令和4年度

機 転

鷹狩に出かけた豊臣秀吉が近江の石田村に立ち寄り茶を所望すると、一人の少年が大きな碗に温めのお茶を用意します。2杯目は先ほどの半分の量をやや熱めに、また3杯目はかなり熱めにして小さな碗に入れて出したので、機転の利くその少年、石田三成を近習として召し抱えた、という逸話は有名です。でも、よく似た話が海外にもあることをご存じでしょうか。インドで狩りに出かけた王子が隣国の村に立ち寄り、足の汚れを落とすために水を依頼すると、末利(まつり)という少女が、太陽に当たり温かくなっている泉の表面の水を汲んで渡します。今度は顔を洗う水を依頼すると、泉の中ほどのややぬるめの水を、更に飲み水を所望すると、泉の最も深いところから汲んだ冷たい水を運んできたそうです。全くといっていいほど同じ逸話ですね。もしかすると、博識な石田三成は、インドのこの話を耳にしていたのかもしれません。あるいは、機転が利くという概念の捉え方が、日本とインド間では同じなのかもしれません。ちなみに、この類似した2つの話については、幸田露伴が指摘しています。

7月11日(火) 川俣高等学校長