令和4年度

2022年7月の記事一覧

予 防

ものづくりに必要な機械、この故障は、企業にとって大きな損失となります。故障の未然防止には、劣化を防ぐ日常点検や劣化測定のための定期点検、劣化を早期に回復するための予防修理などの観点が必要とされます。人に例えてみれば、日頃から食事に気を配り、健康診断を受け、早期発見や早期治療に努める、といったことになるのでしょうか。機械が壊れるという場合、前述したことを考慮すると、人が機械を壊している一面もあるのかもしれません。機械の修理以上に故障の未然防止に努めるのは、人に関する予防医学にも通じる考えです。

7月29日(金) 川俣高等学校長

夢の実現

夢を持つから人は成長する、と言われます。その実現に向けて努力し、試行錯誤を繰り返すからこそ達成感を感じることができ、また、その達成感から、次の夢の実現に向けた大きなエネルギーを得ることができます。大切なのは、夢は必ず実現する、と、迷うことなく信じることにあります。例えは少し異なりますが、羽が小さなクマバチは、航空力学上は飛べないはず、とされています。でも実際には、クマバチは立派に飛んでいます。「理論上、君は飛べないんだよ。」と語りかけたら、クマバチに迷いが生じ、そして、それ以降は飛べなくなるかもしれませんね。生徒の皆さんには、自分の持つ夢を真正面から見据え、その実現を信じ抜く信念の下、学習活動に取り組んでほしいと思っています。

7月28日(木) 川俣高等学校長

整 理

生徒の皆さんの机上は、整理整頓ができているでしょうか。できる人はその机を見ればわかる、とも言われます。でも、意識はしても、なかなかうまくいかないこともあると思います。どうすればよいでしょうか。お店のトイレに入ろうとすると、きちんと並べて置くよう、壁には張り紙があっても、脱ぎ捨てられたスリッパが散乱していることがあります。そうした場合に、スリッパを脱ぐエリアを区画線で区切ることで明確にスペースを確保すると、利用者には、きれいに並べて脱ぐ意識が芽生えます。同様に、机の上に区画線を引く(頭の中で区画線を引いてもかまいません)ことで、作業スペースが確保でき、また、物を置く場所や物を置かない場所などを分けることができ、結果として、作業効率が飛躍的に向上します。生徒の皆さんの周囲が整理整頓に満ちた空間となるよう、取り組んでみませんか。

7月27日(水) 川俣高等学校長

プラスとマイナス

言葉のイメージとして、マイナスよりもプラスは良い、という印象があります。でも、ドライバーで考えてみると、プラスドライバーはプラスのネジしか回すことができませんが、マイナスドライバーは、どちらのネジも回すことが可能です。自分の弱点をマイナスとするなら、それを認識した上で強化することで、プラスに変えることもできるはずです。マイナスドライバーになり切った自分を想像してみてください。ネジという環境に入り込み、ネジ溝に完全にフィットすることで、相手がどういった対象であっても自分は適応できます。加えて、相手のことを変えることもできます。そこに、変な力みは不要です。柔道の山下泰裕氏が言うように、自然体が最も強いのだと思います。

7月25日(月) 川俣高等学校長

緊張は味方

緊張により実力を発揮できなかった、という話をよく耳にします。でも、適度の緊張は課題達成率を上げるなど、学習能力を高めてくれることがわかっています。発見者の名前から、ヤーキーズ・ドットソンの法則と呼ばれています。適度の緊張状態では、ノルアドレナリンという物質が分泌されます。集中力や判断力、脳のパフォーマンスを飛躍的に高めてくれる物質です。ただし、緊張は適度であることが条件です。過度のそれは、頭を真っ白にし、筋肉を強張らせるなど、パフォーマンスの低下を招くそうです。場面に応じて緊張をコントロールすることができたら、かなり楽しそうです。

