令和4年度

2022年5月の記事一覧

有言実行

自分に課したことを実行できず、悔しい思いをした経験は誰にでもあると思います。実行を図る上で大切なのは、心の中で目標を唱える以上に、敢えて口に出して言うことです。未来に向かって言葉を投げかけることにより、自分にハードルを設けることができます。周囲の人にも、そのハードルは見えています。ハードルを飛ぶことができるよう、何度でもチャレンジする姿を目にすれば、きっと、周囲の人も応援してくれるはずです。未来の自分に期待することをやめないでほしいのです。

5月31日(火) 川俣高等学校長

常識を見つめ直す

アスリートの持つ記録は、飛躍的に向上しています。アスリートご本人の努力はもちろんですが、それを支える周囲の環境もその一因です。かつて日本のマラソン界では、金栗四三さん考案の、地下足袋に似た「金栗たび」を履いて走るのが当たり前でした。その金栗たびには、走りやすいという利点に対して、走り終わったときにマメができるという難点がありました。後に、マラソンシューズの改良に尽力された鬼塚喜八さんも、当初は、マメを克服してこそ一流、という当時の選手の考えに疑問を持つことはありませんでした。でも、ふと、マメのできない靴は作れないものかと思い、文献を検索したり、医学部教授に話を聞いたりして研究を始めます。マメの予防には足の裏を冷やすことが重要と気づき、底に水を入れた靴を作ったり、横に穴を開けて風通しを良くしたものを作ったりするなど試行錯誤を重ね、ついに二重底で衝撃を和らげるシューズの開発に成功します。一層の改良により、目の前の常識が、後の常識であり続ける保証はありません。常識をあらゆる角度から眺め、見つめ直す意識が大切です。

5月30日(月) 川俣高等学校長

着 想

昭和48年、ある中学校の理科の授業中のことです。一人の生徒が手を挙げて、「大雨が降ったら、その分、空から雲がなくなるんですね。」と先生に問いました。その生徒の根拠は、教科書にある、「雲の基となる小さな水の粒が集まり、重くなると雨になり、落ちる」という記述にありました。明確な回答ができずに授業を終えた先生は、ずっとそのことが頭に残っており、その後、その先生が科学教育研究センター長になられたときに、北海道大学に雲の調査を依頼します。カナダのバンクーバーで偶然目にした、高さ一万メートルもの巨大な積雲を写真に収めた北海道大学の教授は、煙ったように見える雲の一部(激しく雨の降っている部分)の上部の雲が、すっぽりと削り落ちていることを確認します。まさしく中学生の着想通り、雨が降ったために雲がなくなっていたのです。先生も明確に答えることのできなかったことを、一人の中学生が気づいたことに感動を覚えます。また、そのことをずっと念頭に置いていたその先生の、教師としての意識の高さにも驚かされます。ちなみに、前述した写真は、改訂された理科の教科書に掲載されました。

5月27日(金) 川俣高等学校長

チョウは適当にふわふわと飛んでいるように見えますが、そこに一定のルール(基本概念)があることをご存じでしょうか。ナミアゲハやクロアゲハなどアゲハチョウの仲間には、日当たりのいいところに育つミカンやカラタチの木に卵を産むものが多いため、自然にそうした木の上を飛ぶようになるのです。こうした通り道をチョウ道と呼びます。一方で、キアゲハは、セリやニンジン、パセリなどセリ科の草に卵を産むため、広がる草原の上を飛ぶこととなり、結果としてチョウ道はできません。また、モンシロチョウはアブラナ科の植物を好むため、耕したばかりの畑には近寄らず、また、緑のない場所も飛ばないのです。こうした研究は、かつて滋賀県立大学長であった日高敏隆氏によってなされました。当時はあまり注目されることのなかったこの研究は、時が移ろい、街に明るい公園を作り、中央に大きな花壇を設置して、チョウの舞う街づくりをしようとした多くの地方自治体に注目されることとなります。大学の研究意義は、現状を変えるだけではなく、将来を変えるという意味においても大きな意義があると思います。また、チョウにはチョウ道(チョウのルール)があるように、街づくりにも街づくり道(街づくりのルール)が、そして、学校づくりにも、確固とした学校づくり道(学校づくりのルール(基本概念))が必要不可欠とも言えます。

