令和4年度

「見わたせば花も紅葉もなかりけり 浦のとまやのあきのゆふ暮」これは歌人藤原定家の作品です。辺りを眺めると、花も紅葉もなく、漁師の小屋があるだけの秋の海辺の夕暮れである、といった、秋の風情を素直に歌ったものです。でも、なぜか、侘しさを伴った感情がわいてきます。秋に対する私たちの捉え方には、華美と反する寂寥、華やぎと反するわびやさび、といったものが根底にあるのかもしれません。藤原定家のこの歌は、素直な描写であるがゆえに、様々な捉え方もできます。日本文学の底深い魅力漂う作品に、少しでも多く触れてみたいと感じさせられます。

9月25日(月) 川俣高等学校長