令和4年度

漢 字

夏の話で恐縮ですが、「青嶺緑風の候」で始まる葉書をいただいたことがあります。普段は目にしたことのない表現でしたが、すぐに頭の中で、青々と連なる高い山々から吹き降ろす涼しく爽やかな風が、深々と生い茂った木々の間を吹き抜けていくイメージが浮かびました。漢字の持つ特性を十分に活かし切った表現である、と思うとともに、この言葉に触れることで、夏の暑さをも忘れるほどの清々しい思いをしたと記憶しています。私たちの使っている漢字は表意文字であるために、こうした気持ちを抱かせてくれるのだとも思います。返す返すも夏の話で恐縮ですが、同じ頃の季節でいえば、新涼という表現は、夏の暑さから解放され、ややひんやりとした大気を肌で感じる、そうした季節の変わり目を、私たちにそっと教えてくれます。また、俳句に使われる季語を集めた歳時記を開くと、日本語の持つ繊細なニュアンスの素晴らしさを知ることができます。漢字に対する認識を深めると、心もまた深まる気がします。

1月12日(木) 川俣高等学校長