5月26日(木) 川俣高等学校長

承認欲求

周囲の人から一定の評価を得たい、と思う気持ちは誰にでもあります。心理学で承認欲求と呼ぶこの心理は、マズローの欲求5段階仮説でも、重要なものとして上から2番目に位置づけられています。一方で、他者からの承認を求めるために行動すると、他者のみを意識した生き方になる、との指摘もあります。アルフレッド・アドラーは、「他者からの承認を求め、他者からの評価ばかりを気にしていると、最終的には、他者の人生を生きることになる」としています。自分の培った経験や得た知識をとおした、自分の考えによる言動に自信を持てるよう、一定の客観的な視点を持ち合わせることは大切です。

5月25日(水) 川俣高等学校長

Iメッセージ

主語をYouとして話をすることを「Youメッセージ」といいます。「遅刻したりして、(あなたは)だめじゃないか。」といった表現がこれに当たります。相手に対する思いやりからの発言であっても、その相手にすれば、命令や指示を受けたと感じるため、反感を持たれる場合もあります。一方で、「Iメッセージ」という表現があります。これは、「時間を守る人を、(私は)信頼できる。」など、自分の願望や希望、思いを相手に伝えるような表現です。場面に応じて、適宜「Iメッセージ」を取り入れることで、良き人間関係を保つことができそうです。

5月24日(火) 川俣高等学校長

噺家(はなしか)の桂歌丸氏が、かつて語った言葉です。「弟子に噺を教えることはできるが、間(ま)を教えることはできない。噺家は、早く自分の間を拵(こしら)えた人が勝ちです。」ここでいう間とは、単に一定の時間を取ることを意味するのではなく、独自に作り上げたやり方のこと、と思っています。自分に合った間は、知識の習得にも応用できます。たとえば、先生方から授業で教えていただいた知識をそのままノートに写すのではなく、自分の解釈を加える工夫により、自分のものにすることができます。間を挟むことで、単色であった知識が、色彩溢れる魅力あるものに変わります。

5月23日(月) 川俣高等学校長

わかる

何かについて「わかる」ためには、「分ける」ことが大切だと言われます。すべてがわからない、ということはないので、何がわかり何がわからないのか、分けながら考えることにこそ意味があります。そして、分けながら考える分析的習慣が身につくと、その過程で解決してしまう課題も多くあります。理解の深化を図るためにも、私たちは常に、分ける意識を持つ必要がありそうです。

5月20日(金) 川俣高等学校長

読解力の精度

『名探偵コナン』をご存じの方は多いと思います。小五郎さんは、数少ない証拠をもとに、即座に、そしてかなり勝手に話を創ってしまい、誤った方向に進むことがよくあります。一方で、コナン君は、じっくりと証拠を集めて、それを合理的に組み上げる作業をします。小五郎さんが話を「創造」してしまうのに対して、コナン君は、「想像」はしても「創造」はしません。その根本的な違いは、どこにあるのでしょうか。それは、対象からの視線の切り方にあると思います。小五郎さんは、すぐに現場から目を離します。つまり、すぐに視線を切ってしまうのです。コナン君は、現場を徹底的に見るので、なかなか視線を切ろうとしません。だから、真実が見えるのです。読解力を問われる文章を読み込む際にも、この視線の切り方により大きな差が生じます。生徒の皆さんも、今度文章を読むときには、すぐに視線を切ることなく、また、思い込みによる創造をすることなく、じっくりと文を読み込んでみてください。これまでには味わったことのなかった深い領域まで、文の中に踏み込めるはずです。

5月19日(木) 川俣高等学校長

分 類

図書館を利用すると、自分の見つけたい本を比較的容易に探すことができます。日本十進分類法により、整理・分類されているのがその理由です。森清氏が、海外の十進分類法を基に生み出したこの分類法は、1から9までの数字に当てはめた哲学や歴史、社会科学などの「類」を作り、その類を10個の「綱」に分け、さらにその中を「目」に分けるなど、体系的な分類となっており、そのことが、本を管理する図書館側にも、利用者側にも優しい環境を生み出すこととなりました。私たちも、頭の中でよく物事を整理し分類します。その秩序を保つよう努めることは、生活の上でも非常に重要なことです。

