令和4年度

2023年8月の記事一覧

ペンギン

ペンギンは氷山の端まで来ると、しばらくはじっとしています。そして、勇気ある1羽が氷の海に飛び込むと、残りのペンギンも次々とダイビングを始めるのだそうです。氷山というホームから、氷の海というアウェーに入り込むには、ペンギンにとっても大きな決断を要します。人も同じです。グローバル社会で躍動するには、まずはグローバル社会という未知なるアウェーに入り込む必要があります。アウェーに向かうことは脳の持つ潜在能力を最大限に目覚めさせるとも言われています。生徒の皆さん、皆さんが1羽目のペンギンになる場面は必ず来ます。グローバルという名のアウェーでの偶有性を是非楽しんでみてください。

8月31日(木) 川俣高等学校長

クロワッサン

クロワッサンはパンの中でも人気の高い商品です。このクロワッサン、オーストリア生まれであることをご存じでしょうか。オーストリアの首都ウィーンが1683年にオスマントルコ軍に包囲されますが、オーストリア軍は城壁を堅固にしていたためビクともしません。オスマントルコ軍は、相手に気づかれない夜中に、ツルハシでその城壁を崩そうと試みます。ところが、皆の食糧として、昼夜を問わずパンを焼き続けていたパン職員がツルハシの音に気づき、未然防止を図ることに成功したそうです。オーストリアの皇帝レオポルト一世はパン職人に対して、勝利を記念したパンを作る特権を与え、それにより作られたのがクロワッサンです。その形は、ツルハシの音に気づいた夜、空に浮かんでいた三日月を模したとも言われています。両端のとがった形は動物の角にも見えることから、ヘルンヘン(ドイツ語で小さな角の意)とも呼ばれ、各国で人気となります。中でも、マリー・アントワネットはよく好み、ベルサイユ宮殿のパン職員にもそれを作るよう命じたことから、クロワッサンはフランスの伝統的パンと思い込んでいる人も多くいるようです。歴史を想いながら食べるクロワッサンは、一味違ったものに感じるかもしれません。

8月30日(水) 川俣高等学校長

2学期始業式時校長講話

生徒の皆さんは、大きな障害や困難に立ち向かうとき、どう対処するでしょうか。登山で言えば、山頂にたどり着いた後で、さらに高い山に登りたいときには、一旦は山をおりなければなりません。登山も楽ではありませんが、下山は、想像をはるかに超えてつらいものです。でも、たとえば麓におり立ったときに、自分がそれまで登っていた山を見上げると、登山前に見上げた光景とは別のようにも見えます。異なる領域に達した満足感を感じることができる、と言う人もいます。苦しみながらも登り切り、そして一旦は谷に下りるからこそ、成長もできるのです。

皆さんは、この夏季休業中に、何かうまくいったことはありますか。もしもそうであれば、大きな自信をもって、これからの学校生活に臨むことができます。あるいは、何かうまくいなかったことはありますか。もしもそうであれば、今の下山の話を念頭に、これからの取組に活かしてほしいと思います。そして、自分にとって困難が生じるのは、思いがけず良いことが起こる前兆であることは実際によくあります。

さて、本日から2学期が始まります。やがて季節は秋となり、紅葉が終わると、冬がやって来ます。カレンダーを見ながら、そして季節の移ろいを感じながら、昨日から今日、今日から明日へというように、人は、連続する日々の流れに区切りをつけてきました。そうした区切りをつけることにより、人は敢えて、自分たちの心の動きを不連続にしたのです。でも、誰もが気づいているように、時や私たちの活動は、昨日も今日も、そして明日もまた、途切れることなく続きます。変化のない単調な毎日に敢えて区切りをつけることで、私たちは今日を生き、明日を想う新たな気持ちを手に入れているのかもしれません。区切りはけじめ、一歩を踏み出す大きな力です。不連続な心を繋げていく努力の先に、目標達成の瞬間があります。

8月29日(火) 川俣高等学校長

 

顧みる

ドイツの哲学者ヘーゲルは、人とは何か、と問われたとき、「そのような問いに応じるのに、哲学はいつもやって来るのが遅すぎる。」と答えます。これは彼の嘆きではなく、むしろ、一日が終わることなくその日を顧みることはできないとの考えから、この言葉は、日暮れになって初めて人の思索は始まることを表している、とされています。ここでいう哲学は、その日の振り返りの機会とも解釈できそうです。日々の行いを丁寧に思い出し、考えることは、良き経験を積むことに繋がります。歳を重ねることで思考が深まるのも、そうした理由からです。そしてヘーゲルは、ミネルヴァの梟(ふくろう)は夕暮に飛び立つ、とも話します。ミネルヴァはローマ神話の知恵の女神で、梟を使いとしています。今日という日を真正面から見つめ直し、反省すべきところは反省することから、明日の飛躍は生まれます。

