令和4年度

規格外

宇宙開発は、行ったこともない場所に向けて、動かしたこともないものを1回で完璧に動かすことを求められるなど、過酷なものです。すべて、予測と計算の下で行われる作業に従事していると、どうしても安全志向に陥るのだそうです。「はやぶさ」を打ち上げたとき、3つ搭載した、リアクションホイールという制御装置のうち、1台目が1年後に、2台目が2年後に壊れたそうです。残った3台目も、同時期に同じ設計で作られているため、同じ使い方をすれば近く壊れるだろうし、またそれは、「はやぶさ」をとおした調査研究を、一旦は終えなければならないことを意味する、と考えた宇宙航空開発機構の方々は、熟慮の末、飛行スピードを落とす提案をします。一方、製造メーカーなどからは、飛行スピードを落とすなど規格外のことは、かえって危険度を増す、との意見が出されます。慎重な検討により、同開発機構の提案通り、飛行スピードを落とすことで運用し、結果として、3台目のリアクションホイールは7年間も稼働し続けることとなります。安全志向から舵を切ったことによる、成功事例とされています。後に、このときの決断について問われた際に、「はやぶさ」を提案する10年程前に、当時取り組んでいた小惑星接近計画をNASAに先取りされたことへの意地も少なからずあった、と、同開発機構の関係者の方は話されていました。

10月26日(水) 川俣高等学校長