令和4年度

2023年4月の記事一覧

仕事のおおよその見通しがついたときなどに、峠を越えた、という表現を使います。峠とは、山のこちら側とあちら側の境に位置する高い場所を指しますが、移動手段がなく、他地域との交流もしにくい状況にあった昔の人にとって、山は、見えぬ理想郷を思わせるあこがれの存在であったとの指摘もあります。今でも、旅の原点にあるのは、あちら側にある素晴らしい世界に触れたいという思いであり、そうした思いが人を旅に誘(いざな)うとも思えます。そういえば、民俗学の第一人者である柳田国男氏は、日本中を歩いた旅人としても知られています。 最も心に刻まれる旅の瞬間を問われた柳田氏は、「峠に立つと、景色が一変する。こちら側とむこう側では、空気までも違っている。住む人の考えも風景も、まるで異なる2つの地域を、峠をわたる風に吹かれながら眺めていると、何ともいえない気分になる。」と話されていました。生徒の皆さんも、きっと、人生観に大きく影響を与えるような峠に立つ瞬間を何度も体験することになります。

4月6日(木) 川俣高等学校長

学習法

考査などテストが近づくと、早く知識の身に付く何らかの方法はないか、と考えがちです。本屋に行けば、学習法から暗記法まで様々な方法を紹介している本がよく目につきます。でも結局は、約2300年前に、ギリシアのプトレマイオス一世が数学者ユークリッドに「幾何学を容易に学ぶ方法はないか。」と尋ねた際に、ユークリッドが答えた「幾何学に王道なし」につながるのではないかと思います。また、世界的細菌学者の野口英世博士も、「努力だ、勉強だ、それが天才だ。誰よりも3倍、4倍、5倍勉強する者、それが天才だ。」と話されています。いくら学習法に省エネを取り入れたとしても、地道な努力は必要とされるようです。

4月5日(水) 川俣高等学校長

大きな意欲

生徒の皆さんは、主に教科書をとおして学ぶことと思います。より一層わかるために、自分に合う参考書やテキストを探すこともあるかもしれません。でも、学びの本質は、何から学ぶか、ということよりも、どんな意識で学ぶか、にあります。エッカーマンの『ゲーテとの対話』の中には、大きなヒントが書かれています。「自分の所有といえるものはごくわずかなものである。我々は、先人からも同時代人からも受け入れて学ばなければならない。要するに、自分の内に持っているか、他者から得るか、こうしたことは愚問なのだ。大切なことは、大きな意欲を持ち、それを成し遂げる根気を持つことである」。生徒の皆さんが真に学べるかどうかは、皆さんの持つ意欲と根気にかかっています。

4月4日(火) 川俣高等学校長

言葉以外で伝える

相手に情報を伝えるために、人は言葉を用いますが、実際には難しいと感じる時も多くあります。言語使用は左脳に依存しているため、いわゆる話し上手と言われる人は左脳が発達しているとされています。でも、相手に伝える情報ツールは言語に限られるものではありません。うまく相手に情報を伝えることができるよう、新たな創作料理作りを勧める方もいます。初めての料理は出来上がりを想像しにくいものですが、失敗した料理を出さないためにも、どう調理すれば美味しくなるか、相手はどういった味付けを好むか、盛り付けをこうすれば相手は喜ぶのではないか、など様々考えながら調理に取り組むため、相手への配慮を念頭に置くことが調理の前提となります。そして、その料理が好評となれば、相手との結びつきも一層強いものとなります。つまり、話すことなく、自分の思いを伝えることができるのです。問題解決の手順を筋道立てて考えることは、伝えるための言語使用以上の効果をもたらすこともあります。また、創作料理以外にも、自分の思いを相手に伝える方法は数多くありそうです。

4月3日(月) 川俣高等学校長