令和4年度

トマト

現在の長崎県西海市大島町は、かつては炭鉱と造船の町でしたが、閉山やオイルショックの影響により、自然を活かした観光の町に生まれ変わります。そして、町を訪れた方々のお土産も必要と考え、町の持っていたバイオ技術を駆使してトマトの栽培を検討し、アンデス原産のトマトが甘くて美味しいという情報の下、その栽培に着手し始めます。その栽培方法は、トマトにとっては過酷とも思えるものです。水を断つためにビニールハウスの中で育てられ、与えられるのはわずかな有機肥料のみです。土が乾きヒビも入る状態ともなると、トマトの茎は細くなり、葉は枯れたようになります。せめて空中の水分を摂取しようとするかのように細い毛が生えてくるのを目の当たりにして、栽培に関わった方々の中には涙を流す人もいたと聞きます。ただただ枯れていくのを見ているだけではないのか、という不安も生じた頃、トマトの実が色づき始めたそうです。不安は歓喜に変わります。通常5度程度の糖度が12度程度あるといいますから、その甘さに再度の歓喜を覚えることとなりました。住む町への思いの下、そして自ら育てるトマトへの思いの下、皆で協力してトマトに改良を重ねることで、今でも町を支える産業となっています。

2月5日(月) 川俣高等学校長