令和4年度

校長より

豊かな社会

管鮑の交わりで知られる管仲についてまとめた『管子』は、黒田官兵衛や二宮尊徳、西郷隆盛といった方々もよく読まれたと言われています。その中の『倉廩(そうりん)実(み)ればすなわち礼節を知り、衣食足ればすなわち栄辱を知る。』という表現は、国をまとめる立場にあった管仲が、自分に言い聞かせていたこととされています。直接的な意味を把握した上で、年間をとおして計画な生産ができるよう配慮することで経済が豊かになり、物資が集まるようになれば人も多く集うようになり、結果として豊かな社会を築くことができる、との趣旨と解釈されています。そして、国や地域を支える存在も、家庭や会社を支える存在も、人であることは言うまでもありません。

12月8日(金) 川俣高等学校長

繋 ぐ

鍛冶職人の家に生まれたイギリスの科学者マイケル・ファラデーは、弟子奉公をしながら独学で学問に取り組むとともに、当時のロンドンにはわずかなお金で聴講できる公開講座のような機会があったので、そこに熱心に通い、一流の科学者からの直接の教えに触れることで、一層、自然科学に対する興味を深めることになります。後にファラデーの法則等を発見する発端には、彼の持つ学問に対する熱心さに加えて、学ぶ機会を提供してくれた公的機関の存在がありました。若い世代に知的財産を繋ぐ役目として、晩年には、彼自身が講義を行います。そして70歳のときの講義が、『ロウソクの科学』という名で本になります。ロウソクから出た水素と空気中の酸素が結合するために、ロウソクが燃えた下には水がたまる、あるいは、人の呼吸の仕組みはロウソクが燃えて発生する炭酸ガスの過程と同じである、などの記述をとおして、多くの子どもたちが関心を高めるのに大きな効果をもたらしたそうです。学問が発達する背景には、人から人に繋ぐ意識が存在しています。

12月7日(木) 川俣高等学校長

織 物

人生を織物に例えたのは染織作家の志村ふくみさんです。先天性の性質を持つ経糸(たていと)を変えることはできませんが、緯糸(よこいと)を通すことで織物はでき上がり、個性も加味される、と志村さんは話されています。そして、人は、自分の色を求めて織物を織るのだそうです。ひたすら一色を織っていたとしても、そこには自然に多様な色が含まれます。個性は色彩豊かであることの証明なのかもしれません。生徒の皆さんは、自分の色を知っていますか。これまでも、そしてこれからも、皆さんは意図的に、また時に無意識に、様々な色を取り込みながら人生という織物を織り続けるのかもしれません。

12月6日(水) 川俣高等学校長

深堀り

世阿弥は、佐渡島にいた時期に徹底的に見つめ直すことをとおして、能楽に深みを加えたとも言われています。西郷隆盛や大久保利通も、情報が限られる中で世について考え、世界情勢までも知り得たそうです。共通するのは、我一心なり、の精神の下、よそ見をすることなく自分の足許を良く見て、深堀りしようとする姿勢です。隣の芝生は青く見えますが、その時点で二心があります。全てにおいて真理は深い処にあります。そして、不退転の覚悟で事に当たらねばならない瞬間は存在します。生徒の皆さんにも、その場面は必ず来ます。困難の克服を図るには苦労を伴いますが、その際には、山より大きな猪はいない、海より大きな鯨はいない、と心の中で唱えてみてください。

12月4日(月) 川俣高等学校長

1対29対300

かつて階段の踊り場に、「足元にお気をつけください。1対29対300」という張り紙を貼っていた会社がありました。1件の大きな事故が生じる背景には29の中規模の事故があり、29の事故の背景には、取るに足りないとも思える300の小さな事故がある、とのハインリッヒの理論です。宮水と呼ばれる名水が近くに湧出する地域にあるこの会社では、その水脈を守るために会社を拡大することをせず、また、建物の十分な幅もないことからエレベータを設置できないために、階段を活用していたそうです。でも、多くの社員や大切なお客様が階段で転ぶなどして怪我することのないよう、未然防止の意味を込めて先ほどの張り紙をしたそうです。会社広報の方は、会社を訪れた大抵の人はこの張り紙の意味を問うため、注意喚起の継続につながっている、とも話されていました。

12月1日(金) 川俣高等学校長