) 川俣高等学校長

大相撲力士の四股名には、海や山が多く使われていますが、意外にも川の付いた四股名はあまり見られません。これを日本人の川離れと結びつけて指摘したのが、以前に関東学院大学工学部の教授であった宮村忠氏です。かつて、海や山と同じように、川が日本人の郷土意識と強く結びついていた時代、たとえば、名横綱双葉山が全勝優勝した昭和18年頃には、山の付いた力士が5人、海の付いた力士が2人に対して、川を四股名にした力士も3人いるなどしました。それが徐々に少なくなった理由として、山は動かないが川は流れてしまう、という、相撲界のゲン担ぎの要素もあったようです。でも、川の復権活動にもなると考えた宮村教授は、学生も巻き込んで研究室一丸となり、勝手に、川の四股名の力士の応援を始めたそうです。大学の先生は、発想も行動も興味深いですね。ちなみに、かつて、北海道十勝地方出身で大関昇進を果たしたある力士に、地元の方々から、十勝川という四股名にしてほしいとの強い要望が出されたことがあったそうです。十勝川は、広大な十勝平野を貫き流れ太平洋に注ぐ大河で、多くの人に慕われています。でも、結果として、十番しか勝てなくなる、との落語にも似た理由により、その四股名にはしなかった、という話もありました。

2月20日(月) 川俣高等学校長