令和4年度

2022年12月の記事一覧

インスピレーション

有名な物理学者アインシュタイン博士は、極めて温厚な性格で知られています。「相対性理論を発見したきっかけは、瓦職人が偶然に屋根から転がり落ちるのを見て思いつかれた、と聞いています。」と話しかけられた彼は、いつもとは異なり厳しい表情をして、「世間では、ニュートンが、落ちるリンゴを見て万有引力を発見した、とされていますが、とんでもないことです。ただものを見ただけでは、何の発見もできません。様々な実験や思考を重ねて、常に心に引力という存在を置いていたからこそ、ニュートンには、リンゴの落ちる事象からインスピレーションが湧いたのです。相当の苦心や努力の下に、インスピレーションは与えられます。」と話します。同様に、アインシュタイン博士は、激しく心を揺さぶる、今まで見えなかった道を明るく照らし出してくれる一瞬のひらめき、不意に心の中に生まれるそのインスピレーションの99%は努力で成り立っている、とも話しています。

12月13日(火) 川俣高等学校長

前頭前野

人の脳には、分析的思考や客観的思考を行う前頭前野という部分があります。日常的に、そうした思考を行う習慣を身に付けていれば、前頭前野は鍛えられ、衰えを抑制することが期待できます。では、どうすれば、前頭前野を鍛えることができるのでしょうか。専門家の中には、客観的に自分を見るよう心がけること、そして、いつも予定がいっぱいで忙しく過ごすよりも、自分の言動等を振り返る余裕を持つこと、を挙げる人もいます。具体的には、いつもとは違う道順で登校したり、いつものメニューやいつものお店を変えてみたりするなど、慣れていることを一旦やめて新しい体験をすると良いそうです。このように、前頭前野を鍛えるには、前頭前野を刺激する頻度を上げることが大切とされています。

12月12日(月) 川俣高等学校長

成 果

何かを成し遂げようとするとき、その過程で必要とされることは何でしょうか。その人の持つ才能、という人もいます。でも、才能に恵まれたとされるゲーテほど、才にまかせてするのを戒め、努力と精神の集中の必要性を説いた人はいません。偉大な仕事を成し遂げようと欲するなら、心を集中しなければならない、と、彼はいたるところで話しています。そうして成し遂げるからこそ、苦労に満ちた努力も、喜びへと変わるのだと思います。高村光太郎氏も、才に頼り次から次へと手を出すこと以上に、むしろ鈍であれ、牡牛のごとくひたむきに押せ、ということを「牛」という詩にうたっています。それには、一定の時間を要するとは思います。でも、もしも仕事で一定の区切りを迎えて自らを顧みた際に、それまで取り組んできた自分は充実した時を過ごすことができた、と思えたら、相当に幸せです。そういえば、山口市にある中原中也氏の詩碑には、小林秀雄氏の字で、「あぁ、おまへ(お前)はなにをして来(き)たのだと・・吹き来る風が私に云(い)う」と刻まれています。

12月9日(金) 川俣高等学校長

価値の創造

生徒の皆さんが企業に就職し、商品開発のプロジェクトチームに配属になったとします。そこでは、上司に言われた通りにやること、また、過去や他社の傾向ばかり気にすることは求められていません。改良はできても、新たな創造ができないからです。自分を囲い込んでいる枠の中から、自らが一歩踏み出すことが求められます。そのためには、自らの感動体験が大切とされます。自分がこんなに素晴らしいものを作った、皆にこんなに喜ばれることをした、といった感動体験をとおして、お客様にも同じ感動を感じてもらいたいと、心から思うようになるのだそうです。そして、ノルマとして仕事に取り組んでいた姿勢にも、大きな変容が表れます。ものづくりに関わる方には、自分たちはものを作っているのではなく、お客様の感動を作っている、と公言する人が多くいらっしゃいます。加えて、時代に左右されることのない価値も創造したいと思うようになるのだそうです。ものづくりの世界は、実に楽しそうです。

12月8日(木) 川俣高等学校長

自己に達する

いつの時代にも流行がありますが、その流行に忠実であったために、流行に裏切られる場面に遭遇することもあるようで、それは絵画の世界も然りです。では、幾世にもわたり残る絵とはどういったものなのでしょうか。洋画家の熊谷守一氏は、「絵でも字でも、うまく描こうなんてとんでもないことだ。結局、絵は自分を出して、自分を生かすことだと思います。」と話されています。熊谷氏は加えて、それが最も難しく、そうした領域に達するには、おそろしいほどの時間と忍耐、辛抱を要し、評価されない苦しみと孤独にも耐えなければならない、とも話されています。このことは、絵に限ったことではありません。生徒の皆さんが、自分の持つ個性を十分に発揮できるまでには、言い換えれば、自己に達する瞬間までには、前述したような忍耐の期間を経験するかもしれません。でも、その先には、自分の中に長く残る財産を作り上げることができます。

