令和4年度

校長より

唯一のもの

商品化を前提にして、同じものを同じ工程により作ることを製造といいます。一方で、他とは異なることを善し、とすることを創造とも呼びます。ウエストサイド物語の作曲家としてよく知られるレナード・バーンスタインが、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団を指揮した、マーラーの交響曲第九番は歴史に残る名曲とも称されている演奏です。エネルギッシュな指揮をすることで有名なバーンスタインが、このときには一層力を込めているためか、彼の唸る声がレコードに入っています。第四楽章のクライマックスが近づくと、指揮台を踏み鳴らす大きな足音も録音されています。通常であればカットされるこうした音は、今回は生録音であったことで残り、その迫力を含めて芸術評価を高めることとなりました。レコードそのものは製造に相当しますが、音楽という芸術分野においての価値ある創造、言い換えれば世界で唯一のレコード、という捉え方もできそうです。

1月16日(火) 川俣高等学校長

ほのかな香り

農家の方々が自家用として栽培していた中に、香り米と呼ばれる米があります。近い地域では宮城県などで栽培されている香り米は、ほのかに煎った大豆のような香りがするためそう呼ばれるのだそうです。匂い米、あるいは麝香に似ていることから麝香米と言う人もいます。元々流通経路に乗っていたわけではないため、知っている人も限らていたようです。また、背が高くなるため倒れやすいなど、栽培にも多く手間がかかり収穫量も少量ではありますが、古米に少しだけ混ぜると、いわゆる古米臭を消してくれるため、新米のように感じられるという感想も聞かれるのだそうです。ピラフ料理にも合う、と生産農家の方々は話されています。少しの使用量でも存在感を発揮する香り米、どのような味なのか気になりますね。

1月15日(月) 川俣高等学校長

コンパス

歩く方向を示してくれるコンパス(磁石盤)を乳牛に向けると、普段は北を指すコンパスが乳牛の方を指すことを知っているでしょうか。ほとんどの乳牛の胃には磁石が入っているからです。これをカウマグネットといいます。牛は好奇心が強く、エサと思えるものを何でも胃に押し込み、反芻することで消化する性質を持っていることはよく知られています。そのエサに針金などが混じっていると、4つの胃のうち、特に収縮力の強い第二胃の胃壁を傷つけることもあるそうです。金物病と呼ばれるこうした事態の未然防止のために、異物を固定する目的で予め磁石を飲み込ませるのだそうです。1950年代にアメリカで普及したこのやり方は、後に日本でも活用されることとなりました。胃の中に磁石を入れると聞けば少し違和感を感じますが、長ければ15年にもわたりミルクを提供してくれる大切な財産を守る術なんですね。

1月12日(金) 川俣高等学校長

サイン

百貨店やデパートの中には、急に雨が降り始めると流すBGMが決まっているところがあるそうです。以前には、ショパンの『雨だれの曲』がかかるデパートもありました。地下の食品売り場で働く店員さんも、店内に流れる曲により外の天気を知ることができるため、お客様との会話の中に、自然に天気の話題を入れ込むこともできます。かつては、雨に塗れても大丈夫なように、やや厚手の買い物袋に変えていた店舗もあったと聞きます。入り口にはマットが敷かれるなど、一つの曲により、お客様が快適な買い物ができるよう様々な部署の方々が円滑に動く様は、組織の在り方としても大いに参考になります。ちなみに、雨が上がった際には、ジュディ・ガーランドの『虹の彼方に』が流れることもあったようです。

1月11日(木) 川俣高等学校長

春の情景

中国唐中期の詩人である王維は、「花落ちて家僮未だ掃(はら)わず 鶯鳴いて山客猶(な)お眠る」と詠みました。この前半には、「桃は紅にして復(ま)た宿雨を含み、柳は緑にして更に春煙を帯ぶ」とあります。昨夜の雨により桃の花は雫を含み、柳はまるで霞のようにその緑色の葉を垂れている中、山里の人々はまだぐっすりと眠っている、という意味の詩だそうです。何とものどかな春の様子が伝わってきます。王維は西安近くの藍田という地で育ちました。山も川も美しいこの地で育ったことで、彼の心にはいつも、自然の生み出す素晴らしい情景が宿っているのだとも思います。生徒の皆さんも、いつの日か、ここ川俣の地を離れることがあるかもしれません。でも、藍田にも匹敵する佳きこの地のことを、いつも頭に置いていてほしいと思います。ちなみに、かつての川は畑に代わるなどしていますが、王維が植えたとされる銀杏の木は、代替わりをしながらも、今でも藍田で葉を茂らせています。

1月10日(水) 川俣高等学校長