令和4年度

校長より

読 書

正確な情報を得るためにも、読書習慣は大切なものです。でも、2018年度調査によれば、高校生の1週間の読書時間の平均は約2時間とのことです。文庫本1冊を読み終えるのに4時間程度かかるとすれば、2週間かけて1冊の本を読むこととなり、本の内容の興味は薄れてしまいそうです。また、全く読書をしない高校生は57%にもなるとのことです。かつてアメリカでは、多忙な人が短時間で本を読むことができるよう、速読を取り入れる傾向にありました。ケネディ元大統領も速読者として有名です。本を読む際の方法としては、こうした速読もありますが、一方で、一字ずつ文字を追い、文脈をたどり、行間の意味を考えるなど、じっくりと時間をかけた読書法もあります。自分の時間と相談しながら、読書法を変えてみるのも楽しみの一つです。いずれにしても、読書による思索体験の積み重ねが、主体的な人間形成に欠かせないことは確かなようです。

5月13日(金) 川俣高等学校長

心を磨く

私たちは、一日に数えきれないほどの言葉を発しています。言葉は、相手を励まし勇気づけることもできれば、悲しませることもあるなど、大きな力を持っています。「心が言葉をつくり、言葉が心をつくる」と言われます。優しい心を持つ人から、優しい言葉は発せられます。また、優しい言葉から、一層優しい心が形成されます。心を磨く一つの手段として、言葉を意識してみませんか。

5月12日(木) 川俣高等学校長

自 立

ウミガラスの親鳥は、若鳥を1千メートルもの断崖に置き去りにするのだそうです。海にあるエサを食べるためには、若鳥は、その断崖から飛び立つ必要があります。こうした試練を経て、若鳥は自立していきます。自然界には今でも、危険や困難が当たり前に存在しており、その克服に、自立は欠かすことのできない要素とされています。では、自立の先には何があるのか。大きな成長があります。私たち人間も、そこから学ぶことは多くありそうです。

5月11日(水) 川俣高等学校長

無知の知

自分の無知を自分で自覚すること、つまり無知の知が人間行動の始まり、とする考え方があります。少なくとも、湯川秀樹博士のいう、「何もかも知ってしまうことよりも、無知を知ることのほうが一層人間らしい。」という言葉は、よく理解できます。新しいことを知ったときの新鮮な驚きは進歩を呼び込み、未知の分野に挑戦する意欲と興味を引き起こします。私たちは、すべてを知ることはできません。知識に人間の本質があるのではなく、知らないことに気づく知恵こそ、人間にとって大切であると思います。何を知らなくてはいけないのかについて、じっくりと考え、自分を見つめる時間は十分にあります。

5月10日(火) 川俣高等学校長

心配り

イギリスで、多くの国賓の方々をもてなす晩餐会が開かれたときの話です。手を洗うために出された水を、ある国賓の方が思わず飲んでしまったそうです。政府要人の方々から失笑がもれたそのとき、その方が間違って水を飲まれたことに気づいたエリザベス女王は、ごく自然に自分の前に置かれていた水をお飲みになったそうです。相手の立場を思う振舞いや心配りは、日頃の意識から生じます。私たちも見習うべきことが多くありそうです。

5月9日(月) 川俣高等学校長

「今やらねばいつできる。わしがやらねば誰がやる」を合言葉として、かつて仕事に取り組んだ区役所がありました。私たちは、刻一刻と過ぎ去る時間を無駄にしてしまうことがよくあります。松下幸之助氏は、「自分に20歳の若さを与えてくれる人がいたら、自分の財産と取り替えてもいい。」と話されたことがあるそうです。古代ローマの思想家セネカは、「人生は短いのではない。我々がそれを短くしているのだ。」と語りました。一日24時間は皆平等に与えられます。何もせずに日々過ぎてしまうと悔やむ前に、充実した生活を送るためにも、人生の先達の言葉を噛みしめ味わうべきなのかもしれません。

5月6日(金) 川俣高等学校長

習い

多くの知識を身に着けるためには、短時間で理解度を高める必要はありますが、一方で、すぐにはわからなくても、悪いことばかりではありません。学ぼうとする知識が手軽に手に入らないからこそ、いったん身に着けると、絶対に忘れないものです。不器用であったとしても、長い時間をかけて自分を内面から変革していく過程もまた、学ぶ魅力の一つです。読書百編、意自ら通ず。生徒の皆さんも、時の概念を脇に置き、じっくりと考える経験を大切にしてみてください。

4月28日(木) 川俣高等学校長

後ろ姿への責任

相撲の力士が花道を引き揚げる際に、その後ろ姿がテレビに映し出されます。仮にその取組を目にしていなくても、後ろ姿から勝ち負けを想像することができます。生徒の皆さんは、皆さんの前(目や意識の届くところ)に加えて、後ろにも注意を向けているでしょうか。たとえば、バスや電車に乗っているときに、自分の背負っているバッグが周囲にいる人の邪魔になってはいないでしょうか。また、歩道に広がって歩くことで、後ろを歩く方々の通行を妨げてはいないでしょうか。就職や大学の試験では、多く面接が課せられます。緊張感を強いられる中、試験会場に入室してすべての応答をし終えた、まさにそのときの皆さんの表情、そして、退室する際の所作こそ、面接をされる方の知りたいところなのです。皆さんは、自分の後ろ姿(目や意識の届かないところ)にも、責任を持つ必要があります。

4月27日(水) 川俣高等学校長

後始末より

何かに取り組んで失敗してしまった際に、その後始末に大きな時間やエネルギーを費やすことがあります。失敗自体は悪いことではなく、そこから学ぶことは多くあります。でも、失敗しないために十分な備えをしたか、と問われると、自信を持って答えることはできない場合もあります。計画的に物事を進める先見性や情報収集、また、情報の適切な整理や分析などの洞察力をとおして、事前の備えを万全にすることを前始末と呼ぶとすれば、こうした前始末に係る時間やエネルギーは、後始末のそれと比較してもかなり短く、そして小さくてすみます。

4月26日(火) 川俣高等学校長

雀になれ

学習活動には、先生方から教えをいただく場面同様に、自ら考え、努力により実力をつける取組も重要です。教えてもらえば、余すところなく学ぶことができるし、効率的な学習も可能である一方で、自分の眼で見て、自分の頭で考えて、自分の肌で感じる瞬間は圧倒的に少なくなります。「カナリアは、愛鳥家に育てられ、立派な籠の中で十分な餌を与えられるなど、何不自由ない生活を送るが、これに慣れると、自力自活の術を失っていく。それに対して雀は、自然の中で風雨にさらされ、餌も自分で見つけなければならない。しかし、雀は、思いのまま自然界を飛び回ることができる鳥に成長する。」これは、日産自動車元会長の川又克二氏が、入社式の際に新人社員に対して述べた言葉です。いつの時代にも、厳しいけれど、こうした試練を避けては真に学ぶことはできない、という戒めと受け止めています。

4月25日(月) 川俣高等学校長