令和4年度

2024年2月の記事一覧

人の叡智

後に京都大学総長になられる松本紘氏は、1970年代に、太陽電池を宇宙に打ち上げて電力確保を図ろうと考えました。長さ20キロメートル、幅5キロメートル程の太陽電池で、一千万キロワットの電力が得られる計算になるそうです。宇宙には降雨もなく夜もないことから、24時間のフル発電ができ、電気をマイクロ波に変えて地球に送ることで、各家庭でも利用可能となります。同時期にアメリカでも太陽発電衛星を打ち上げる計画を持っていました。一千万キロワットの発電衛星60基でアメリカ全土の電力を賄える計算となり、かなり本気の取組をしたそうですが、発電衛星は一基一千億円ほどもかかる高額であるために断念したそうです。でも、エネルギー問題も地球環境問題も深刻な現在、私たちの持つ叡智や様々な経験を結集して、地球規模で考える時期にきていることは確かです。

2月6日(火) 川俣高等学校長

トマト

現在の長崎県西海市大島町は、かつては炭鉱と造船の町でしたが、閉山やオイルショックの影響により、自然を活かした観光の町に生まれ変わります。そして、町を訪れた方々のお土産も必要と考え、町の持っていたバイオ技術を駆使してトマトの栽培を検討し、アンデス原産のトマトが甘くて美味しいという情報の下、その栽培に着手し始めます。その栽培方法は、トマトにとっては過酷とも思えるものです。水を断つためにビニールハウスの中で育てられ、与えられるのはわずかな有機肥料のみです。土が乾きヒビも入る状態ともなると、トマトの茎は細くなり、葉は枯れたようになります。せめて空中の水分を摂取しようとするかのように細い毛が生えてくるのを目の当たりにして、栽培に関わった方々の中には涙を流す人もいたと聞きます。ただただ枯れていくのを見ているだけではないのか、という不安も生じた頃、トマトの実が色づき始めたそうです。不安は歓喜に変わります。通常5度程度の糖度が12度程度あるといいますから、その甘さに再度の歓喜を覚えることとなりました。住む町への思いの下、そして自ら育てるトマトへの思いの下、皆で協力してトマトに改良を重ねることで、今でも町を支える産業となっています。

2月5日(月) 川俣高等学校長

心構え

生徒の皆さんは、自らの心構えとする言葉を決めているでしょうか。60年程前に、「気心腹己人」という看板を入口に掲げていたバス会社があったそうです。でも、その表記は独特です。気は縦に長く書かれており、心という漢字は丸みを帯びています。腹は横向き、己はかなり小さく、一方で人は大きく書かれています。これを、「気は長く 心は丸く 腹立てず 己は小さく 人は大きく」と読むのだそうです。バスの運航は人の命を預かる大切な仕事なので、ハンドルを握る者として平常心を忘れることなく、また、バスの中で少しでも、お客様に快適にお過ごしいただきたい、との思いを込めた表現なのだそうです。この心構え、あらゆる場面で使えそうです。

2月1日(木) 川俣高等学校長