令和4年度

2022年4月の記事一覧

習い

多くの知識を身に着けるためには、短時間で理解度を高める必要はありますが、一方で、すぐにはわからなくても、悪いことばかりではありません。学ぼうとする知識が手軽に手に入らないからこそ、いったん身に着けると、絶対に忘れないものです。不器用であったとしても、長い時間をかけて自分を内面から変革していく過程もまた、学ぶ魅力の一つです。読書百編、意自ら通ず。生徒の皆さんも、時の概念を脇に置き、じっくりと考える経験を大切にしてみてください。

4月28日(木) 川俣高等学校長

後ろ姿への責任

相撲の力士が花道を引き揚げる際に、その後ろ姿がテレビに映し出されます。仮にその取組を目にしていなくても、後ろ姿から勝ち負けを想像することができます。生徒の皆さんは、皆さんの前(目や意識の届くところ)に加えて、後ろにも注意を向けているでしょうか。たとえば、バスや電車に乗っているときに、自分の背負っているバッグが周囲にいる人の邪魔になってはいないでしょうか。また、歩道に広がって歩くことで、後ろを歩く方々の通行を妨げてはいないでしょうか。就職や大学の試験では、多く面接が課せられます。緊張感を強いられる中、試験会場に入室してすべての応答をし終えた、まさにそのときの皆さんの表情、そして、退室する際の所作こそ、面接をされる方の知りたいところなのです。皆さんは、自分の後ろ姿(目や意識の届かないところ)にも、責任を持つ必要があります。

4月27日(水) 川俣高等学校長

後始末より

何かに取り組んで失敗してしまった際に、その後始末に大きな時間やエネルギーを費やすことがあります。失敗自体は悪いことではなく、そこから学ぶことは多くあります。でも、失敗しないために十分な備えをしたか、と問われると、自信を持って答えることはできない場合もあります。計画的に物事を進める先見性や情報収集、また、情報の適切な整理や分析などの洞察力をとおして、事前の備えを万全にすることを前始末と呼ぶとすれば、こうした前始末に係る時間やエネルギーは、後始末のそれと比較してもかなり短く、そして小さくてすみます。

4月26日(火) 川俣高等学校長

雀になれ

学習活動には、先生方から教えをいただく場面同様に、自ら考え、努力により実力をつける取組も重要です。教えてもらえば、余すところなく学ぶことができるし、効率的な学習も可能である一方で、自分の眼で見て、自分の頭で考えて、自分の肌で感じる瞬間は圧倒的に少なくなります。「カナリアは、愛鳥家に育てられ、立派な籠の中で十分な餌を与えられるなど、何不自由ない生活を送るが、これに慣れると、自力自活の術を失っていく。それに対して雀は、自然の中で風雨にさらされ、餌も自分で見つけなければならない。しかし、雀は、思いのまま自然界を飛び回ることができる鳥に成長する。」これは、日産自動車元会長の川又克二氏が、入社式の際に新人社員に対して述べた言葉です。いつの時代にも、厳しいけれど、こうした試練を避けては真に学ぶことはできない、という戒めと受け止めています。

4月25日(月) 川俣高等学校長

理想の人の在り方

論語に、「質文に勝てば即ち野なり。文質に勝てば即ち史なり。文質彬彬として、然る後に君子なり。」という表現があります。質とは人の持つ誠実さ、文とは教養、野とは粗野なこと、史とは、物知りではあるものの心からの誠のない人をいい、また、彬彬とは、美しく調和の取れていることを指しています。つまり、孔子は、生まれながらに持つ誠実心と、後天的に身に着ける教養とが調和した人物を理想的な人と捉えているようです。人としてのバランスを保つことは、いつの時代においても大切なことのようですね。

4月22日(金) 川俣高等学校長

一生涯実行するに値する言葉を問われ、孔子は、「其れ恕か。己の欲せざるところは、人に施すことなかれ」と答えています。恕とは、自分の「心」に対するが「如く」に人に対する思いやり、のことです。歳を取るにつれて、身体には衰えが生じるかもしれませんが、心には永遠に衰えはありません。常にこの言葉を念頭に置いて、人と接する姿勢を持ち続けたいと思います。