7月21日(木) 川俣高等学校長

個 性

個性の重要性は言うまでもありません。でも、個性は確固とした変わらぬ存在、という考えにより、自分を拘束してしまうことは、かえって少し堅苦しさを覚えます。そもそも、個性(パーソナリティ)の語源は、仮面を意味するペルソナ、だと言われています。私たちは日常生活の中で、場面に応じてペルソナを使い分けます。素の自分を出せる個性にもペルソナがあるのであれば、個性は決まりきった1つのものではない、というのが今の心理学の考え方です。自らの成長や取り入れる知識量に応じて、個性は、臨機応変、変幻自在に変わっていきます。自分の個性を見つけることができないと悩んでいる生徒の皆さん、もしかすると、皆さんの個性は今、変化を遂げている最中なのかもしれません。

7月20日(水) 川俣高等学校長

良質の睡眠

睡眠が人にとって重要なのは言うまでもありません。良質の睡眠を得るには、特に、寝る前の2時間の過ごし方を改善することが有効です。その一つとしては、ブルーライトを浴びないことです。ブルーライトとは、スマホやPC、蛍光灯から発せられる光をいい、青空の波長、つまり、昼に出る光の波長と同じものです。ブルーライトを浴びれば、今が昼と誤認し、睡眠物質のメラトニンの分泌を抑制してしまうのです。一方で、赤い光は夕焼けの波長です。そうした光を浴びると、脳は夜になったと認識し、メラトニンが分泌され、全身活動に徐々にブレーキがかかります。生徒の皆さんは、夜にたっぷりとブルーライトを浴びてはいませんか。

7月15日(金) 川俣高等学校長

五月晴れ

昔の話です。ある高校の校長先生が5月に行われた集会で、「文字通りの五月晴れの下」と話されたとき、一人の生徒は、ふとした疑問が浮かびました。松尾芭蕉の句「五月雨をあつめて早し最上川」の中に出てくる五月雨は梅雨の雨を指し、新緑の季節である五月を指してはいない、と授業で習ったことを思い出し、五月晴れも、古くからある表現であれば、同様に梅雨の合間の晴れを指すのではないか、と考えたからです。その生徒は校長室に行き、直接、校長先生に自分の疑問について話します。二人で辞書を調べ、新暦五月の晴れという意味もあることを確認した上で、でも、表現する際に、「文字通りの」を付けると誤解が生じることから、その校長先生はその生徒に誤り、その後二人で、しばし松尾芭蕉の時代の話に浸ったそうです。学んだ知識を応用して考え、勇気をもって校長室のドアをたたいたその生徒は立派です。学ぶことの大きな意義が、そこにはあります。ちなみに、その校長先生はすぐに校内放送をとおして、ご自身の話された表現に間違いがあったことを全校生徒に伝えたそうです。

7月12日(火) 川俣高等学校長

責任の倫理

ロンドンの街中を車椅子で移動していたイギリスの少年が、歩道の轍に車輪を取られ、動けなくなりました。偶然そこを通りかかった日本人が手を差し伸べようとすると、周囲にいたイギリスの方々から、止めるよう言われたそうです。周囲のイギリスの方々は、誰一人その場を立ち去ることなく、手を出す代わりに、苦労して轍から出ようとするその少年に大きな声援を送り続けました。そして、彼が脱出に成功すると、大きな拍手を送ったそうです。ヨーロッパ伝統の、自分の人生は自分で切り拓く、という人間観の一端を垣間見ることができる出来事です。手を差し伸べないことは冷淡な行為ではなく、人と人との間に、心の橋が架かっているからこそできることです。日本では信条の純粋さを重んじる傾向にあります。一方で、行為の先にある責任までは考慮しないこともあります。信条の倫理に加えて、責任の倫理の重要性を説いたのは、ドイツの社会学者マックス・ウェーバーでした。価値観の多様化に直面する中、私たちには、どういった言動を取るのがよいのかを瞬時に判断する責任が求められています。ちなみに、偶然少年の脇を通りかかった日本人は、私の大学の同級生です。

