令和4年度

褒める

小学校になっても学習に目を向けない我が子を思い、母親は担任の先生に相談します。するとその先生は、家に伺って勉強を見る約束をしてくれました。その少年の家を訪問する先生への感謝の気持ちを込めて、母親は毎回夕食として、メザシとニンジンの煮つけ、ホウレンソウのおひたしを出したそうです。先生から過剰なまでに褒められることで楽しくなり、学習習慣が定着するとともに、いつも美味しそうに食べる先生の様子を見て、その少年も、苦手としていたメザシやニンジン、ホウレンソウを食べることができるようになります。その少年の名は松平康隆さんといいます。身体の弱かった松平さんは、心の中で自分を自分で褒めることでバレーボールに継続して取り組み、大学日本一にもなりました。全日本男子チームの監督に就任すると、1972年ミュンヘンオリンピックで金メダルを獲得します。自分も褒められて成長した、選手のことも褒めに褒めて才能を伸ばすことを心がけた、そう語ったのは、還暦を過ぎた頃に受けた取材の時でした。金メダルを獲得し帰国した松平さんに、小学校時の担任の先生、高橋泰四郎先生から連絡が入ります。松平さんが、当時美味しそうにメザシを食べていた先生の姿が忘れられない旨、話をすると、高橋先生は、山奥出身のためメザシを見るのも食べるのも初めてで、どちらかといえば苦手ではあったものの、我が子の偏食を直したいという母親の意をくんで食べていた、と話されたそうです。指導者が見せる姿には、かなりの奥の深さがあります。

5月18日(木) 川俣高等学校長