令和4年度

一本の綱

セルバンテスの描くドン・キホーテは、風車を巨人と思い込み敢然と立ち向かいますが、風車の羽根木に飛ばされて大怪我をします。従者であるサンチェ・パンサがその無謀な行為を窘めると、彼は、「お前はなんて冒険心がないんだ。勝敗は時の運だ。」と切り返します。どう考えても風車に勝てるとは思えませんが、ドン・キホーテがここで話した冒険とは理想のことである、とする説があります。理想に向かって突き進むことに意義があり、その結果は問うものではない、と解釈すれば、確かにドン・キホーテの行動は頷けます。今いる現実の世界から、前に広がる理想の世界を繋ぐ一本の綱、そして、後ろにも後退を意味する世界があるとすれば、生徒の皆さんはどうしますか。いつまでも、ここに立ち続けますか。それとも、その綱を通って歩みを前に進めますか。現実を理想の世界にまで高めることができるのは、自分しかありません。

10月31日(火) 川俣高等学校長