令和4年度

汗と涙

高校時代に陸上部に所属していたこともあり、三村仁司氏は大手靴メーカーに就職します。一層走りやすい靴を求めて研究したいという希望を持っていたものの、配属されたのは研究室ではなく製造現場でした。靴の底に糊を打ってアッパーをつける作業を、文字通り、額に汗しながら行い、次から次へと流れてくる製品に多く触れているうちに、理屈ではなく、靴作りの基本が自分の体に徐々に染み込んでいくのがわかったそうです。はみ出した糊を削ぎ取り、中敷きを入れ、紐を通すなど仕上げの作業にも従事するようになる頃には、靴と自分の間に距離感は全くなくなり、靴は自分の体の一部であるがごとく感じるまでになったそうです。瀬古利彦選手のシューズの担当となった縁で、三村氏は、瀬古選手の師である中村清先生と知り合い、大きな影響を受けられます。中村先生の「若いときに流さかった汗は、老いてから涙になって返ってくる。」という言葉を受け、若いときに汗を流せば流すほど、後にその結果が表れて喜びとなる、と、常に自らを戒め、仕事に取り組まれたそうです。

11月15日(火) 川俣高等学校長