4月21日(木) 川俣高等学校長

良 心

昭和22年頃の公衆電話料金は、50銭で利用できる、交換手を介して相手と話をするものでした。でも、50銭硬貨というものはなく、また、10銭硬貨を5枚揃えるのも難しかったので、当時の電話局は50銭紙幣を入れることのできる箱を設置してみたそうです。でも交換手には、利用者が50銭紙幣を実際に箱に入れたかどうかを確認することはできません。信用して電話を繋ぐしかなかったのです。数日後に箱を開けた係員は、驚くべき光景を目にします。料金の収納率は105%だったのです。お釣りが出ないことを知っていながら10円札を入れる人もいるなどしたため、100%を上回る結果となりました。人の目があろうとなかろうと、日本人は揺らぐことのない良心を持っている証です。こうした伝統は末永く受け継ぐものだ、と改めて思います。ちなみに、当時のアメリカでは、「日本人の道義心、恐るべし」と紹介されたそうです。

4月20日(水) 川俣高等学校長

有言実行

国によって人を判断する基準は異なりますが、多くには次の4つの型が見られるようです。第一に有言実行型です。言うまでもなく、最も信頼されるタイプです。次に不言実行型です。言葉を発することはなくても、自分のすべきことについてしっかりと取り組むタイプです。第三に不言不実行型です。言うことも言わなければ、やることもやらないタイプで、周囲からの評価は概ね低くなります。最後に有言不実行型です。やるはずのことに手を付けないわけですから、その穴埋めをするために、周囲の負担はかなり増します。信用の信は、人が言う、と書きます。人は、口に出したことを守る義務があります。生徒の皆さんには、自らの発言に責任を持ち、周囲との良き人間関係を築いてほしいと思っています。

4月19日(火) 川俣高等学校長

時の大切さ

「世の中は三日見ぬ間の桜かな」というように、日々の変化の激しさには驚くばかりです。ほんの少し本を読まずにいれば、考え自体が空疎なものとなってしまうことを言う、「三日 書を読まざれば、その言 含蓄なし」という言葉もあります。このように、時を大切なものとして捉える表現は多くあります。現在は永遠ではありません。中国の詩人陶淵明も、「盛年は重ねて来たらず、一日再び あしたなり難し」とうたっています。青年(盛年)期は、2度はやって来ません。生徒の皆さんの年齢時に学ぶことはたくさんあります。皆さんにとって、毎日が進歩的日々であることを期待します。

4月18日(月) 川俣高等学校長

日本では温帯林が繁茂していたため、かねてより、家や道具に、また燃料としても木が多く利用されてきました。一見すると柔らかく、弱々しくも見える木ですが、法隆寺の修理を担当する宮大工さんによれば、桧の柱は千年以上もの寿命があるとのことです。一方で、法隆寺の改修に必要な桧は日本国内では見つからず、台湾など海外から輸入して対応するとのことです。木の文化は日本の大きな特徴の一つです。私たちの生活に身近な存在である木ですので、これからも大切にしていきたいものです。

4月15日(金) 川俣高等学校長

和よりも積

1957年から1年間、南極観測隊の越冬隊長として昭和基地で業務に関わった西堀栄三郎氏は、個性の強さを基準として11名の人選を行ったそうです。長期間にわたり寝食を共にするメンバーであれば、まずは個人よりも集団を優先するタイプを選びそうですが、西堀氏には一つの信念がありました。「同じ性格の人が一致団結しても、その力はせいぜい「和」の形でしか大きくならない。しかし、異なる性格の人が団結すれば「積」の形となり、その力が格段に大きくなるはずである。」。集団の在り方を考える上で、一つの参考になりそうです。

4月13日(水) 川俣高等学校長

長 崎

坂道の多いことで知られる長崎、そこに住む人は様々な取組や工夫をされているようです。たとえば、引越しのときに、坂道が急すぎるため車を横付けできない家がほとんどなので、横付けできる家の場合には、「車横付け可」が不動産屋さんのキャッチフレーズになっている地域もあるそうです。また、バスの定期券を購入するときには、決まった停留所間を往復分買うものですが、長崎の場合には、往復別々の区間、つまり片道ずつの定期券を買うのだそうです。朝の出勤の際には、自宅を出て坂道を下りて行けるバス停から乗り、帰宅するときには、自宅より高い場所にあるバス停で下り、坂道を下って家に着けるよう工夫しているのだそうです。坂道を意識するのは、何も芸能界に限ったことではなさそうです。

4月12日(火) 川俣高等学校長

生徒の皆さんは、周囲にある物を大切にしているでしょうか。現在のように物に溢れる時代とは異なり、かつて物がなかった頃には、使い古したものを再度加工して使用するのは当たり前で、物に対する意識は相当に高かったと思います。人がそうであるように、物にも命があります。諸行無常という言葉が表すように、物にはすべて命が宿っており、だから変化もします。人と同様に物に対しても、感謝の気持ちや謙虚な心を持って接してみませんか。