7月11日(月) 川俣高等学校長

普 通

人は初めて会った人に対して、好きか嫌いか、の感情を持つ傾向にあります。自分の身を守るために備わっている、そうした判断を下す場所が偏桃体です。ちなみに、偏桃体では、0.02秒で判断をするそうです。でも、嫌いという感情を持ってしまうと、それが相手にも伝わるので、人間関係という観点からは好ましくありません。嫌いの感情を抑制するには、好きか嫌いか、という基準に、普通という基準を加えるとよい、とされています。大脳皮質を進化させ、じっくりと考える論理的思考ができる人間には、偏桃体の働きをコントロールできる力が備わっています。嫌いの感情を薄めて、できれば、好きか普通か、の2つの基準により、人と接してみるのも楽しそうです。

7月8日(金) 川俣高等学校長

甲子園の砂

高校野球全国大会が開催される甲子園、全力で闘った後に、甲子園の砂(土)を袋に詰める球児の姿を目にしたことがあると思います。その砂は、かつては中国福建省から、現在では、岡山県や三重県、鹿児島県や大分県、鳥取県など複数の県から運ばれているそうです。もともと、甲子園の周囲は白砂青松の地で、浜砂が豊富にありましたが、その鮮やかな白さからボールが見えにくいこともあり、黒土を混ぜるようになったそうです。春は雨が多いので、水はけをよくするために砂を増やし、白砂6に対して黒土4に、一方で、夏は日差しが強くボールが見えにくいので、白砂4.5に対して黒土5.5と配合を変えています。こうした工夫一つ見ても、大会を運営される方々が、選手の皆さんが良い環境でプレーできるよう、様々なことに気を配っていらっしゃることが窺えます。ちなみに、初めて甲子園の砂を持ち帰った球児は、読売巨人軍監督を勤められた川上哲治氏と言われています。昭和12年の決勝で敗れた熊本工投手川上氏は、涙をぐっとこらえて、黙々とグランドの砂を集めたそうです。間もなく夏の甲子園の季節です。

7月6日(水) 川俣高等学校長

自己都合

人は自分に都合のよい情報を集め、一方で、不都合な情報を遠ざける傾向にあります。これを心理学では、確証バイアスといいます。でも、客観的な判断を行うためには、こうした確証バイアスに抗うことも大切になります。立場の異なる人の話に耳を傾け、多方面から情報を得ることで、導かれる判断の正確さは格段に増します。生徒の皆さんも、こうした取組を意識的に行うことにより、自らの一層のスキルアップを図ることができます。

7月5日(火) 川俣高等学校長

自己受容

生徒の皆さんも、自己肯定感という言葉を聞いたことがあると思います。自分の可能性を信じ、自分に自信を持ち、肯定的に自己認識をすること、これが自己肯定感です。一方で、自分に自信が持てないなどの感情を自己否定感といいます。自分の感情にマイナスを掛け合わせてしまうこうした瞬間は、確かにありますね。その改善を図る第一段階として、自己受容に努めることが大切であり、その方法として、精神科医樺沢紫苑氏は、「自己受容の4行日記」を推奨されています。1行目に、「ミスをして叱られた」など、自分の体験したネガティブな事例を書き、次の2行には、「誰にでもミスはある」「少し落ち込んだ」など、自分の自然な感情を書き込み、最後の1行は、「それでも、まずまず良い一日だった」など、前向きな表現で締めくくるのだそうです。自己否定から自己受容を行うとともに、最後の前向きな表現により、脳内にプチ変化が生じ、そしてプチ成長を遂げることができます。

7月4日(月) 川俣高等学校長

単位の考え方

ある企業の経営者が、「これまで7日かかっていたリードタイム(すべての工程が完成するまでの所要時間)が3日になりました。」と話すと、それを聞いた別の経営者はその取組を賞賛した上で、「では次は、72時間(3日)を、1時間、2時間と、さらに短縮化を図ることができそうですね。」と話したそうです。リードタイムを「日」という単位で考えれば、4日の短縮は十分な対応ですが、「時間」という単位で考えれば、まだ改善の余地があることに気づきます。加えて、「時間」を「分」に置き換えて考えることもできます。このような取組を継続すれば、最初の経営者の会社は、将来、リードタイムが2日になっているかもしれませんね。時間の単位(時単)を変えることで、時間の短縮(時短)につながるわけです。生徒の皆さんの周囲にも、改善の余地は無限にありそうです。

7月1日(金) 川俣高等学校長