12月7日(水) 川俣高等学校長

生徒の皆さんは、一期一会という言葉を知っていることと思います。この言葉は、今日の茶会は、再度繰り返すことはできない一生に一度のものなので、主人も客人も、そのことを心して、共に全力を尽くし素晴らしいものとしなければならない、という思いの下、茶道の教えとして使われました。そしてこの考えは、人生のありとあらゆることに当てはまります。どんなことでも、人生で一度しかなく、再び繰り返されることはありません。たとえ、同じメンバーで同じ場所に集まったとしても、同じ時間にはできません。今、友と会っているのも一期一会であるし、また、何かに取り組むこともまた、一期一会です。だから、何かを話し合う機会があるのであれば、和やかな中にも節度を持って盛り上がり、楽しい一時を過ごす方がずっといいわけです。家族と過ごす時間も、思いやりと感謝の心を持ちながら、明るく話す方がいいと思います。作家の井上靖氏は、「自分が歩んできた過去を振り返ってみると、一生に一度の素晴らしい出会いが、何とたくさんあったことか。その多くは、自分が意識して作ったものではなく、求めたものでもなく、偶然に生み出されたものであるが、長い人生行路において、そこだけが輝いて見える。」と、ご自身の本に書いていらっしゃいます。生徒の皆さんと私たち教員が、ここ川俣高等学校に集うのも、今、この瞬間しかない大切な時間です。家族の方々と話をするのも然りです。間もなくやって来る冬季休業を、今、を考え、今、を見つめ直す機会にするのもよさそうです。

12月6日(火) 川俣高等学校長

人づくり

江戸時代の名君である細川重賢氏が藩校を作ったときの話です。彼は、指導される方々に対して、「あなた方は国の大工さんである。そして、あなた方の教えを受ける若者は、例えるなら、川のいたるところにいるなど、様々である。どうか、橋を一か所に架けることのないようにしてほしい。強い流れのところにいる者も、なだらかな流れのところにいる者も、皆、川を渡れるよう、それぞれのところに橋を架けてほしい。」と話したそうです。かねてより、人を木に見立て、「人は、一本一本の木である。」という考え方もありました。それは、①木には無数の種類がある。人も同じである ②木は、場所によって、育つ木もあれば育たぬ木もある。人も同じで、育つのに適した環境がある ③木には、肥料をやらなければならない時期と、自然に任せて育つ時期とがある。人も同じで、手を差し伸べる時期と、控える時期がある、という理念に基づくものです。今にも通じる考え方ですね。

12月5日(月) 川俣高等学校長

人学ばざれば知なし

生徒の皆さんは、福沢諭吉氏の著「学問のすすめ」を知っていると思います。日本の人口が約3300万人であった当時、約80万部売れたベストセラーです。「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」という冒頭が有名なので、武家時代の階級概念を打ち破ることに努め、人の平等について述べた本、とされていますが、一方で、学ぶことの大切さについても主張されています。この本の一節には、次のように表現されています。「されど今、広くこの人間社会を見渡すに、賢き人あり、愚かな人あり、そのありさま雲と泥の相違あるに似たるは何ぞ、その次第甚だ明らかなり。人学ばざれば知なし、知なき者は愚人なり。」。その厳しい指摘から相当の年月が流れましたが、学ぶ意義は一層の高まりを見せています。文豪吉川英治氏の座右の銘は、「我以外皆我師」だそうです。すべての人から学ぼうとする姿勢は、今も健在です。

12月2日(金) 川俣高等学校長

不連続の連続

紅葉の季節が終わり、冬がやって来ます。カレンダーを見ながら、そして季節の移ろいを感じながら、私たちは昨日と今日、明日というように区切りをつけます。こうして、人は自然の力を借りながら、連続した日々の流れに区切りを入れてきました。私たちの心の動きを不連続にしたのです。でも、皆が気づいているように、時や私たちの活動は、昨日や今日もそうであるように、明日もまた、途切れることなく連続します。変化のない単調な毎日に敢えて区切りを入れることで、私たちは今日を生き、明日を想う新たな気持ちを手に入れているのかもしれません。区切りはけじめ、一歩を踏み出す大きな力です。不連続な心を繋げていく努力の先に、目標達成の瞬間があります。

12月1日(木) 川俣高等学校長