令和4年度

蛍光灯の紐

企業本社ともなれば、社内に限らず社外からも多くの人が出入りするので、どの場所も明るくしておくのが普通です。でも、かつて、社員一人ひとりの机を照らすために、敢えて天井から各人用の蛍光灯の紐を垂らして、電気のオンオフをしていた会社がありました。社員は、席を離れるときには自分用の蛍光灯の紐を引き電気を消します。トイレにも紐が用意されています。1フロアに300を超える人が仕事をしており、フロアは複数ありますから、全体では3千本程度の紐が天井から下がっていたことになります。特に新入社員の中には、見栄えがあまりよくないと感じていた人も多くいたと聞きます。こまめに電気を消すことで年間数百万の経費削減を図ることを第一の目的としているものの、そこにはもう一つの重要な理由がある、と代表取締役社長は話されています。それは、会社の扱うお金は、百円、二百円の買い物をしてくださったお客様から預かった大切なものなので、1円たりとて無駄にはできない、という商人気質を忘れないため、なのだそうです。社員は自分の蛍光灯の紐を引くたびに原点である商人気質を思い出し、その精神を胸に刻むのだそうです。

11月22日(水)