令和4年度

2022年11月の記事一覧

話す

話の中で、「ていうか」という表現をよく耳にします。「というよりはむしろ・・じゃないか」という本来の使われ方から離れて、今では一般的に、話題の転換を図る際に使われているようです。また、「でも」という言葉は、相手の話を一応は否定しながら、相反することを話す際に使われるはずですが、「でも」の後で、逆説ではない内容が展開されることも多くあります。加えて、「アイドルなら、私は〇〇が好きです。」に対して、「でも、アイドルと言えば▢▢じゃないですか。」と切り返されると、否定を受けたようにも感じられますね。この場合は、「でも」を使うことなく、「そうですね。私は▢▢も好きです。」と返せば、意図は十分に伝わります。日本語は意思表示を曖昧にしたまま、ニュアンスで伝えることのできる言語とも言われています。であるからこそ、その使い方については、もう一度気をつける必要もありそうです。

11月11日(金) 川俣高等学校長

きしん

孔子の弟子である子貢が、井戸から水を汲み、瓶(かめ)に入れて何度も畑まで運ぶ老人に出会ったそうです。はねつるべなどの機械を使えば、わずかな労力で簡単に水を汲める、と忠告すると、その老人は、「機械を持っていると、機械を使う仕事(機事 きじ)が増える。機械に頼る気持ち(機心 きしん)も生まれて、自分はきっと、ますます機械に頼るようになる。そうなったら、私の心はどこに残るのだろうか。」と答えたそうです。「機事ある者は、必ず機心あり」という言葉が生まれました。チャップリンの映画「モダン・タイムス」にも、全てが機械化されていく現代文明に対する風刺が描かれていました。人の歴史は常に機械の発明や発展とともにあります。人類史を織りなしてきたもの、その一つは道具や機械です。身を守るため、生活を守るため、人は機械を作り出した一方で、機心がふくらむことで更なる労働要求がなされ、生活を一層忙しく感じるようになった一面もある、との指摘もなされています。ただ環境に流されることなく、人が本来携える精神を忘れずに意識しながら生きる必要性が高まっています。

11月10日(木) 川俣高等学校長

吹き出し

漫画に見られる吹き出しは、なぜあるのでしょうか。登場人物が話す内容を線で区切ることで、見やすくして読者に伝える側面はあります。でも、一見すると、それはまるで人の吐息のようでもあります。息を吐くことは、生物にとってとても大切なことです。緊張することを「息が詰まる」と表現するように、息が詰まったらリラックスはできません。無意識のうちに息を吸うことはできても、大きく息を吐くには敢えて意識する必要がある、そのくらい吐息は重要です。漫画の世界では、吹き出しによる、息を吐く場面ばかりがあります。漫画を読んで心がリラックスできるのは、登場人物の吐息を感じて、私たち読者も大きく息を吐いているからかもしれませんね。

11月7日(月) 川俣高等学校長

日本では古来より、丁寧に次への準備を進め、1回にすべてをかけて取り組む、との信念の下、行動する一面を持っていました。一度、墨(黒)を塗ったら元の場所へは戻ってはならない、とのこうした感覚を、原研哉氏は本の中で、「日本人の有する白」と表現しています。弓道の世界にある、1本目で当てることを意識しているからこそ、2本目の矢は持たない、といった習慣もまた、一期一会、1回にすべてをかけるという、覚悟にも似た価値観の表れです。全神経を集中し、全力で立ち向かう必要のある、こうした白の瞬間は、日常生活の中にも訪れます。生徒の皆さんは、今日、こうした白の場面に、何度遭遇しましたか。

11月4日(金) 川俣高等学校長

実 行

生徒の皆さんは物事に取り組む前に、失敗しないよう、必要以上に時間をかけてはいませんか。実行して失敗したら、すぐにまた実行する、というサイクルを速く回せることこそ、真の成功を収める近道とされています。失敗したとしても、即座に原因を追究し、改善を施す姿勢が大切です。「失敗したからといって、クヨクヨしている暇はない。」と、本田宗一郎氏も話しています。

11月2日(水) 川俣高等学校長