令和4年度

2023年11月の記事一覧

今に集中

目の前のことに集中して取り組む重要性を説かれる場面は多く存在します。でも、あれをやらねば、と未来のことを考えたり、こうすればよかった、と過去を振り返ったりと、今ここにいても、頭では未来と過去を行ったり来たりしてしまうのが人の常です。その解決策の一つとして、瞑想を推奨する方がいます。瞑想の根底には呼吸法があります。その呼吸法にも様々ありますが、その一つに、アナパーチ・サチという、数を数えながら長くゆっくりと息をする方法をとおして落ち着きや集中力が増す、とするものもあります。そして、呼吸法に基づく瞑想を取り入れることで、結果として海馬が活性化します。起きて活動している間は、前頭前野から多くの命令が海馬に届くため、海馬も徐々に疲弊しますが、浅い眠りについている間は前頭前野の活動は止まるため、それに伴って海馬の負担も減少し、海馬の活性化に繋がるという理論です。学習活動に励む生徒の皆さんも、一層の集中力を生み出すために、敢えて一時、海馬を休めてみませんか。

11月13日(月) 川俣高等学校長

ブルーマウンテン

コーヒーにブルーマウンテンがあることはご存じのことと思います。原産地のジャマイカで、青く見える山に生息しているためにそう呼ばれています。コーヒーの木が一斉に出す揮発性のテルペンと呼ばれる化学物質により、太陽光線が屈折して青く見えるのだそうです。この化学物質が出されるのは、言葉を持たない木がお互いに情報交換をしているからだ、とする研究があります。そういえば、一定の時期になると、木は一斉に若芽を出します。花も咲きます。気温や日照時間などの条件によることに加え、これもまた、木がお互いにコミュニケーションを図り、時期を揃えている、との学説もあるなど、興味深いものです。若芽の出る時期に違いがあると虫に食べらえるなど弊害もあるので、結束して同一行動を取るのはイワシのケースと同様ですね。そういえば、個別に対応する受験も団体戦と言われます。グループ内の切磋琢磨が、個人に良き効果をもたらします。集団の持つ底知れない力の存在を再認識させられます。

11月10日(金) 川俣高等学校長

以前はなかり固かったパンの耳が柔らくなったのは、1980年代の偶然の出来事が発端でした。パンの製造会社に勤務する方が喫茶店でモーニングサービスを注文すると、パンの耳の固さが気になります。また、希望されるお客様には、パンの耳を切ってお出しする場合もある、とのお店の方からの話も耳にします。時代はソフトを求めていると感じたその方は、会社に耳の柔らかいパンの開発を提案しました。油脂分を少し多めにするなど、原料の配合を少し変えるだけで対応できることがわかるとともに、パン全体にもふっくら感が出るなど、見た目にも良い仕上がりとなりました。地域限定で売り出してみたところ大きな反響であったことから、全国販売に踏み切り、会社経営を支える中心的商品までになりました。大きな効果は、小さな発見や小さな工夫から生み出されることがよくあります。生徒の皆さんも、日常感じているちょっとした違和感を大切にしてみてください。ちなみに、庭にやって来る野鳥に与えるエサとして、これまでの固いパンの耳を活用していた方々からは、自分でも美味しく食べるようになった一方で、野鳥にもエサを与えなければならないとのジレンマがある、などの悩み相談が数件、会社に寄せられたそうです。

11月9日(木) 川俣高等学校長

粗野に考える

粗野に考えることを学ばねばならない、こう述べたのは、ドイツの劇作家であり詩人のベルトルト・ブレヒトでした。丁寧に考えるのではなく粗野に考える、とは、わかりづらい表現ですが、自分が主体となり、自分の感情に沿って率直に物事を見つめる、という意味合いを持つ、とも読み取れます。目の前にある事象を、近い位置からではなく遠い場所に身を置き、眺めながら取り組むのでは事態の解決にかなりの時間を要します。洗練された考えは意味を持たず、むしろ、至近距離から捉えた感覚や感情に基づき、前に進むのか、一旦は退くのか、あるいは、歩みの方向を左右に変えるのかを判断することこそ、大きな意味があります。生徒の皆さん、決断を要する場面は、すぐに、そして数多く訪れます。自分の感覚を大切にして、是非、粗野に考えてみてください。

11月8日(水) 川俣高等学校長

具体性

かつて南カリフォルニアを訪れた日本人観光客が、レストランで注文前に水が出てこないことに不満を感じたそうです。でも、テーブルの上を見ると、小さなカードが置かれていることに気づきます。「渇水が3年程続いています。お客様のコップ1杯の水が、後の数枚分の皿を洗う水になります。こうした取組が全レストランで実施されると、南カリフォルニアにある貯水湖1つ分の水が助かります。」カードにはこう書かれていたそうです。その日本人観光客がその後、水について不満を感じることはなくなりました。人は、頭の中で具体的なイメージができると腑に落ちるものです。コップ1杯の水→数枚分の皿を洗う水→貯水湖1つ分。生徒の皆さんも、漠然とした目標設定以上に、数値を取り入れるなど具体性のあるそれを念頭に置くことで、実効性を格段に高めることができます。

11月7日(火) 川俣高等学校長