4月11日(月) 川俣高等学校長

言葉は戻る

自分の感情の苛立ちから、周囲の人に強い言葉をぶつけてしまう経験は誰にでもあると思います。そうした言葉を発してから後悔することもまた、多くあります。でも、いったん発せられた言葉を消すことは、なかなか難しいものです。そして、自分の後悔にとどまることなく、言葉はそのまま自分に戻ってきます。周囲の人に不快感を与えれば、自分に不快感が戻ってきます。言葉を発する前に自分の心を正す冷静さを持ち、言葉を発した後の行動には責任を持つ、このことを念頭に過ごしたいと常に思っています。

4月8日(金) 川俣高等学校長

便利の裏側

ホノルルのタクシー運転手の間では、タクシーを利用する日本人観光客のことがよく話されるそうです。ホノルルのタクシーの場合、ドアは手動で開閉するため、降りた後で利用客がドアを閉めることになっていますが、自動ドアに慣れている日本人は開けたまま立ち去ってしまうため、運転手がその都度、ドアを閉めに外に出るのだそうです。文化の違い、と言ってしまえばそれまでですが、こうした自動ドアは、人の精神にも影響を及ぼす、と指摘する文化人類学者もいます。押し開き型のドアが多かった以前には、向こう側にいる人を押しのけることのないよう、自然に注意を払うなどしていたものです。また、ドアを通り抜けた後には、次の人のために、手でドアを押さえるなどして待つ心遣いもありましたが、こうした「後姿のモラル」とも言える気持ちや行為は、自動ドアでは必要としないため、人の心に何かしらの影響を与える、という指摘です。生徒の皆さんも、生活の中で少しだけ、自分の周囲の存在に意識を向け、心配りをしてみませんか。

4月7日(木) 川俣高等学校長

新たな学び

新年度は、人との新たな出会いのときです。またこの時期は、人から教わったりすることも、人に教えたりすることも多くあります。そして、こうした営みをとおして、自分の考えや人生観など、自らの進む道を再認識する機会でもあります。自分の道を真っすぐに進むことは人生の基本です。そのためにも、イギリスの哲学者ベーコンがいうように、「書を読むことは充実した人を作り、議論をかわすことは覚悟のできた人を作る。」という考えを念頭に置く必要がありそうです。これは、「玉 磨かざれば器を成さず、人 学ばざれば道を知らず。」という考えにも通じます。

4月6日(水) 川俣高等学校長

出口の発想

昔のデパートには1階にトイレがなく、2階以上に設置されていることが多くありました。これは、デパートはお客様に物を提供するところである、という考えの下、使用頻度の高かったトイレの位置をあまり考慮しなかったことによるものと言われています。ちなみに、1階にトイレを設置してみると、多くの客が店に足を運ぶようになり、トイレが人集めの財産であったことがわかりました。昔の東京駅も、必要性の高いトイレについては考えることなく、人を乗せたり降ろしたりする、いわば本来業務を優先して拡張を図ったことにより、トイレの位置がわかりづらくなり、特に外国人の旅行客には不評だったそうです。デパートでいう物を提供することや、駅でいう人の乗り降りなど、本来業務を「入口」とするのであれば、本来業務に付随して存在するトイレは「出口」となります。でも、建築においてもそうであるし、また、文化においても、この「出口」から発想を展開することは重要です。夏に涼しい風を欲するのであれば、まずは木陰を作ってくれる木を植える、また、良き友人を得たいと思うのであれば、まずは心豊かになるためにも本を読む、など、生徒の皆さんも、日常生活の中に、出口の発想を多く取り入れてみませんか。

4月5日(火) 川俣高等学校長

不 安

人は他者からの評価を気にする生物です。いい評価を得た場合には取組の励みにもなりますが、逆の場合には、特に気持ちの落ち込みが大きくなり、モチベーションにも影響が及ぶなど、結果として不安も増します。でも、自然科学には動的平衡という言葉があります。常に動いている(評価の幅が大きい)のに、平均すると平衡状態にある、というこの現象と、日々の取組は類似しています。他者からの評価によっては誰もが感じる不安、その不安を楽しむくらいの気持ちを少しだけでも持てれば、毎日学ぶことで、多くの知識を手に入れることができます。学びから知識を得る、楽しい学問の旅を体験できます。

4月1日(金) 川俣高等学校長