令和4年度

見ぬ世の人

北ドイツの牧師の子として生まれたシュリーマンが、ミケーネの遺跡発掘などによりエーゲ文明の存在を世界史上に位置付けるきっかけとなったのは、父親から与えられた「子どものための世界歴史」という一冊の本でした。彼はこの本により、古代ギリシアの詩人ホメロスの詩に触れ、トロイが伝承や神話ではなく実在したものだったのではないか、と考えたのです。このように、一冊の本は、人の生き方をも左右するまでの影響力を持つことがあります。また、良書との出会いは良友との出会いにも通じます。吉田兼好は徒然草に、「ひとり灯のもとに、文をひろげて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなうなぐさむわざなる」と書いています。ここでいう文とは書物のこと、見ぬ世の人とは会ったことのない人を指すので、吉田兼好は、本を読むことで、出会ったことのない人と友人のように知り合うことができ、心がなぐさめられる、と言っています。読書は、知識を増やすだけではなく、友も増やしてくれます。

1月11日(水) 川俣高等学校長