令和4年度

校長より

実 行

生徒の皆さんは物事に取り組む前に、失敗しないよう、必要以上に時間をかけてはいませんか。実行して失敗したら、すぐにまた実行する、というサイクルを速く回せることこそ、真の成功を収める近道とされています。失敗したとしても、即座に原因を追究し、改善を施す姿勢が大切です。「失敗したからといって、クヨクヨしている暇はない。」と、本田宗一郎氏も話しています。

11月2日(水) 川俣高等学校長

不易流行という言葉があります。不易とは変わらないことを指すのに対して、流行とは流れ動く、つまり変化を意味します。朱子学の思想が主な時代に生きた松尾芭蕉が、変化を好むことも頷けます。彼は、俳諧の世界に、積極的に連句を取り入れます。連句は、何人かの仲間と膝を突き合わせながら、前の人がつけた句に次の句をつけて答えるものです。次の人は前の句に新たな解釈を与えるので、その句は、前の句とは全く異なる変化を遂げることになります。近代文学を孤独の文学と称する人がいます。いわば個の文学に対して、松尾芭蕉は皆で作り上げる座の文学を取り込んだとも言えます。「秋深き隣は何をする人ぞ」からも、孤独を通じて人とつながろうとする、彼の、そして人の持つ本質が窺えます。

11月1日(火) 川俣高等学校長

先読み

研究とは何か、と問われると、多くの研究者は、自分の持っている技術を意味するシーズ(種)と、社会が求めているニーズを線で結びつけること、と答えます。でもやっかいなことに、シーズもニーズも日々変化します。昨日まで不可能であったシーズが翌日には可能となることもあれば、社会のニーズであったものが、他社の製品開発により、一瞬のうちに不要となることもあります。いわば、動いているもの同士をどうやって結びつけるのか、ということに関わること、それが研究なのです。では、研究で大切にしなくてはならないことは何か。いずれはこうしたことも必要になるだろうとの予測の下、自分のシーズのレベルを磨き上げようとする志を持つことです。加えて、目の前のニーズを追いかけたとしても、時間の経過とともに、あるいは瞬く間にそこからなくなるのであれば、5年先、10年先を見通す先読みの力もまた、同様に大切な要素です。変化の激しい時代であるからこそ、先読みの重要性は一層増しています。

10月28日(金) 川俣高等学校長

課題解決

何らかの不具合が生じた際に、即時にその解決を図ることは重要です。でも、偏った考えや、力を入れ過ぎた状態で事に臨むと逆効果の場合もあります。赤の眼鏡をかけていれば、そこに赤色があっても見逃してしまうように、色眼鏡をとおしてものを見ようとすると、ものごとを素直に見ることができなくなります。また、自分が何とかしようとする強すぎる思いにより、一部のみ見て全体像を把握しようとしない傾向に陥る場合もあります。ものごとを一段異なる次元からじっくりと眺め、冷静さの下、対応することで、改善の可能性は大きく高まります。

10月27日(木) 川俣高等学校長

規格外

宇宙開発は、行ったこともない場所に向けて、動かしたこともないものを1回で完璧に動かすことを求められるなど、過酷なものです。すべて、予測と計算の下で行われる作業に従事していると、どうしても安全志向に陥るのだそうです。「はやぶさ」を打ち上げたとき、3つ搭載した、リアクションホイールという制御装置のうち、1台目が1年後に、2台目が2年後に壊れたそうです。残った3台目も、同時期に同じ設計で作られているため、同じ使い方をすれば近く壊れるだろうし、またそれは、「はやぶさ」をとおした調査研究を、一旦は終えなければならないことを意味する、と考えた宇宙航空開発機構の方々は、熟慮の末、飛行スピードを落とす提案をします。一方、製造メーカーなどからは、飛行スピードを落とすなど規格外のことは、かえって危険度を増す、との意見が出されます。慎重な検討により、同開発機構の提案通り、飛行スピードを落とすことで運用し、結果として、3台目のリアクションホイールは7年間も稼働し続けることとなります。安全志向から舵を切ったことによる、成功事例とされています。後に、このときの決断について問われた際に、「はやぶさ」を提案する10年程前に、当時取り組んでいた小惑星接近計画をNASAに先取りされたことへの意地も少なからずあった、と、同開発機構の関係者の方は話されていました。

10月26日(水) 川俣高等学校長