令和4年度

仕事のおおよその見通しがついたときなどに、峠を越えた、という表現を使います。峠とは、山のこちら側とあちら側の境に位置する高い場所を指しますが、移動手段がなく、他地域との交流もしにくい状況にあった昔の人にとって、山は、見えぬ理想郷を思わせるあこがれの存在であったとの指摘もあります。今でも、旅の原点にあるのは、あちら側にある素晴らしい世界に触れたいという思いであり、そうした思いが人を旅に誘(いざな)うとも思えます。そういえば、民俗学の第一人者である柳田国男氏は、日本中を歩いた旅人としても知られています。 最も心に刻まれる旅の瞬間を問われた柳田氏は、「峠に立つと、景色が一変する。こちら側とむこう側では、空気までも違っている。住む人の考えも風景も、まるで異なる2つの地域を、峠をわたる風に吹かれながら眺めていると、何ともいえない気分になる。」と話されていました。生徒の皆さんも、きっと、人生観に大きく影響を与えるような峠に立つ瞬間を何度も体験することになります。

4月6日(木) 川俣高等学校長