令和4年度

先入観

『舞姫』や『雁』の作者で知られる森鴎外は医者でもあり、3年間ドイツに留学するなどして、医学に関する見識を深めました。そうした彼の一つの研究課題が脚気でした。ビタミンB1 摂取により、その予防を図れることは後にわかりますが、当時の日本では、積極的にはその摂取を行ってはいなかったようです。加えて、彼が留学したドイツでは、脚気の原因は細菌による感染との理論が強く、森鴎外自身もそう思っていたようです。徐々にビタミンB1 を含む麦飯や米糖の効果がささやかれるようになっても、彼の手元に届くのは、細菌による感染を示す資料ばかりであった、とのことです。多くの功績を残した森鴎外であっても、先入観は真実を見えにくくする一面があります。私たちもそうです。一度信じたことを変えるには大きなエネルギーを要します。であればこそ、ものごとを客観的に見て判断する柔軟性は重要です。

1月19日(木) 川俣高等学校長