令和4年度

校長より

邪 念

札幌市資料館入口に、右手には秤を、左手には剣を持った法の女神像が設置されています。そして、正義の象徴として飾られたこの女神像は、目隠しをしています。もともとはギリシャ神話やローマ神話に登場した女神を表したとされるこの像は、欧米にも似たようなものがあるそうですが、目隠しをしている像もある一方で、していない像も存在します。目隠しは、余分なものを見ることなく心の眼で裁く、という信念を表現しているとも言われています。そういえば、江戸時代の京都所司代であった板倉重宗氏は、障子を隔てて人の訴えを聞いたそうです。人の顔を見てしまうと、つい、ひいきの感情が芽生えることもあるため、それを避ける手段だそうです。目以上に心眼は、深く広いところまで見通すことができます。

6月1日(木) 川俣高等学校長

趣 味

北海道函館に眼科を開院している方がいらっしゃいます。彼が若い頃、東京大学医学部に眼科医局員として入局する際に、同じく開業医をしていた父が、息子をよろしく、という意味を込めて、予め医局に手紙を送っていたそうです。そこには、自分の子どもを謙遜して使う愚息と同意の言葉、豚児が使われていたので、仲間は親しみを込めて、豚児来る、と黒板に書き、温かく迎え入れてくれたそうです。あだ名はトンジになりました。紹介を受けて結婚をされた相手の方が、あだ名にちなんで、最初のプレゼントとしてブロンズ製の豚を模(かたど)った貯金箱をお贈りになり、それがきっかけとなって、豚に関するコレクションを始めます。イギリスでは、紳士の国らしくネクタイを締めた置物、オランダでは素朴な麦わら細工、スペインでは革製の作品、イタリアではベネチアングラス製のものを購入するなど、今では1万を超えるまでになりました。しみじみと眺めると、それぞれに味がある、というのですから、趣味がもたらす幸福感は大きなものです。でも、これだけ多くのコレクションになっても、一番大切にしているもの、それは、お亡くなりになった奥様から、最初にいただいた貯金箱だそうです。

5月31日(水) 川俣高等学校長

背 景

香りの漂う空間は居心地の良いものです。香りには気分をリフレッシュさせてくれる一定の効果があり、加えて集中力が高まるとも言われています。小さく音楽を流すバックグラウンド・ミュージック(BGM)に対して、バックグラウンド・フレグランス(BGF)と呼ぶこともあるようです。企業によっては、出勤時には気分をスッキリとさせるシトラス系、勤務中には集中力を増すと言われるフローラル系、退勤時間頃には疲れを癒すと言われるウッディ系など、香りの使い分けをしているところもあるとも聞いています。大学の研究により、香りの中でパソコンを打つ作業をしたところ、打てる文字数は14%増加し、一方で、エラーは21%減少したとの報告もあるから驚きです。香りと上手に付き合うのも楽しそうです。

5月30日(火) 川俣高等学校長

当事者意識

歴史を学習する上で大切なこと、それは、その時代をよく知りたいと思うことだそうです。そして、現在放送中の大河ドラマのタイトルにもあるように、その時代に居合わせたとすれば、どうする自分、と考えることも大切なことの一つだそうです。教科書に、モールス信号が発明された、と書かれていたとします。そうなんだ、としか思わないとすれば、それまでですが、その時代は情報を届ける手段が手紙中心であったことを考えると、その発明が日常生活にもたらす劇的な変化を感じ取ることができます。もしかすると、現代に生きる私たちには計り知れない価値を、その時代の人は感じたことと思います。自分がその時代に生きていたらどうするか、この歴史の当事者意識については、かつて大学入試にも出題されたことがあるほど、興味深いテーマです。

5月29日(月) 川俣高等学校長

今の自分

人は、過去を考えると後悔します。未来を考えると不安になります。人は今にフォーカスを当てるようできているようです。でも、今の自分が、他者の顔色をうかがったり、他者比較ばかりするなど、他者の人生を歩むような姿勢を持つことを、最もしてはいけないこととアルフレッド・アドラーは指摘しています。では、どう生きればよいのか。自分の意見や考えを適切にアウトプットできることが大切です。普段から、考える時間と相談相手を見つけるとともに、場面に応じてメモを取るためのノートを持ち歩くことを勧める人も多くいます。一日で劇的な変化は生じませんが、小さくとも、やれることを必ずやることの積み上げは、徐々に正の変化をもたらします。間違いなく、他者のそれではなく、自分の人生を歩むことができます。

5月26日(金) 川俣高等学校長