5月18日(水) 川俣高等学校長

江戸時代の寺子屋で、教科書として使用された「実語教」の中に、「水は方円の器に従い、人は善悪の友による」という表現があります。水は入れ物の形に応じて、四角にも丸にもなるのと同様に、人は交わる友により変わる、というものです。人の友は、人とは限りません。自分の身近な存在、たとえば、本や花、動物なども友です。自分が無意識のうちに向ける目線の先によくあるもの、それが友です。自らの可能性を広げ、高めてくれる友の存在に感謝するとともに、その存在を、いつまでも大切にする必要がありそうです。

5月17日(火) 川俣高等学校長

読 書

正確な情報を得るためにも、読書習慣は大切なものです。でも、2018年度調査によれば、高校生の1週間の読書時間の平均は約2時間とのことです。文庫本1冊を読み終えるのに4時間程度かかるとすれば、2週間かけて1冊の本を読むこととなり、本の内容の興味は薄れてしまいそうです。また、全く読書をしない高校生は57%にもなるとのことです。かつてアメリカでは、多忙な人が短時間で本を読むことができるよう、速読を取り入れる傾向にありました。ケネディ元大統領も速読者として有名です。本を読む際の方法としては、こうした速読もありますが、一方で、一字ずつ文字を追い、文脈をたどり、行間の意味を考えるなど、じっくりと時間をかけた読書法もあります。自分の時間と相談しながら、読書法を変えてみるのも楽しみの一つです。いずれにしても、読書による思索体験の積み重ねが、主体的な人間形成に欠かせないことは確かなようです。

5月13日(金) 川俣高等学校長

心を磨く

私たちは、一日に数えきれないほどの言葉を発しています。言葉は、相手を励まし勇気づけることもできれば、悲しませることもあるなど、大きな力を持っています。「心が言葉をつくり、言葉が心をつくる」と言われます。優しい心を持つ人から、優しい言葉は発せられます。また、優しい言葉から、一層優しい心が形成されます。心を磨く一つの手段として、言葉を意識してみませんか。

5月12日(木) 川俣高等学校長

自 立

ウミガラスの親鳥は、若鳥を1千メートルもの断崖に置き去りにするのだそうです。海にあるエサを食べるためには、若鳥は、その断崖から飛び立つ必要があります。こうした試練を経て、若鳥は自立していきます。自然界には今でも、危険や困難が当たり前に存在しており、その克服に、自立は欠かすことのできない要素とされています。では、自立の先には何があるのか。大きな成長があります。私たち人間も、そこから学ぶことは多くありそうです。

5月11日(水) 川俣高等学校長

無知の知

自分の無知を自分で自覚すること、つまり無知の知が人間行動の始まり、とする考え方があります。少なくとも、湯川秀樹博士のいう、「何もかも知ってしまうことよりも、無知を知ることのほうが一層人間らしい。」という言葉は、よく理解できます。新しいことを知ったときの新鮮な驚きは進歩を呼び込み、未知の分野に挑戦する意欲と興味を引き起こします。私たちは、すべてを知ることはできません。知識に人間の本質があるのではなく、知らないことに気づく知恵こそ、人間にとって大切であると思います。何を知らなくてはいけないのかについて、じっくりと考え、自分を見つめる時間は十分にあります。

5月10日(火) 川俣高等学校長

心配り

イギリスで、多くの国賓の方々をもてなす晩餐会が開かれたときの話です。手を洗うために出された水を、ある国賓の方が思わず飲んでしまったそうです。政府要人の方々から失笑がもれたそのとき、その方が間違って水を飲まれたことに気づいたエリザベス女王は、ごく自然に自分の前に置かれていた水をお飲みになったそうです。相手の立場を思う振舞いや心配りは、日頃の意識から生じます。私たちも見習うべきことが多くありそうです。

5月9日(月) 川俣高等学校長

「今やらねばいつできる。わしがやらねば誰がやる」を合言葉として、かつて仕事に取り組んだ区役所がありました。私たちは、刻一刻と過ぎ去る時間を無駄にしてしまうことがよくあります。松下幸之助氏は、「自分に20歳の若さを与えてくれる人がいたら、自分の財産と取り替えてもいい。」と話されたことがあるそうです。古代ローマの思想家セネカは、「人生は短いのではない。我々がそれを短くしているのだ。」と語りました。一日24時間は皆平等に与えられます。何もせずに日々過ぎてしまうと悔やむ前に、充実した生活を送るためにも、人生の先達の言葉を噛みしめ味わうべきなのかもしれません。

5月6日(金) 川俣高等学校長