令和4年度

2024年2月の記事一覧

代名詞

200年程前の江戸時代から浅草寺参詣のお土産として知られる雷おこしは、その固さで有名です。でも中には、柔らかさを求める人もいたことを受け、改良に取り組むこととなります。水あめを増量することで固く甘くなることから、コーンスターチや小麦粉などを混ぜることで歯触りを柔らかくするなど工夫を施し、一層幅広い方々に好まれるようになりました。雷おこしは固いものという概念を覆す勇気、人の声に耳を傾ける柔軟な姿勢などがもたらす成果です。ちなみに、雷おこしという名は、浅草寺総門が雷門と呼ばれていることことを受け、雷除けとして売り出されたとも言われています。徐々に、家を興し名を興す縁起のいいもの、という地位を築くこととなりました。でも、その固さを求めた江戸っ子が現代にやって来て、柔らかい雷おこしを口にしたら、お気に召すかどうかはわかりません。

2月14日(水) 川俣高等学校長

モノに溢れる

「皆が持っているから」を口癖に、小さな子どもは、よくモノを欲しがる傾向にあります。そして、現代はモノに溢れており、買おうと思えばすぐにでも手に入る時代です。でも、一つのモノを与えると、次には別のモノを欲しがるようにその行為にはキリがない、と嘆く保護者の方の声もよく耳にします。それを家庭内消費の悪循環と称する人もいます。一方で、モノに溢れる生活を見直すために、あえて限られたものしかない生活を体験させようと考える方もいます。自然に囲まれた場所で、家族で数日間生活を送ることで、何が必要か、何がそうでもないか、について、じっくりと考えるのだそうです。『人々が手に入れるために躍起になって奔走するもの、そうしたものは、彼らに何ら幸福をもたらさない。心の平安は、いたずらなる欲望の充足によって生じるものではなく、反対にそうした欲望の棄却によって生じるものである。』と、トルストイも『文読む月日』の中で述べています。

2月13日(火) 川俣高等学校長

ヤドカリ

甲殻類に属するヤドカリは、その名のとおり巻貝を借りて自分の住処にしています。生まれたばかりの頃には家を持たずに海中を漂っていますが、しばらくすると、空になった巻貝を探し始めます。適当な住処を見つけると、奥行や幅を調べたり、ハサミを使って中を掃除したりするそうですから、まさに人と行動が似ています。成長期には身体が飛躍的に大きくなるため頻繁に住処を変える必要があり、よって、適当な大きさの巻貝をめぐり、時にシェル・ファイティングと呼ばれる仲間同士のイザコザも生じるそうです。でも、住んでいる間は愛着を感じるのか、一時も離れようとしません。進路により生活環境が変化する3年生の皆さん、自分の家や故郷を思う気持ち、いつまでも大切に持ち続けてください。

2月9日(金) 川俣高等学校長

今を生きる

時間がない、やる気がでない等の理由により、自己実現の機会を先延ばしにする人がいます。生徒の皆さんはどうでしょうか。でも、明日になれば、時間ができる、やる気が起きる保証はありません。いつやるか、それは今です。明日を知らない私たちができること、それは、今という時を今いる場所で全力を傾けて生きることです。吉田兼好も『徒然草』の中で、『もし人来りて、我が命、明日は必ず失はるべしと告げ知らせたらんに、今日の暮るる間、何事を頼み、何事をか営まん。我等が生ける今日の日、何ぞその時節に異ならん』と書いています。

2月8日(木) 川俣高等学校長

歓迎の仕方

かつて、日本では引越しをすると、近所に住む方々にちょっとした品物を届けながら挨拶をする習慣がありました。一方で海外には、近所の方々が引っ越してきた方のところに行って、ギフトを届ける地域があるのだそうです。そして、そうしたギフトを運ぶワゴンのことをウエルカム・ワゴンと呼びます。日本に長く住む外国の方には、特に海外から日本に来て生活を始める外国の方の不安な気持ちがよくわかります。そこで、日本でもこのウエルカム・ワゴンを実施しよう、と思いついた方がいたそうです。加えて、そこに日本文化を取り入れて、ワゴンの代わりに風呂敷に包んでギフトを送ったといいますから、発想が豊かです。主な目的は、相談相手がいることで少しでも不安が和らげば、との思いから始めた行動ですが、その輪はあっという間に広がりを見せ、多くの企業もその活動を支援するようになりました。まさに優しさの輪に満ちた取組です。ちなみにこの活動のことを、ウエルカム・ワゴンにちなんで、日本ではWELCOME FUROSHIKIと呼んだそうです。

2月7日(水) 川俣高等学校長