令和4年度

2023年1月の記事一覧

読書三余

生徒の皆さんは、「読書百遍、意おのずから通ず」という言葉を聞いたことはありますか。中国の董遇という学者が弟子に教えたもので、同じ本を百遍読めばその真意がわかる、と説いたものです。そんな時間は作れない、と悲鳴をあげた弟子に対して、彼は、「まさに、三余をもってすべし。」と続けます。三余とは、冬、夜、雨を指し、このときであれば、読書の時間を確保できると諭したのです。そういえば、勝海舟にも似たようなことがありました。店頭にあったオランダの兵書が欲しくなった勝海舟は、お金を工面して買いに行くと、その本は売れてしまっていたそうです。買い主を探し出し、自分に売ってもらえるよう話をしますが、買い主は頑として首を縦にはふりません。それでも勝海舟は粘り、その買い主に、「あなたがお読みになる間はその本がご入用でしょうが、就寝後の時間であればその本はお空きであろう。その空いている時間だけ借覧させてはもらえぬか。」と提案します。これはまさに、三余をもってすべし、です。結果として、勝海舟は自宅から四谷大番町にある買い主の自宅まで一里半(6キロ)の道のりを毎日通い、午後10時から午前6時まで、本の内容を写し取る作業を続けたそうです。その期間は半年。学びへの執念を感じる逸話です。

1月6日(金) 川俣高等学校長

砂には、砂丘など大きな存在から、石川啄木の「一握りの砂」から感じる身近なものなど、様々なイメージがあります。その砂丘も、動と静、荒々しさと優しさなど、相反するイメージを持っています。また、砂浜に立つと、人は波の音を聞きながら、指で思い思いの絵を描いたり、手で作品を作ったりします。砂の上では、皆が芸術家です。砂を知るには、豊かな創造力と思考力を要するようです。小学校や公園にある砂場もそうです。哲学者の中村雄二郎氏は、「子どもの頃に誰でも経験のある砂場の遊びには、生の自然にじかに触れる愉しみと手ごたえがある。触覚によるこの手ごたえは、一見なんでもないことのように見えるが、私たち人間が自分の生命感覚を確かめる原点でもある。」と話しています。若い頃に培われた感性は、人生を豊かにしてくれます。

1月4日(水) 川俣高等学校長