令和4年度

生きる、そして生かされる

生徒の皆さんは、エッセイストの大石邦子さんをご存じでしょうか。彼女が半身不随となり、病室で2度目の春を迎えたときのことです。会津若松の鶴ヶ城に咲く3千本のソメイヨシノを見ているうちに、急に大きな孤独感がこみ上げてきて、大石さんは大声をあげ、手当たり次第に物を投げつけ始めたそうです。疲れ果てて物を投げる気力がなくなったとき、駆け付けていた看護師さんは、「ちょっと桜を見てこようか。」と、そっと優しく声をかけ、大石さんに背中を向け、大石さんをおんぶして外に出たそうです。看護師さんの背中の温かみが伝わると、麻痺した体が溶けていくように感じた、と、後に大石さんは話されています。そしてそのとき、両親や親戚、友人など多くの方々の顔が浮かんだそうです。何と多くの人に支えられて自分は生きているのか、このことが大石さんに力を与えます。生きることは、周囲の方々に生かされることと同意だ、とも感じたそうです。多くの命の絆に結ばれて、生き、そして生かされる。生徒の皆さんも、そうしたことを感じる瞬間があるかもしれません。

3月7日(月) 川俣高等学校長