8月25日(金) 川俣高等学校長

言葉遣い

私たちは日々、多くの場面で言葉を使って文章を作成したり、話をしたりします。その際に、自然に主観が入り込むこともあります。たとえば、「Aさんは仕事ができるうえに親切です。」「Aさんは仕事ができるのに親切です。」という2つの表現を比較してみます。どちらもAさんに対する評価であり、同じことを表現しているようにも思えますが、実は決定的な違いがあります。それは、後者で使用している「のに」です。この話し手は日頃から、仕事ができる人は基本的に親切ではない、と感じていることがうかがえます。この一例からも、言葉遣いの難しさと奥深さを感じます。また、「これはできなかったね。でも、それはできたね。」「それはできたね。でも、これはできなかったね。」という2つの表現では、順番を入れ替えているだけなのですが、受け手の印象としては、後者の方が「できなかった」と言われたイメージが強く、モチベーションも下がるようです。相手を励ます優しい気持ちから発する言葉を確実に伝えるためにも、自らの言葉について考えてみることは重要です。

8月24日(木) 川俣高等学校長

食文化

大晦日や正月には郷土料理を食する機会が増えます。大分県臼杵地方では、黄飯(おうはん)を炊く習慣があります。白身魚や大根、にんじんやネギ、豆腐などを鍋で煮て、黄飯に添えたり、上からかけて食べるのだそうです。日本では珍しい黄飯は、スペイン料理のパエリアから来た、ともされています。サフランで黄色に染めて炊き上げた米の上に、オリーブ油で炒めたエビやイカ、貝などが乗るパエリアは、かつて大友宗麟が好んで食べたそうです。手に入りにくいサフランはくちなしに、また、エビやイカはクロダイやエソなどの白身魚に、加えて、オリーブ油は菜種油に代えて炒めるなど工夫して、日本風にアレンジしたものが黄飯です。何百年にもわたりしっかりと根付いた食文化は、今でも正月三が日の間に何度も煮直しては食卓に載せられ、人の笑顔を作り出しています。

8月23日(水) 川俣高等学校長

試 験

中間試験や期末試験など、中学校や高校では年間をとおして多くの校内試験を実施します。東京にある私立中高一貫校も同様です。昭和60年代に、難関とされる私立中学1年生を対象とした校内試験に、次のような問題が出題されました。①〇〇を現す(学識が目立って人よりも秀でる)②〇〇に富む(年若く、将来が長い)③〇〇の交わり(間柄が極めて密接なさま)④〇〇暗鬼(疑いが生じると次々に妄想を生むこと)⑤〇肉〇食(味噌汁やお新香が付いて約700円程度)。難度の高い問題ですが、⑤についてはいかがでしょうか。試験問題作成の際には、何度も検討を重ね、先生方が自信をもって出題されます。この中学校では問題用紙に出題された先生の名前も記載されていますから、一層そうだと思います。この出題から、先生と生徒が、真剣な中にも良き関係を築きながら授業に取り組まれていることを垣間見ることができそうです。

8月22日(火) 川俣高等学校長

朝散歩

朝の散歩を推奨する人は多くいます。第一に、活性化すると清々しい気持ちになり、意欲と集中力がアップするセロトニンは、午前中に作られるためです。第二に、人の体内時計は平均24時間10分前後なので、10分ずつ就寝時間が遅れることを防ぐためにはリセットを要します。そのリセットに効果的なのが、2500ルクス以上の太陽光を5分程度浴びることとされているためです。第三に、カルシウムの吸収を助け、骨を丈夫にするビタミンDは、紫外線を原料として作られます。もちろん、紫外線の浴び過ぎには注意を要しますが、15分程度の朝散歩により、1日に必要とされるビタミンDの生成が行われるとされています。暑い時期ではありますが、まだ気温の上がり切らない時間帯での朝散歩、試してみてはいかがでしょうか。

8月21日(月) 川俣高等学校長

そこに居直る

美術家の中川一政氏が88歳の時に出した画文集『八十八』には、書について、「人は三様に生まれて来る。一つは手筋良く生まれて来る。二つは悪筆で生まれて来る。第三は両方入り混じって生まれて来る。しかし、手筋が良ければよいというものではなく、悪くてもよいのである。書に興味があったら誰でも書いたらよい。私はその見本である。そこに居直って度胸が出て来るのである。」と記されています。中川氏は、全ての始まりは興味を持つことであり、そこから深入りして、その世界を極めたいと思うほど没頭すれば、居直って自然に度胸も出て来る、としており、また、才能などは問うところではなく、むしろ才能は努力の結果生じるものだ、とも話しています。興味を感じ努力を重ねることは、今からでも始めることができます。将来、振り返って、今日が自分を変えた記念日、と位置付けることができたら、それは素晴らしいことです。

8月18日(金) 川俣高等学校長

ナンカ

東南アジアは、ドリアンやマンゴスチンなど果物が豊富な地域ですが、ジャックフルーツも印象に残る一つです。太い幹から長さ50センチを超える実がいくつもぶら下がる光景は圧巻だそうです。表面にはトゲがありますが、中は黄色い果肉で、独特の甘みがある人気の果物です。多くある果樹園に加えて、庭園樹としても育てられているため、旅行に行くと、いたるところで目につきます。現地ガイドさんはよく旅行者から、「あれは何ですか。」と尋ねられ、うっかりと「ナンカの実です。」と答えてしまい、お叱りを受けることがあるそうです。ちなみに、ナンカとはジャックフルーツの現地での呼び名です。日本語とも思える言葉が遠く離れた地域でも使用されているのには、何(なん)か所以があるのかもしれませんね。

8月17日(木) 川俣高等学校長