令和4年度

2022年4月の記事一覧

和よりも積

1957年から1年間、南極観測隊の越冬隊長として昭和基地で業務に関わった西堀栄三郎氏は、個性の強さを基準として11名の人選を行ったそうです。長期間にわたり寝食を共にするメンバーであれば、まずは個人よりも集団を優先するタイプを選びそうですが、西堀氏には一つの信念がありました。「同じ性格の人が一致団結しても、その力はせいぜい「和」の形でしか大きくならない。しかし、異なる性格の人が団結すれば「積」の形となり、その力が格段に大きくなるはずである。」。集団の在り方を考える上で、一つの参考になりそうです。

4月13日(水) 川俣高等学校長

長 崎

坂道の多いことで知られる長崎、そこに住む人は様々な取組や工夫をされているようです。たとえば、引越しのときに、坂道が急すぎるため車を横付けできない家がほとんどなので、横付けできる家の場合には、「車横付け可」が不動産屋さんのキャッチフレーズになっている地域もあるそうです。また、バスの定期券を購入するときには、決まった停留所間を往復分買うものですが、長崎の場合には、往復別々の区間、つまり片道ずつの定期券を買うのだそうです。朝の出勤の際には、自宅を出て坂道を下りて行けるバス停から乗り、帰宅するときには、自宅より高い場所にあるバス停で下り、坂道を下って家に着けるよう工夫しているのだそうです。坂道を意識するのは、何も芸能界に限ったことではなさそうです。

4月12日(火) 川俣高等学校長

生徒の皆さんは、周囲にある物を大切にしているでしょうか。現在のように物に溢れる時代とは異なり、かつて物がなかった頃には、使い古したものを再度加工して使用するのは当たり前で、物に対する意識は相当に高かったと思います。人がそうであるように、物にも命があります。諸行無常という言葉が表すように、物にはすべて命が宿っており、だから変化もします。人と同様に物に対しても、感謝の気持ちや謙虚な心を持って接してみませんか。

4月11日(月) 川俣高等学校長

言葉は戻る

自分の感情の苛立ちから、周囲の人に強い言葉をぶつけてしまう経験は誰にでもあると思います。そうした言葉を発してから後悔することもまた、多くあります。でも、いったん発せられた言葉を消すことは、なかなか難しいものです。そして、自分の後悔にとどまることなく、言葉はそのまま自分に戻ってきます。周囲の人に不快感を与えれば、自分に不快感が戻ってきます。言葉を発する前に自分の心を正す冷静さを持ち、言葉を発した後の行動には責任を持つ、このことを念頭に過ごしたいと常に思っています。

4月8日(金) 川俣高等学校長

便利の裏側

ホノルルのタクシー運転手の間では、タクシーを利用する日本人観光客のことがよく話されるそうです。ホノルルのタクシーの場合、ドアは手動で開閉するため、降りた後で利用客がドアを閉めることになっていますが、自動ドアに慣れている日本人は開けたまま立ち去ってしまうため、運転手がその都度、ドアを閉めに外に出るのだそうです。文化の違い、と言ってしまえばそれまでですが、こうした自動ドアは、人の精神にも影響を及ぼす、と指摘する文化人類学者もいます。押し開き型のドアが多かった以前には、向こう側にいる人を押しのけることのないよう、自然に注意を払うなどしていたものです。また、ドアを通り抜けた後には、次の人のために、手でドアを押さえるなどして待つ心遣いもありましたが、こうした「後姿のモラル」とも言える気持ちや行為は、自動ドアでは必要としないため、人の心に何かしらの影響を与える、という指摘です。生徒の皆さんも、生活の中で少しだけ、自分の周囲の存在に意識を向け、心配りをしてみませんか。

4月7日(木) 川俣高等学校長

新たな学び

新年度は、人との新たな出会いのときです。またこの時期は、人から教わったりすることも、人に教えたりすることも多くあります。そして、こうした営みをとおして、自分の考えや人生観など、自らの進む道を再認識する機会でもあります。自分の道を真っすぐに進むことは人生の基本です。そのためにも、イギリスの哲学者ベーコンがいうように、「書を読むことは充実した人を作り、議論をかわすことは覚悟のできた人を作る。」という考えを念頭に置く必要がありそうです。これは、「玉 磨かざれば器を成さず、人 学ばざれば道を知らず。」という考えにも通じます。

4月6日(水) 川俣高等学校長

出口の発想

昔のデパートには1階にトイレがなく、2階以上に設置されていることが多くありました。これは、デパートはお客様に物を提供するところである、という考えの下、使用頻度の高かったトイレの位置をあまり考慮しなかったことによるものと言われています。ちなみに、1階にトイレを設置してみると、多くの客が店に足を運ぶようになり、トイレが人集めの財産であったことがわかりました。昔の東京駅も、必要性の高いトイレについては考えることなく、人を乗せたり降ろしたりする、いわば本来業務を優先して拡張を図ったことにより、トイレの位置がわかりづらくなり、特に外国人の旅行客には不評だったそうです。デパートでいう物を提供することや、駅でいう人の乗り降りなど、本来業務を「入口」とするのであれば、本来業務に付随して存在するトイレは「出口」となります。でも、建築においてもそうであるし、また、文化においても、この「出口」から発想を展開することは重要です。夏に涼しい風を欲するのであれば、まずは木陰を作ってくれる木を植える、また、良き友人を得たいと思うのであれば、まずは心豊かになるためにも本を読む、など、生徒の皆さんも、日常生活の中に、出口の発想を多く取り入れてみませんか。

4月5日(火) 川俣高等学校長

不 安

人は他者からの評価を気にする生物です。いい評価を得た場合には取組の励みにもなりますが、逆の場合には、特に気持ちの落ち込みが大きくなり、モチベーションにも影響が及ぶなど、結果として不安も増します。でも、自然科学には動的平衡という言葉があります。常に動いている(評価の幅が大きい)のに、平均すると平衡状態にある、というこの現象と、日々の取組は類似しています。他者からの評価によっては誰もが感じる不安、その不安を楽しむくらいの気持ちを少しだけでも持てれば、毎日学ぶことで、多くの知識を手に入れることができます。学びから知識を得る、楽しい学問の旅を体験できます。

4月1日(金) 川俣高等学校長