令和4年度

右手左手

車の組立てには多くロボットが使われます。今でもそうかもしれませんが、コンベアの上を車のボディが流れてくると、左右に配置されたロボットから長い腕が伸びて溶接をします。ある会社では、溶接ロボットのケーブルが切れる事案が多く発生しました。ケーブル交換のためにはラインを止める必要があり、生産計画にも大きな影響が出ます。左右対称になるだけで腕の動きは全く同じなのに、左側のロボットの断線が多い理由も当初はわかりませんでした。ある社員が自宅の風呂に入りタオルを絞った際に、自分の腕の筋肉の動きに注目したそうです。会社に戻り並んだロボットの表面カバーを取ってみると、すべてのケーブルは右巻きになっていることを確認します。右側に並んだロボットは右巻きのケーブルを絞る方向に動くため、ケーブルに無理がかかりません。一方で、左側のロボットは正反対の方向に腕を振るため、ケーブルに大きな負荷が加わり、早い断線に繋がったようです。左側設置のロボットはケーブルを左巻きにすることで断線事故は大幅に減少し、生産ラインが止まることもなくなりました。生活をする上でも、ものの形状を知ることは大切です。加えて、どんな分野においても、課題解決のヒントの多くは、現場を離れた意外な場所に潜んでいます。

6月26日(月) 川俣高等学校長