令和4年度

趣 味

北海道函館に眼科を開院している方がいらっしゃいます。彼が若い頃、東京大学医学部に眼科医局員として入局する際に、同じく開業医をしていた父が、息子をよろしく、という意味を込めて、予め医局に手紙を送っていたそうです。そこには、自分の子どもを謙遜して使う愚息と同意の言葉、豚児が使われていたので、仲間は親しみを込めて、豚児来る、と黒板に書き、温かく迎え入れてくれたそうです。あだ名はトンジになりました。紹介を受けて結婚をされた相手の方が、あだ名にちなんで、最初のプレゼントとしてブロンズ製の豚を模(かたど)った貯金箱をお贈りになり、それがきっかけとなって、豚に関するコレクションを始めます。イギリスでは、紳士の国らしくネクタイを締めた置物、オランダでは素朴な麦わら細工、スペインでは革製の作品、イタリアではベネチアングラス製のものを購入するなど、今では1万を超えるまでになりました。しみじみと眺めると、それぞれに味がある、というのですから、趣味がもたらす幸福感は大きなものです。でも、これだけ多くのコレクションになっても、一番大切にしているもの、それは、お亡くなりになった奥様から、最初にいただいた貯金箱だそうです。

5月31日(水) 川俣高等学校長