令和4年度

校長より

心の扉

新しい環境に身を置くと、どうしても不安が付きまといます。入社して3か月も経ったのに、まだ人間関係をうまく築けていないと感じている新社会人の方もいるかもしれませんが、信頼関係の構築(ラポール形成)には、3か月からそれ以上の月日を要すると言われています。でも、少しでも早く周囲の方々との関係を築きたいとすれば、自己開示を行うことが効果的とされています。自分のことを相手に話す自己開示をとおして、相手は少しずつ心を開いてくれます。複数回会うことも、心が通じ合う段階を飛躍的に向上させてくれます。これを自己開示の返報性の法則といいます。でも、注意してほしいことは、心を開くことを、相手にだけ求めることはできないということです。心の扉のノブは内側にしか付いていません。人は、相手の扉を開けることはできません。自らの心の扉を開く意識を持つことで、良好な人間関係を築くことができます。

7月4日(火) 川俣高等学校長

道を求める

幸福を求めるのは人として当然のことです。でも、周囲を見渡しても、どこにも幸福は落ちてはいません。幸福とは、そこにあるものではなく、幸福にするものだからです。一方で、幸福になるために、遠くに道を求める人もいます。でも、意外に近いところに幸福になるきっかけはあります。以前に本投稿において、メーテルリンク著『青い鳥』のお話をしたことがあります。青い鳥(幸福)を探して森を駆け巡り、結果として、その青い鳥は自分の家のカゴの中にいた、という童話です。生徒の皆さんが抱える悩みを解決する術はずっと身近にあります。また、悩みを相談する人もずっと身近にいます。孟子も、道は近きにあり、却(かえ)って之(これ)を遠きに求む、と話しています。生徒の皆さん、再度、じっくりと周囲を眺めてみてください。

6月30日(金) 川俣高等学校長

一体化

外敵から身を守るために、動物はよく周囲の環境に溶け込み、自分をその一部に見せたりします。石を隠すなら石の中、人に隠れるなら人の中、という諺もあります。こうした保護色の処世術ともいうべき行動は、人の世界にも取り入れられています。身を隠すという意味合い以上に周りと一体化することは、多くの良き側面を持つことは、借景(しゃっけい)の概念からもうかがえます。目の前にある庭の景色に周囲の自然を取り込んで、眺め全体を色合い豊かなものに変える作庭技法は、文化の深みすら感じます。人は昔から、そして今でも、自然との融合、そして、人との融合を目指して生活を営んでいるのだと思います。

6月29日(木) 川俣高等学校長

将来への不安

生徒の皆さんが自分の将来を考える際に、一抹の不安を感じることがあると思います。見知らぬ世界に飛び込もうとしているわけですから当然のことです。ホームとアウェイ、どちらかを選択しますかと問われれば、安心感に満ち溢れた、勝手知ったるホームを選ぶのと同じ意味合いを持ちます。でも、予想できることと予想できないことが入り混じり、不規則に物事が起きることを偶有性と言い、人は、この偶有性を避けることはできない、とされています。アウェイに強くなることは、この偶有性を楽しむレベルに達すること、とも言えそうです。そういえば、夏目漱石著『三四郎』の中に、ロマンティック・アイロニーという言葉が出てきます。自分の将来をどうやって歩んでいくのかについて、自分の内面に向き合って考える場面を指します。このプロセスを経験することも非常に大切です。生徒の皆さんには、偶有性の瞬間を楽しんでほしいと思っています。是非、ロマンティック・アイロニーにも直面してほしいと思います。ホームの常識が通用しない未知との出会いは、きっと皆さんを大きく成長させてくれます。

6月28日(水) 川俣高等学校長

おぼえ唄

平安京は、都市計画に基づき整然とした碁盤目状に造られたので、どこを歩いているのかわからなくなることが多くありました。位置を指し示す看板等も少ないため、人は、「まるたけえびすに(丸太町、竹屋町、夷川、二条) おしおいけ(押小路、御池通) あねさんろっかく たこにしき しあやぶったか まつまんごじょう」と、通りの名の順に唄にして暗記したそうです。京の通り名おぼえ唄、といいます。この部分は京の中心部ですが、北は鞍馬口通から南の七条通まで、唄は揃っています。そういえば、膨大な量の知識を記憶する際に、語呂合わせをよく用います。2年生の皆さん、これで、今年10月に行われる修学旅行の京都班別研修時に迷うことはなさそうですね。

6月27日(火) 川俣高等学校長