令和4年度

校長より

知 る

現在、私たちの周囲には多くの情報が飛び交っており、知ろうとすればすぐにでも、スマホなどをとおして一定の知識を得ることができるようになりました。以前は図書館に行って、多くの書物の中から目的に合ったものを探し出し、時間をかけて何かを調べるのが当たり前でしたが、今では、自分の部屋にいながらにして、瞬時に多くの情報が手に入ります。また、自分で考えたことを話していると思い込んでいると、実はそれは、テレビや新聞、書籍などからの情報であった事実に気づかされることも多々あります。こうした媒体から得た情報は大変貴重であり、そうした情報ツールは私たちの生活にはなくてはならぬものである一方で、間接体験、言い換えれば抽象的体験であるために、物事を本当の意味で知り、考えるために必要とされる直接体験の機会もまた大切である、とも言えます。論語には、「之れを知るを之れを知ると為し、知らざるを知らずと為せ。是れ知るなり。」という言葉があります。知っていることだけを知っているとし、知らぬことは知らないと認める姿勢を説いたものです。友の心に響くのは、その表現が多少ぎこちなくとも、自分で考えたり感じたりしたことを自分の言葉で語る、生徒の皆さんの中にある真の声、なのかもしれません。

12月16日(金) 川俣高等学校長

後 悔

生徒の皆さんは、自分の過去を振り返った際に自分の行動が間違っていたと感じ、後悔したことはありませんか。でも、過去の自分はその時に、全力を尽くして考え、努力し、行動していたはずです。仮に過去の自分が誤っていたとしても、誤った自分も自分である以上、そのことを含めて自己の全部を肯定し引き受ける必要があります。考えてみれば、成功か失敗かの要因は、無数にある因果関係や偶然の作用に支配されるなど、自分の他にある場合が多く見られます。できることはすべてやった、あとは天に任せる、くらいの気持ちを持つことも大切です。宮本武蔵「五輪書」にも、「我(われ)事(こと)に於(おい)て後悔せず」とあります。また、小林秀雄氏は、後悔を受け入れるようでは、人は本当の自己に出会うことはできぬ、と述べています。

12月14日(水) 川俣高等学校長

インスピレーション

有名な物理学者アインシュタイン博士は、極めて温厚な性格で知られています。「相対性理論を発見したきっかけは、瓦職人が偶然に屋根から転がり落ちるのを見て思いつかれた、と聞いています。」と話しかけられた彼は、いつもとは異なり厳しい表情をして、「世間では、ニュートンが、落ちるリンゴを見て万有引力を発見した、とされていますが、とんでもないことです。ただものを見ただけでは、何の発見もできません。様々な実験や思考を重ねて、常に心に引力という存在を置いていたからこそ、ニュートンには、リンゴの落ちる事象からインスピレーションが湧いたのです。相当の苦心や努力の下に、インスピレーションは与えられます。」と話します。同様に、アインシュタイン博士は、激しく心を揺さぶる、今まで見えなかった道を明るく照らし出してくれる一瞬のひらめき、不意に心の中に生まれるそのインスピレーションの99%は努力で成り立っている、とも話しています。

12月13日(火) 川俣高等学校長

前頭前野

人の脳には、分析的思考や客観的思考を行う前頭前野という部分があります。日常的に、そうした思考を行う習慣を身に付けていれば、前頭前野は鍛えられ、衰えを抑制することが期待できます。では、どうすれば、前頭前野を鍛えることができるのでしょうか。専門家の中には、客観的に自分を見るよう心がけること、そして、いつも予定がいっぱいで忙しく過ごすよりも、自分の言動等を振り返る余裕を持つこと、を挙げる人もいます。具体的には、いつもとは違う道順で登校したり、いつものメニューやいつものお店を変えてみたりするなど、慣れていることを一旦やめて新しい体験をすると良いそうです。このように、前頭前野を鍛えるには、前頭前野を刺激する頻度を上げることが大切とされています。

12月12日(月) 川俣高等学校長

成 果

何かを成し遂げようとするとき、その過程で必要とされることは何でしょうか。その人の持つ才能、という人もいます。でも、才能に恵まれたとされるゲーテほど、才にまかせてするのを戒め、努力と精神の集中の必要性を説いた人はいません。偉大な仕事を成し遂げようと欲するなら、心を集中しなければならない、と、彼はいたるところで話しています。そうして成し遂げるからこそ、苦労に満ちた努力も、喜びへと変わるのだと思います。高村光太郎氏も、才に頼り次から次へと手を出すこと以上に、むしろ鈍であれ、牡牛のごとくひたむきに押せ、ということを「牛」という詩にうたっています。それには、一定の時間を要するとは思います。でも、もしも仕事で一定の区切りを迎えて自らを顧みた際に、それまで取り組んできた自分は充実した時を過ごすことができた、と思えたら、相当に幸せです。そういえば、山口市にある中原中也氏の詩碑には、小林秀雄氏の字で、「あぁ、おまへ(お前)はなにをして来(き)たのだと・・吹き来る風が私に云(い)う」と刻まれています。

12月9日(金) 川俣高等学校長